2023年9月、グリーンランド東部のディクソン湾で2度にわたる大規模な津波(メガ津波)が発生し、9日間にわたり地球全体に振動を与えました。当時、世界中の地震計が異常なシグナルを検出していました。
この2つの巨大な波は、2,500万立方メートルもの岩や氷の塊を伴って一気にディクソン湾を襲いました。その後9日間にわたり湾内を行き来し、その地震波は地球の隅々にまで到達しました。その中には、最大で高さ約650フィート(200メートル)にも達する津波があり、これはエンパイア・ステート・ビルの半分の高さに相当します。この現象は、世界各地の地震観測機器によっても検出されました。
当初、科学者たちはこれらの継続的な地震シグナルに困惑していました。というのも、今回のシグナルは典型的な地震や火山活動のものとは異なっていたからです。しかし、人工衛星や地上からの観測データを精査した結果、研究者たちはようやくその原因を突き止めました。
彼らの調査によると、氷河の融解によって引き起こされた山崩れが、湾内に「静振(Seiche)」と呼ばれる現象、つまり水が容器の中で揺れるような振動を引き起こしたというのです。これまで静振が実際に存在するという直接的な証拠は確認されていませんでしたが、今回、新世代の衛星によってその確固たる証拠が明らかになりました。
この研究成果は、6月3日(火曜日)付で『ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)』誌に掲載されました。
『ライフサイエンス(Live Science)』誌の報道によると、オックスフォード大学工学科学科の大学院生で、今回の論文の筆頭著者であるトーマス・モナハン(Thomas Monahan)氏は、「これは人類にとって前例のない極端な現象です」と語りました。
彼は続けて、「このような極端な現象は、北極のように観測機器のカバーが難しい僻地で発生することが多いです。今回の研究では、新世代の地球観測衛星技術を用いることで、こうした現象をより効果的に研究できるようになったのです」と述べています。
グリーンランドの氷河が大規模に融解している現状を受け、研究者たちはこの地域での観測体制を強化するよう呼びかけています。それにより、将来起こりうる山崩れや津波といった自然災害を予防することが可能になるかもしれません。
従来、科学者たちは「衛星測高(satellite altimetry)」という技術を使って津波の波動を追跡してきました。この方法では、レーダーパルスを用いて海面との距離を測定し、その戻り信号から波の高さを観測することができます。
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