アメリカでは、うつ病の発生率が過去10年で約60%増加しており、新しいアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによれば、若者の約5人に1人、大人の約10人に1人が影響を受けているとされています。うつ病に苦しむ人が増える中で、簡単なライフスタイルの改善が症状を緩和することを理解することが重要です。
「私のうつ病は、想像もできなかった方法で軽減されました」と、25年以上うつ病を経験してきたマリカ・マレー(Marika Murray)氏は述べています。
「それによって、周囲の環境がどれほど深く私たちに影響を与えるかがわかりました — 呼吸する空気、触れるもの、食べるもの、着るもの、スクリーンを通じて見聞きするすべてが、感情面や身体面に影響を及ぼすことがあるのです」とマレー氏はエポックタイムズに語りました。
研究でもまた、睡眠、スクリーンの使い方、食事、運動などの日々の習慣が、人がどの程度うつを感じるかに大きな影響を与えることが示されています。
「こうした基本的な行動のバランスが崩れると、うつ病が悪化し、逆にうつがこれらの行動をさらに悪化させてしまう悪循環に陥ります。そのため、これらの生活習慣を整えることが非常に重要です」と、ハーバード大学の心理学講師で、ハーバード医科大学精神医学臨床フェローのマイロン・ピッコロ(Mayron Piccolo)氏はエポックタイムズへのメールで述べています。
以下は、うつ病の管理と感情のバランスを取り戻すために役立つ、簡単なライフスタイルの見直し方法です。
1、スクリーン時間を管理する
スマートフォンの使用を減らすことは、より良いメンタルヘルスと関係している可能性があります。『BMC Medicine』に2月に掲載された研究では、125人の健康な大学生に対し、3週間にわたりスマートフォンの使用を1日2時間に制限するグループと、通常通りの使用を続けるグループに分けました。
スクリーン時間を減らした学生は、ストレスの軽減、睡眠の改善、うつ症状の減少、そして全体的な幸福感の向上を報告しました。これらの効果は3週間後に現れましたが、研究終了後には、ほとんどの学生が以前のスクリーン時間に戻ってしまいました。
「ソーシャルメディアのスクリーン時間は非常に誤解を招きやすく、人々はしばしば他人の投稿と自分の生活を比較し始めます」と、認定小児・青少年・成人精神科医のシラ・パテル(Shila Patel)博士はエポックタイムズへのメールで述べています。
「つらい日には、ソーシャルメディアで他人が幸せな瞬間やお祝いの様子を投稿しているのを見ることで、嫉妬や怒り、挫折感が強まることがあります。誰かが投稿に肯定的な反応を示していても、それが本当の気持ちを反映しているとは限りません」とも述べました。
2021年7月から2023年12月までのCDCの報告によると、1日4時間以上スクリーンを使用していたと報告したアメリカの青少年は、スクリーン時間が短い青少年に比べて、不安やうつの兆候を示す割合が2倍にのぼりました。具体的には、最近うつ症状があると答えたのは25.9%で、1日4時間未満の使用者の9.5%と比べて大きな差が見られました。
2、加工食品を減らし、自然な食品を増やす
超加工食品の摂取は、うつ病と関係しています。研究によれば、白血球の増加によって示される炎症が、その関係の一因である可能性があります。一方で、特に果物や野菜を多く含む健康的な食事は、うつ症状の軽減と関連しているとされています。
『JAMA Network』に掲載された長期にわたる人口ベースの研究では、42〜62歳の女性を対象に、超加工食品を大量に摂取することが、数年後のうつ病リスクを高める可能性があることが示されました。
「うつ病は、貧しい食生活の選択によって引き起こされる可能性が非常に高い」と、精神科医の資格を持つシャリク・レファイ(Shariq Refai)博士はエポックタイムズのインタビューで述べています。
彼は、超加工食品を多く含む食事が腸の健康や血糖値に影響を与え、時間の経過とともにうつ病や不安を悪化させる可能性があると指摘しました。
3、体に必要な栄養素を与える
『Nutrients』に掲載されたレビューによると、タンパク質、ビタミンBおよびD、マグネシウム、オメガ3脂肪酸、その他の重要な栄養素の不足は、脳の健康を損ない、うつ病のリスクを高める可能性があります。
4月に発表された研究では、うつ病の高齢者が特定のビタミン、特にビタミンBおよびD、さらにビタミンCやEといった抗酸化物質から恩恵を受ける可能性があることが強調されています。これらの栄養素は、脳細胞を保護し、炎症を抑え、脳のエネルギー代謝をサポートします。特にビタミンDの不足は、うつ病のリスクの高さと関連があるとされました。
レファイ氏は、栄養が脳の化学的バランスにも大きな役割を果たすと述べています。たとえば、タンパク質はセロトニンやドーパミンなど気分に関わる神経伝達物質の生成を助け、オメガ3脂肪酸は脳細胞の機能をサポートします。
