頸椎のずれは、精神疾患、神経疾患、心肺疾患など、様々な症状を引き起こす可能性があります。番組「健康1+1」において、台湾・信義堂中医診所の院長である呉国斌医師が、姿勢の悪さが頸椎に与える影響と、それによって起こるさまざまな症状について解説し、歪みを整え、症状を緩和するためのストレッチ法を紹介しました。
呉医師の臨床観察によると、「難治性」とされる多くのケースには、首のこわばりや頸椎の軽度の歪みが関連しており、これは標準的な画像検査では、変形が進行するまで見逃されることが多いそうです。
ある患者の症例では、頭痛、めまい、不眠、高血圧、眼精疲労、視力低下、動悸、胸の圧迫感、首の痛み、手のしびれ、耳鳴り、難聴など、複数の症状があり、多くの医師を受診して薬を服用しても改善が見られませんでした。呉医師は、詳細な検査の結果、頸椎の歪みが原因の可能性があると判断し、関節の再調整を行ったところ、多くの症状が著しく、しかも短期間で改善しました。
簡単で効果的な頸椎ストレッチ法
呉医師は、多くの患者が精密検査を受けても原因が特定されないと指摘しています。
X線、CTスキャン、MRIなどの画像診断では、軽度の頸椎の歪みは通常「正常」とされ、骨棘や椎間板ヘルニアといった明確な異常が進行してからでなければ、症状との関連が認識されません。
しかし、呉医師は、わずかな歪みでも周囲の筋肉、組織、靭帯を緊張させ、血流や神経伝達に支障をきたし、さまざまな健康問題につながると説明しています。
以下は、呉医師が臨床経験に基づいて考案した頸椎ストレッチ法で、継続的に行うことで歪みを整え、関連症状の緩和が期待されます。
ストレッチ①:牽引ストレッチ
頸椎を縦方向に伸ばし、頭蓋骨の軽微なズレを矯正する動きです。
手順:
- 肩の力を抜き、下に落とします。あごを少し引きます。
- 頭頂を上に持ち上げるようにし、背骨を軽く引き伸ばします。
- その姿勢を保ちながら、頭を左右にゆっくりと揺らします。
このストレッチにより、頭蓋骨と第一・第二頸椎の間が広がり、頸椎がリラックスします。頭を軽く揺らすことで頭蓋骨の微細な歪みも矯正されます。
ストレッチ②:側頸部ストレッチ
前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋(いずれも首の深部筋)を含む頸椎の両側の筋肉と靭帯を伸ばし、リラックスさせます。
手順:
- 片方の手を体の横に下ろします。
- 頭をゆっくりと反対側の肩に倒します。
- 10秒間キープし、反対側も行います。
- 各側5回ずつ繰り返します。
ストレッチ③:後頭下筋マッサージ
後頭部の血流と気の流れを促進し、眼精疲労を和らげます。
手順:
- 両方の親指を使って、後頭部と頸椎のつなぎ目のくぼみをマッサージします。
- 親指をそのままにして、頭を左右に優しく揺らします。
- この動きにより、第一・第二頸椎の微妙なズレも矯正され、関連症状の改善が期待できます。
ストレッチ④:首の後ろの揉みほぐし
首の筋肉を緩めると同時に、問題部位を見つける手がかりにもなります。
手順:
- 首の後ろ側、頸椎の左右の筋肉を指でつかみ、揉みます。
- 反対の手でも同様に行います。
- 特に痛みが強い箇所があれば、そこが歪みのポイントである可能性があります。
ストレッチ⑤:横突起調整
頸椎の関節のズレを押し戻す調整ストレッチです。
手順:
- 揉みほぐし後、痛みのある箇所を特定します。
- 頸椎に対し4本の指を横に重ね、親指で痛みのある場所を前方に押します。
- 押しにくい場合は、人差し指・中指・薬指の3本を使い、中指に力を集中させます。
- より強い圧が必要な場合は、もう片方の手で後ろから補助して押し込みます。
- そのまま30秒〜1分間圧をかけます。
ストレッチ⑥:タートルネック回旋
頸椎の痛みを和らげ、ズレを矯正する回旋運動です。
