米国では毎年およそ80万5,000人が心臓発作を経験しており、その多くは心疾患が前兆として現れています。平均すると、40秒ごとに誰かが心臓発作を起こしている計算になります。しかし、実際に心臓発作が起きているかどうかは、必ずしも明確に判断できるとは限りません。
本記事では、見過ごされがちな心臓病や心臓発作の「非典型的な症状」について詳しく掘り下げます。また、心臓病のリスク要因、その予防法、そして発症リスクを軽減するための効果的な戦略についても紹介します。
心臓発作の主な原因
一般的に、心臓発作の主な原因は冠動脈の虚血、すなわち冠動脈性心疾患です。この疾患は、高血圧、高血糖、慢性炎症などの要因により血管壁が損傷を受けることで発症します。その損傷部分に、コレステロールや血小板などが蓄積し、プラークと呼ばれる塊を形成して冠動脈を狭窄または閉塞させます。その結果、心筋への酸素供給が不足し、最終的に心臓発作を引き起こします。米国では冠動脈性心疾患が最も一般的な心疾患であり、2022年には37万人以上がこの疾患で亡くなっています。
さらに、心臓発作の後に生じる影響については、男性よりも女性の方が深刻であることが研究で明らかになっています。心臓発作から5年以内に、女性の約50%が死亡、脳卒中、あるいは心不全を経験する可能性があるのに対し、男性の場合は36%にとどまります。なぜこのような性差が生じるのでしょうか?それは、女性に現れる症状が見過ごされやすく、非典型的な症状が発見されにくいという要因が関係している可能性があります。
では、心臓発作における「一般的な症状」と「非典型的な症状」とは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
典型的な症状と非典型的な症状の違い
心臓発作の典型的な症状には、胸の痛みや不快感、上半身(腕、首、上腹部など)に生じる痛みや違和感が一般的に含まれます。
しかし、すべての心臓発作が明確な胸部の不快感を伴うとは限りません。中には、非典型的またはごく軽度の症状しか現れない人もおり、これらの症状は見逃されたり、他の病気と誤診されたりしやすい傾向があります。特に女性では、このような非典型的な症状が多く見られることが知られています。
以下は、心臓発作に見られる5つの非典型的な症状です。
サイレント虚血:胸部や他の部位にまったく不快感が現れない一方で、心電図などの検査でのみ心筋虚血が確認される状態を指します。
顎の痛みや歯の痛み:これは心臓に関連する放散痛として現れるもので、心臓からの神経信号によって引き起こされる痛みの一種です。
吐き気や消化不良:心臓と消化管はどちらも自律神経系により調節されているため、心筋虚血が胃腸の運動や分泌機能に影響を与え、消化不良、腹部の不快感、吐き気を引き起こすことがあります。
原因不明の疲労感:心筋虚血によって心臓のポンプ機能が低下し、体内の酸素やエネルギーが不足するため、慢性的な疲労感や体力の回復困難が生じます。
冷や汗、めまい、不安感、息切れ:これらも心臓発作の警告サインとして知られており、軽視すべきではありません。
心臓病:リスク要因と予防
心臓病の発症や進行には、さまざまな要因が関与しています。年齢、性別、遺伝など、自分では変えられないリスク要因もありますが、生活習慣を見直し、関連する健康状態を適切に管理することで、いくつかのリスクを軽減することが可能です。実際、心臓病のリスクの80%は予防可能とされています。
2022年にJAMA Network Openに発表された、371,463人を対象としたコホート研究では、アルコール摂取量と高血圧および冠動脈疾患のリスクとの間に、非線形かつ一貫した関連性が見られました。少量の飲酒でもリスクはやや上昇し、多量飲酒ではリスクが指数関数的に高まる傾向が確認されました。この知見は、日常的な飲酒に関する健康管理の参考として重要です。
また、2023年1月にアメリカ心臓協会の学術誌(Journal of the American Heart Association)に掲載された研究では、59万3,616人の米国成人を対象とした調査に基づき、うつ病が心血管疾患の独立したリスク要因であることが示されました。うつ病のある人は、ない人に比べて心臓病を発症するリスクが約2倍高いとされています。
このように、生活習慣や健康状態の改善が、心血管疾患の予防において極めて重要であることは明白です。以下に、心臓病のリスクを軽減するための7つの推奨事項をご紹介します。
体重管理:肥満は心臓への負担だけでなく、高血圧、高血糖、高コレステロールといった代謝異常とも深く関連しています。適正なBMI(体格指数)を維持することで、心臓病のリスクを下げることができます。
喫煙を避ける:喫煙は血管壁を傷つけ、血液の粘度を高め、動脈硬化を進行させます。禁煙または喫煙の完全回避によって、血液循環が改善し、心臓への負担も軽減されます。
飲酒量を制限する:過度の飲酒は心臓発作、心不全、死亡リスクを高めます。アルコールは心筋にダメージを与えるほか、肝機能や代謝にも悪影響を及ぼします。目安として、男性は1日1〜2杯、女性は1日1杯までが望ましく、1杯とはビール約350ml、ワイン約150ml、蒸留酒約45mlに相当します。
健康的な食生活を実践する:砂糖・塩分・脂肪・コレステロールが多い食品を控え、新鮮な果物や野菜、オメガ3脂肪酸を含む魚、ダークチョコレートなど、心臓に良い食品を積極的に取り入れましょう。
定期的に運動する:有酸素運動は血流を促進し、血糖・血圧・体重を改善し、炎症を抑える効果があります。週3〜5回、1日30分以上の中程度の運動が推奨されます。
ストレスを管理する:ストレスは交感神経を刺激し、心拍数や血圧の上昇、心機能の低下を引き起こす可能性があります。瞑想やマインドフルネス、音楽、良好な人間関係、十分な睡眠など、ストレスを和らげる習慣を取り入れましょう。
基礎疾患に対応する:高血圧、高血糖、高コレステロール、うつ病などの状態はすべて心臓病の重大なリスク要因です。定期的な検診を受け、医師の指導のもと適切に管理することが重要です。うつ症状がある場合は、心血管系への影響を防ぐためにも、心理的サポートを求めましょう。
心臓発作は、いつでもどこでも発生し得る重大な健康リスクです。特に非典型的な、あるいは見逃されやすい症状にも注意を払い、早期に医療機関を受診することが重要です。同時に、日々の生活習慣を見直し、健康状態を管理することで、心臓病のリスクを積極的に軽減していきましょう。
※本記事に記載された内容は筆者の個人的見解であり、エポックタイムズの公式見解を示すものではありません。
(翻訳編集 日比野真吾)
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