高血圧は警告なしに発症し、深刻な健康問題を引き起こすため、「サイレントキラー」とよく呼ばれます。台湾の怡生中医クリニック所長・呉宏騫氏は、血圧を迅速に下げるための3つのアドバイスを紹介し、命を救う可能性を高めています。
中医学によると、高血圧の急性発作は、感情の高ぶり、過度に辛くて熱い食品の摂取、あるいは長期にわたる不眠によって引き起こされることが多いとされています。主な原因は自律神経系のバランスの崩れであり、これによって交感神経と副交感神経の機能が適切に制御されなくなります。
血圧を迅速に下げる3つのヒント
ツボのマッサージは自宅で手軽に行える方法です。
1. 関連する3つのツボを順番に刺激する
呉氏はかつて、血圧が190 mmHgに急上昇した患者を診たことがあります。3つのツボに順番に鍼を施したところ、わずか5~10分で血圧は120 mmHgにまで下がりました。これらの3つのツボは、陽陵泉、足三里、太衝です。呉氏は、これらのツボを正しい順序で鍼またはマッサージによって刺激することで、上昇した「気」を下に導くことができると強調しています。
中医学において、「気」は体の経絡を流れる重要な生命エネルギーであり、その流れの乱れは、血圧の上昇を含むさまざまな身体的な不調を引き起こすと考えられています。
以下のツボを優しくマッサージすることで、気の流れを整え、血圧を下げる効果が期待できます:
- 陽陵泉(GB-34):膝のすぐ下、下腿の外側にあります。指で軽く押してください。
- 足三里(ST-36):膝蓋骨の下、およそ指4本分の位置、脛骨の外側にあります。マッサージしてください。
- 太衝(LR-3):足の甲、第1趾と第2趾の間のくぼみにあります。ここを刺激してください。
各ツボには、しっかりとした、しかし心地よい圧をかけて、1~2分間マッサージしてから次のツボへと移ってください。気の流れを効果的に下へ導き、急激な血圧上昇を和らげるためには、順序を守って行うことが大切です。



2. 生姜を加えた温水での足湯で血行を活性化
家庭で高血圧が起き、すぐに鍼やマッサージの治療が受けられない場合は、まずは血圧を下げる薬を服用してください。
そのうえで、約42℃の温水に足を浸します。同時に、反対側の足裏にある太衝のツボを、かかとで交互に擦ってください。呉氏は、太衝のツボを擦る際には、頭を下げないよう注意すべきだと述べています。頭を下げる姿勢は、かえって血圧を上昇させる可能性があるためです。
呉氏はまた、足湯には高血圧患者にとって日常的な健康管理としての利点があると述べています。食後2時間後、または就寝1時間前に、15~30分間行うのがよいでしょう。足を温めることで血圧の安定につながり、睡眠の質の向上にも役立ちます。
足湯の水に生姜や塩を加えることで、さらに血行を促進する効果が期待できます。呉氏は特に、古い生姜の使用を推奨しています。古い生姜は血行を活性化させ、胃や子宮を温める働きがあります。血流が改善されることで脳への酸素供給が増え、血圧が徐々に低下します。
3. 「降圧溝」をマッサージする
耳の後ろにある「降圧溝」を刺激することも、血圧を下げる効果的な方法です。呉氏によれば、親指または人差し指を使い、上から下へまっすぐ、または回転させながらスライドすることで、血圧を下げることができるといいます。
この「降圧溝」は耳介の後ろに位置しており、耳の先端を下に引くと、耳の後ろに溝が見つかります。これが、血圧を下げるための「魔法の溝」とされる部分です。
血圧を下げるお茶
高血圧は、脳が酸素不足になることで起こることが多く、その際、心臓と血管により多くの血液と酸素を送るよう信号が送られます。呉氏は、高血圧を解決する鍵は「気」と「血」の流れをスムーズにすることだと述べています。日々の中国医学による調整と鍼治療によって、気や血の滞りが原因の問題を改善することが可能です。
例えば、党参と黄芩で気を補い、紅花と地竜で血行を活性化することで、血管の健康を促進し、血液中の酸素供給を増やすことができます。脳が十分な酸素を得られれば、血圧は自然と下がります。
この考えに基づき、呉氏は次のようなお茶を推奨しています:
材料:
- 黄芩 30g
- 紅花、当帰、川芎、党参 各3g
- ナツメ 6個