手順:
- 上半身を前に倒し、首が地面と平行になるようにします。
- 頭をゆっくり左右に回します。
- 痛みを感じた場所で7〜10秒間静止します。
- 少し大きく外側に回してまた7〜10秒静止。
- さらに外側へ回して同様に保持する。
- この一連の流れを3回繰り返します。
ストレッチ⑦:「ユニオンジャック」ヘッドローテーション
第一頸椎から第七頸椎までを全体的に動かし、全体的なズレを整える動きです。
手順:
4方向の動きを各5回ずつ行います。
- セット1:斜め上45度左→中央→斜め上45度右→中央(各2秒)
- セット2:水平に左→中央→右→中央(各2秒)
- セット3:上→中央→下→中央(各2秒)
- セット4:斜め下45度左→中央→斜め下45度右→中央(各2秒)
ストレッチ⑧:バタフライアーム
首・肩・背中上部の筋肉をほぐし、特に下部頸椎に関連する問題、たとえば「ストレートネック」や「猫背」に効果があります。
手順:
- 両腕を左右にまっすぐ伸ばし、バタフライ泳法のように動かします。
- 指を曲げて「かぎ爪」の形にし、手のひらを下に向けて肩甲骨を動かすように前方へ10回動かします。
- 手のひらを上に向け、同じ動きを10回繰り返します。
ストレッチ⑨:頭の傾けと揺れ
バタフライアームの後に行うことで、関節周囲の筋肉をほぐし、手のしびれなどを改善する効果が期待できます。
手順:
- 頭を後ろに倒します。
- 顔は正面に向けたまま、頭を左右に優しく揺らします。
頸椎の歪みに関連する健康問題
呉医師によると、診断が難しく複雑な症状の多くに頸椎の歪みが関係しています。
主な関連疾患:
- 精神疾患: 慢性疲労(伝統医学では神経衰弱)、不安、恐怖症、心因性身体症状(身体症状症)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、強迫性障害、統合失調症
- 神経疾患: 顔の鋭い痛み(三叉神経痛)、顔面麻痺、手や首の震え、肩や手のしびれ・痛み
- 脳関連: アルツハイマー病、パーキンソン病、運動失調(小脳性)、てんかん、脳震盪後症候群、慢性片頭痛、脳梗塞の前兆(TIA)、脳動脈硬化、めまい、不眠
- 目の問題: 緑内障(眼圧の上昇)、眼振(目の揺れ)、眼瞼下垂(がんけんかすい)、斜視、複視、視力低下
- 耳鼻咽喉: 耳鳴り、季節性・アレルギー性鼻づまり、嗅覚障害、嚥下困難
- 心肺系: 胸痛・狭心症様症状(急性冠症候群)、不整脈、喘息、気道拡張症、慢性気管支炎
- その他の症状: 高血圧、慢性疲労、手足の冷え、低血圧、四十肩、顎関節症(あごの関節の不調)
心臓は胸にありますが、交感神経の一部が頸椎を通って心臓に接続されているため、頸椎の歪みは動悸・胸の圧迫感・息苦しさなどにもつながると呉医師は説明しています。
頸椎の歪みを引き起こす生活習慣
以下のような習慣は、すぐには痛みを感じなくても、時間の経過とともに脊椎関節の負担、圧迫、変性を招き、最終的には頸椎の不整列につながる可能性があると、呉医師は述べています。
- 長時間の前傾姿勢:パソコンやスマホ操作、読書など
- 姿勢を長時間固定する:黒板を書く教師、料理する料理人など
- 悪い座り方:頭を前に突き出すような姿勢
- 悪い寝姿勢:枕を使わない、枕が高すぎる、寝ながら読書・テレビ、うつ伏せで寝るなど
- 激しい運動:準備運動やストレッチ不足、誤ったフォームでの運動
さらに、加齢に伴って頸椎の変性は自然に起こり、それが不整列の可能性を高めることもあると、呉医師は述べています。
この記事で表明された見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
(翻訳編集 井田千景)
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