「実際、ビタミンDの欠乏だけでもエネルギーの低下を引き起こし、特に高齢者では孤立感やうつ病の原因になる可能性があります。男性の場合、ビタミンDの低下が気分の調節に関わるホルモンであるテストステロンの減少にもつながることがあります」と彼は述べました。
4、CBTセラピストと話すことを検討する
TEDxスピーカーであり著者、The Thought Method Co.の創設者でもあるリンジー・ゲティ(Lyndsey Getty)氏にとって、うつ病からの回復は即効的なものではなく、ヨガや日記を書くこと、瞑想だけでは十分ではありませんでした。
「それらの方法は短期的には助けになりましたが、すぐにまたうつ状態に戻ってしまいました」と彼女はエポックタイムズに語っています。
多くの人が勧める手段を試した後、彼女は特に認知行動療法(CBT)を用いたセラピーに取り組みました。それが大きな転機となりました。
約5万3000人を対象としたメタ分析によれば、CBTは短期的には抗うつ薬と同等の効果があり、長期的にはさらに効果的である可能性も示されています。
CBT(認知行動療法)は対話形式の心理療法の一種で、否定的な思考や行動パターンを変えることで、うつ病やその他のメンタルヘルスの課題に対処する助けとなります。
ピッコロ氏によると、CBTはうつ病の治療において非常に効果があり、場合によっては他の治療法よりも効果的とされることもあります。「これは日常的な臨床の場でも確実に見られることです」と彼は述べました。
「CBTは無理にポジティブになろうとするものではありません」とゲティ氏は語ります。「『もう全部ダメだ』という考えが浮かんだときに、『ちょっと待って、それは怖いけど、実際には思ったほど悪くないかもしれない』と考え直すのです」
5、安全なハーブによるサポートを探る
研究によれば、一部のハーブは抗うつ剤のような作用を持ち、軽度から中等度のうつ症状を緩和するのに役立つことがあり、副作用も少ないとされています。
2022年に『Sage Journals』に掲載されたレビューによると、セントジョンズワート、ゴールデンルート、ボリジ、ラベンダー、サフランなどのハーブが、ダブルブラインド試験でうつ症状の緩和に有効であることが確認されました。
パナックスジンセン(高麗人参)、ギンコビロバ(イチョウ葉)、バレリアナオフィシナリス(セイヨウカノコソウ)、クラタエグスピンナティフィダ(サンザシ)などについても、まだ十分なランダム化比較試験の裏付けはないものの、前臨床研究で抗うつ効果が示されています。
ただし、ハーブを使用する際は、安全性と適切な使い方を確保するために、資格を持つハーバリストや医療専門家の指導のもとで行うことが大切です。
6、マインドフルネス瞑想を実践する
マインドフルネス瞑想は、特にストレスの多い時期にメンタルヘルスを支える効果的で科学的根拠のある方法です。2024年に発表されたメタ分析によると、マインドフルネス瞑想はCOVID-19パンデミック中にうつ症状を大きく軽減したとされています。マインドフルネスを実践した人は、対照群に比べてはるかに大きな改善を示しました。
「マインドフルネス瞑想は、判断を加えずに意図的に今この瞬間に意識を向け、深い呼吸などの技法を通じて心の落ち着きと気づきを育むものです」とパテル氏は述べました。
「この瞑想は、思考や感情を『良い』『悪い』と決めつけずに観察することを促し、より中立的で受け入れやすい視点を持てるようになります」
3,479人の若年成人を対象とした別のメタ分析では、マインドフルネス瞑想がうつ症状の軽減に効果があることが示され、特にグループでの実践や、より自由な形式で行った場合に効果が高いことがわかりました。特に女性にとっては、より大きな恩恵があるようです。
7、十分な睡眠をとる
大規模な全国調査によると、睡眠が少なすぎたり多すぎたり、睡眠に問題があったり、睡眠障害を抱えていると、うつ病のリスクが高まることがわかっています。
「よく眠れなければ、脳はリセットされません」と、15年以上の経験を持つベテランのメンタルヘルスセラピスト、リン・ザケリ(Lynn Zakeri)氏は述べています。
「良好な睡眠習慣を持っている深刻なうつ病のクライアントを見つけるのは、非常に難しいです」とザケリ氏はエポックタイムズに語りました。
約2万9000人の子どもと青少年を対象としたコホート研究のメタ分析によると、睡眠に問題のある若者は、うつ症状を示す可能性が1.5倍高いことが明らかになりました。この研究は、睡眠の問題を深刻に捉え、メンタルヘルスの予防策として幼少期から対策を講じるべきだと結論づけています。
ザケリ氏は、睡眠不足になると、イライラしやすくなり、集中力が低下すると述べています。すべてが重く感じられ、感情的になりやすく、やる気が出ず、小さなことでも圧倒されるようになります。そのため、まずは毎晩7〜8時間の健康的な睡眠を確保することが重要です。
