伊藤園中央研究所は16日、「第11回伊藤園ウェルネスフォーラム」を開催した。今回のテーマは「AI時代到来 フロー状態がもたらすヒトの新たな可能性」である。高い集中力と幸福感を伴う精神状態「フロー(Flow)」に着目し、心理学と生理学の両面から、緑茶が現代人のパフォーマンスやウェルビーイングにどう寄与するかを探る内容となった。
フロー体験と持続的幸福
基調講演を行った法政大学の浅川清流教授は、フロー理論の基礎と心理的効果について解説した。フローとは、スポーツ選手が「ゾーンに入る」と表現するような、行為への没入状態を指す。この状態では、自意識の喪失や時間感覚の歪み(数時間が一瞬に感じるなど)が生じ、活動自体が目的化する。

浅川氏は、フローが学習意欲や自己肯定感(自尊感情)と正の相関にあるという調査結果を示し、フロー体験の積み重ねが個人の成長や持続的な幸福(ウェルビーイング)につながると論じた。重要なのは、挑戦レベルと自身の能力が高い次元で釣り合い、明確な目標とフィードバックが存在する環境である。
緑茶摂取による「疲労感の抑制」と「リラックス」
続いて登壇した産業医科大学の黒坂千恵准教授は、生理計測を用いた実証実験の結果を発表した。実験では、計算作業(暗算)を行う前後に緑茶やほうじ茶を摂取させ、自律神経や主観的な疲労度を測定した。 その結果、白湯を飲んだ条件と比較して、緑茶やほうじ茶を摂取した条件では、作業後の疲労感(特に眠気)の増加が抑制される傾向が確認された。また、生理指標においては、副交感神経活動が有意に増加しており、作業中でありながらリラックス状態が維持されていることが示唆された。黒坂氏は、緑茶がフローそのものを直接引き起こすわけではないものの、フローに入りやすい精神状態(覚醒維持とリラックス)を整える「下地」を作る可能性があると結論付けた。
「クリエイティブ・サポート飲料」としての可能性
パネルディスカッションでは、伊藤園中央研究所の加藤一郎所長が、同社がメンタルヘルス領域の研究に注力する背景を語った。シリコンバレーのIT企業で、クリエイターたちが仕事の合間に緑茶を愛飲し、気分転換や効率向上に役立てているという事例が紹介された。 加藤氏は、仕事中に少しずつ飲む「ちびだら飲み」がフロー状態の維持や再突入のきっかけになり得るとし、休憩時にはしっかり飲んでリラックスするなど、場面に応じた飲み方を提案した。
本フォーラムは、カテキンなどの成分研究にとどまらず、「お茶を飲む」という行為がもたらす心理的・生理的変化を科学的に解明しようとする新たな試みであり、AI時代の人間らしい創造性を支えるツールとして、緑茶の新たな価値が示された場となった。
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