木を抱きしめることの健康効果

あなたも子どものころに一度はやったことがあるでしょう。木の幹に腕を回し、頬を樹皮に押し当て、そのまましがみついたことです。かくれんぼをしていたのかもしれませんし、その木が自分の話を聞いてくれていると想像していたのかもしれません。当時は知らなかったかもしれませんが、ある意味では木もあなたを抱きしめ返していました。人と人との触れ合いによって引き起こされるのと同じような、心を落ち着かせる化学反応が体内に広がっていたのです。

研究によると、木を抱きしめることには実際の健康効果がある可能性があり、ストレスホルモンを低下させることから免疫機能の向上に至るまで、さまざまな恩恵が示唆されています。
 

ツリーハギングとは何か

ツリーハギングとは、その名の通り、一定時間、木を抱きしめたり触れたりする実践です。両手のひらで樹皮に触れ続けたり、幹にもたれかかったり、腕を回して抱きついたりします。ツリーハギングは、心身の健康を改善することが示されている「森林浴」の一要素でもあります。

この実践は五感を刺激します。樹皮の質感や温度に気づき始め、周囲の音や香り、ひんやりとした空気も感じ取るようになります。

ツリーハギングそのものを直接対象とした研究は限られていますが、自然への曝露(自然環境に身を置くこと)や森林浴に関する関連研究では、身体的健康の改善が示されています。
 

気分の改善とストレスの軽減

木を抱きしめることはストレスを軽減し、全体的な幸福感を高める可能性があります。人との本物のハグがストレスを和らげ、安心感や心地よさをもたらすのと同様に、木を抱くことも同じ生物学的反応システムを刺激すると考えられています。

「最も重要な直接的効果は、触覚刺激によるものと考えられています」と語るのは、日本の著名な教授・研究者であり森林療法の先駆者である宮崎良文氏です。氏は日本の森林浴である「森林浴」の科学的根拠に関する複数の著書や論文を執筆しています。

韓国のある研究では、3日間にわたり裸足で自然の中を歩き、木を抱きしめるなどして自然に没入した製造業の労働者たちが、ストレスの軽減と気分の改善を経験したことが分かりました。

血液検査ではストレスホルモンの減少と心拍変動(心拍の間隔のゆらぎ)の改善が確認されました。これらはいずれも、ストレスや否定的な気分が大幅に減少していることを示す指標です。

同様に、ブラジルの研究では、森の中をゆっくりと意識的に歩き、触覚を通して自然を感じることを行った学生たちが、各セッション後に不安レベルをほぼ半分にまで低下させたことが示されました。また、特に植生がより密で自然度の高い公園では、ストレスやうつ症状の大幅な軽減も見られました。

木を抱きしめることが難しい場合でも、木に触れるだけ、あるいは木製の板に触れるだけでも、同様の効果が得られる可能性があります。

宮崎氏の研究の一つでは、90秒間、コーティングされていない木材の表面に手を置くと、大理石、タイル、鋼鉄に触れた場合と比べて脳が落ち着き、休息モードへと移行することが示されました。宮崎氏は、森林療法の感覚的効果に加えて、森林そのものが快適さを高めるとも述べています。

「森林のような自然を代表する形態に囲まれると、人間は自動的にそれと同調し、自然と快適な状態を体験します」と氏は述べています。この反応は身体や遺伝的構造にも根ざしており、人類が何百万年にもわたって自然環境に適応してきた歴史によって形作られています。
 

木の化学的な力

よく「ハグは病気から守ってくれる」と言われますが、木を抱きしめることにも独自の免疫向上効果があるかもしれません。

木は体内のデトックスを助ける可能性のある電子も放出します。

木はまた、害虫や病気から身を守るために、葉、樹皮、樹液に含まれるフィトンチッド(植物が放出する揮発性の抗菌・防虫成分)という木の精油成分を放出します。針葉樹に多く含まれるα-ピネンやβ-ピネンなどの化合物を吸入することで、測定可能な健康効果が得られる可能性があります。