- 水 2000ml
作り方:
材料を鍋に入れて沸騰させた後、弱火にして3分間煮てください。その日の水分補給の代わりとして、このお茶を飲みましょう。
血圧をコントロールするための2つの習慣
呉氏は、高血圧の管理において、次の2つの生活習慣を取り入れることが重要だと述べています。
1. 十分な睡眠:呉氏の臨床経験によれば、多くの高血圧患者は夜遅くまで起きていたり、不眠や睡眠不足に悩まされたりしています。彼は、睡眠の質の低下が血圧上昇の初期段階であることが多く、睡眠への不安がさらなる血圧上昇を招き、さらに眠れなくなるという悪循環を生むと指摘しています。そのため、十分な睡眠をとることが血圧を下げる第一歩となります。
2. 週3回の運動:運動は、体内で小さな血栓を自然に分解する力を活性化し、血管の詰まりを防ぎ、血流を円滑に保つことに役立ちます。これにより、血管の健康が守られ、脳卒中や心臓発作といった深刻なリスクが軽減されます。血液がよく循環することで、酸素が絶えず脳に届きます。呉氏は、週に少なくとも3回の運動が、血圧の大幅な低下に寄与すると提案しています。
高血圧の人に最適な運動
『British Journal of Sports Medicine』に掲載された研究では、約16,000人を対象とした270件の研究報告をレビューし、さまざまな種類の運動が血圧低下に与える影響を評価しました。その結果、等尺性運動が血圧を下げるうえで有意な効果を持つことが明らかになりました。
この研究によると、収縮期血圧と拡張期血圧(血圧を示す2つの指標)は、それぞれ約8 mmHgおよび4 mmHg低下しました。この効果は、降圧薬を服用した場合の平均的な効果(収縮期および拡張期血圧がそれぞれ約10 mmHgおよび5 mmHgの低下)とほぼ同等とされています。
等尺性運動とは、静的でありながら持続的に筋肉を収縮させる運動のことです。一般的な例としては、ブリッジポーズ、バランススティックポーズ、ウォールスクワットなどがあります。これらの運動が血圧を下げるメカニズムは、筋肉が持続的に力を発揮することで体内の一酸化窒素の濃度が高まり、血管が拡張されることにあります。筋肉の緊張が続くことで血管が刺激され、拡張される結果、血圧が下がると考えられています。
等尺性運動を行う際には、瞬間的な血圧の上昇を避けるため、息を止めずに呼吸を続けることが重要です。
なお、有酸素運動でも収縮期および拡張期血圧をそれぞれ4.5 mmHgおよび2.5 mmHg下げる効果があります。さらに、ウェイトトレーニングでは同じく4.5 mmHgおよび3 mmHg、高強度インターバルトレーニング(HIIT)では4.5 mmHgおよび2.5 mmHgの低下が確認されています。
高血圧薬の副作用
一般的な高血圧薬には、利尿薬とカルシウム拮抗薬(カルシウムブロッカー)が含まれており、それぞれ特有の副作用があります。
利尿薬:これらの薬は血液中の水分を排出することで、血圧を下げる働きをします。しかし、水分が失われると血液が濃くなり、酸素の運搬能力が低下して低酸素状態になり、めまいを引き起こす可能性があります。
カルシウムイオンブロッカー:このタイプの薬は血管を緩めて拡張させることで、血流をスムーズにし、頭部の圧力を軽減して血圧を下げます。しかし、顔の紅潮、下肢のむくみ、筋力の低下などの副作用を引き起こすことがあります。
呉氏は、長期的に高血圧を抱える患者は、必ず医師の指導に従うべきであり、副作用があるからといって医師の助言なしに薬の服用を中止してはならないと強調しています。自己判断で薬をやめると、脳卒中や高血圧の重篤な発作などを引き起こす危険があります。
なお、この記事で紹介されているハーブの一部は、日本では馴染みが薄いかもしれませんが、一般的には健康食品店やアジア系のマーケットで入手可能です。治療法の効果や適合性は個人差があるため、具体的な治療計画については必ず医療専門家にご相談ください。
この記事で表明された見解は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。
(翻訳編集 日比野真吾)
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