8、定期的に体を動かす
「精神科医に診てもらうとき、ただ薬を処方するだけではありません」とレファイ氏は述べています。
彼は、精神科医がまず勧めるのは基本に立ち返ることであり、良質な睡眠、バランスの取れた食事、ストレスの軽減、社会的つながりの維持、そして最も大切なのが運動であると説明しました。
メンタルヘルスを守るには、少しの運動でも何もしないよりは良いのです。『JAMA Psychiatry』に掲載された、19万人以上の成人を対象とする15件の大規模研究のメタ分析では、少量の運動でもうつ病のリスクが下がることが示されました。推奨される運動量の約半分でもリスクは18%減少し、ガイドラインを満たす程度の運動では25%のリスク低下が見られました。
「私たちの多くは、生きるためではなく、ただ生き延びるために働いており、その考え方が心の負担になっています。こうした考えを変えることが、うつ病の治療の第一歩です」とレファイ氏は述べました。
ウォーキング、ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングは、200以上の研究を統合したメタ分析によって、主要なうつ病治療に最も効果的な運動であることが示されました。特に高強度で行った場合、症状の著しい改善が見られたといいます。
また、研究者たちは、ヨガと筋力トレーニングは他の運動に比べて継続しやすいと指摘し、運動はセラピーや薬物療法と並ぶ、うつ病に対する主要な治療手段として位置づけるべきだと結論づけています。
9、健康的で支え合う関係を築く
認定プロフェッショナルカウンセラーのアリソン・ブリッグス(Allison Briggs)氏は、彼女にとっては関係の「量」より「質」が重要だと語っています。彼女は人生を通じて断続的にうつ病を経験しており、最もつらい時期は30代前半に始まりました。
「一番つらかった時期に本当に助けになったのは、アドバイスではなく、セラピストや親友がただそばにいて、何も無理に変えようとしなかったことです」とブリッグス氏はエポックタイムズに語りました。
科学的な研究も、支えられていると感じることや、強い人間関係を持つことが、うつ病や不安などのメンタルヘルスを守るのに役立つことを示しています。実際、専門家は、社会的支援の少なさや孤独感の高まりについてのスクリーニングを推奨しています。
「うつ病とは、多くの意味で私たちの心身のつながりが断たれる体験です。身体、自分の本音、欲求、希望とのつながりが失われてしまうのです」と、ソマティックトラウマ&リレーションシップコーチであり、ヘルスケアコンサルタントのドヴィ・ロペス(Dovie Lopez)氏はエポックタイムズのメールで述べました。
「自分を変えようとせずに、ただそばにいてくれる人々に囲まれることは、深く変化をもたらす経験になります。そうした関係の安全性は、回復に向けた強力な原動力となり得ます」とロペス氏は続けました。
また、思春期のポジティブな家族関係も、後年のうつ病リスクに影響を与えます。研究では、1万8000人以上を10代前半から30〜40代にかけて追跡したところ、支援的で対立の少ない家庭で育った若者は、成長後にうつ病を経験する可能性が低いことが明らかになりました。これは、健康的で支援的な家族関係が、長期的なメンタルウェルビーイングに重要な役割を果たすことを示しています。
10、環境を変える
すべての方法を試してもうまくいかないと感じるときには、自分の周囲の環境が心身に与える影響を見直すことが重要かもしれません。
研究によれば、周囲の環境や自然に対して否定的な見方をしている人は、うつ病や不安を感じやすい傾向にあります。逆に、より良い生活環境と強い社会的つながりを持つ人は、メンタルヘルス上の問題から守られる可能性が高いとされています。
「どの医者も、私の体調や精神状態が周囲の環境によって悪化しているとは考えていませんでした」とマレー氏は語り、その後、カビや環境毒性に対する啓発活動を行うようになりました。特に、あらゆる対策を試しても回復せずに苦しんでいる人々のために活動しています。
「その環境を離れ、解毒と曝露の軽減が必要だと理解したとき、すべてが変わり始めました」とマレー氏は述べました。
私たちの多くは、新たな一歩がすぐに成果を出さなければ意味がないと考えがちですが、ピッコロ氏によれば、実際にはそうした考え方は多くの人には当てはまりません。
「ライフスタイルを変えるには、考える時間も、行動に移す時間も必要です」と彼は語ります。「目指すライフスタイルに向かって一歩ずつ進むことが、最も確実な方法です。なぜなら、速く進むよりも、正しい方向に進むことの方が重要だからです」
(翻訳編集 日比野真吾)
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