ある研究では、2泊3日の森林浴によってアドレナリンが低下し、ウイルス感染細胞やがん細胞を破壊するナチュラルキラー(NK)細胞の活性が増加しました。NK細胞の活性は旅行後30日以上にわたって維持されました。

別の実験では、都市部のホテルの客室に一晩ヒノキの精油を拡散させたところ、参加者は森林の外にいながらもNK細胞活性や抗がんタンパク質の増加、ストレスホルモンの低下が見られました。

オキシトシンは単にストレスを下げるだけでなく、抗酸化作用や抗炎症作用も持っています。具体的には、フリーラジカル(活性酸素などの不安定な分子)を直接除去し、炎症を促進するサイトカインを減少させ、グルタチオンなどの天然の抗酸化物質を増加させます。
 

人は本能的に木に引き寄せられる

木は、シダの葉、川の流路、雲の縁など、自然界の多くの要素と同様にフラクタルを含んでいます。フラクタルはどれだけ拡大しても同じパターンが繰り返される自己反復的な構造です。人間は本能的にフラクタルに引き寄せられ、それは脳を落ち着かせます。

フラクタルの特徴の一つは、それが最も一般的に自然界に存在しているという点であり、人間は同じレベルでそれを再現することはこれまでできていません。

例えば、木は小さな木のように見える枝から構成されており、葉にも同様の分岐パターンが含まれています。葉を顕微鏡で観察すれば、同じ繰り返しパターンがさらに見えてきます。

専門家によると、人々がフラクタルを落ち着くものと感じるのは、視覚システムや神経配線そのものもフラクタル構造を持っているからだといいます。ある意味で、自然は脳の母語で語りかけているのです。

宮崎氏は「私たちの身体、そして遺伝的構造は自然に適応するよう進化してきました」と述べ、自然に囲まれることで人は自動的に環境と同調し、快適な状態に入ると指摘しています。

たとえ短時間でも、木や自然の風景を眺めるだけで変化は生じます。

ある実験では、約60m以上の高さにそびえるタスマニア産ユーカリの木を1分間見上げるよう求められた学生たちは、同じ高さの建物を見上げた学生たちよりも、その後に他者に対してより親切で協力的な行動を示しました。

別の研究では、参加者に冬の都市型森林(葉の落ちた木々)と、森林のない都市景観をそれぞれ15分間見るよう求めました。森林を見た参加者は、気分の向上、より前向きな感情、活力の増加、そしてより強い回復感を報告しました。
 

木を抱きしめる実践方法

自然との関わり方は人それぞれです。

そのため宮崎氏は、どのくらい滞在するべきか、裸足で行うべきかといった厳格なルールを定めることを勧めていません。代わりに、いくつかの実践的な選択肢を提示することで、初心者が自分に合った方法で無理なく始められるようにすることが大切だとしています。

以下は、木を抱きしめる際に役立つヒントです。

  • 適切な木を選びましょう:直感的に引き寄せられる木を選びます。より大きく古い木は、より多くのフィトンチッドや生理活性物質(体に作用する化学成分)を放出している可能性があり、より包み込むような快適な抱擁感を得られるかもしれません。
     
  • 接触を最大化しましょう:可能であれば肌の接触面を増やします。裸足で立ち、頬をやさしく樹皮に当ててみましょう。都市公園でも実践できますが、自然の森林のほうが、より豊かな感覚刺激と少ない雑音の中で体験できます。
     
  • 森林の密度を考慮しましょう:木の本数が少なめで、その代わりに大きな木がより間隔を空けて立っている森林のほうが、より強い治療的効果を生み出す傾向があります。
     
  • 今この瞬間に意識を向けましょう:ゆっくり深く呼吸し、樹皮の質感に気づき、葉のざわめきに耳を澄まし、木の自然な香りを感じ取ります。数分間、あるいは心地よいと感じる時間だけ、そのままとどまりましょう。

(翻訳編集 井田千景)

執筆活動を始める前、レイチェルは神経疾患を専門とする作業療法士として働いていた。また、大学で基礎科学と専門作業療法のコースを教えていた。2019 年に幼児発達教育の修士号を取得した。2020 年以降、さまざまな出版物やブランドで健康に関するトピックについて幅広く執筆している。