私たちは毎日水を飲んでいますが、1日にどのくらい飲んでいるか意識したことはありますか? 水分が多すぎても少なすぎても、腎臓に負担をかけます。
人体の水分割合はおよそ50~70%。新生児では75%ほどと高く、年齢を重ねるにつれて減少し、成人男性は約60%、女性は約50~55%です。水は血液循環、新陳代謝、消化吸収、酸塩基平衡、老廃物の排泄などに関わり、人体にとって最も重要な要素です。
腎臓は体の「フィルター」であり、その中にある小さな糸球体が濾過装置の役割を果たします。水分の出入りとバランスこそが腎臓の最重要機能です。しかし、多くの人は誤った水の飲み方で気づかぬうちに腎臓を傷めています。
ここでは「水の飲み方に関する10のよくある間違い」をご紹介します。あなたはいくつ当てはまりますか?
第10位:運動後に水を大量に一気飲み
運動後や温泉、サウナ、激しい下痢の後に、強い喉の渇きから一気に水を大量に飲んで、吐き気や頭痛に襲われたことはありませんか? 多くの人は「水が冷たすぎたから」と思いがちですが、実は違います。原因は「大量の水を一気に飲んだことによる低ナトリウム血症」です。
運動や発汗、下痢などで失われるのは水分だけではなく、ナトリウムやカリウムといった重要な電解質も含まれます。そこで水を一気飲みすると、血液中のナトリウムとカリウムがさらに薄まり、バランスが崩れます。低ナトリウム血症とは、頭痛、吐き気、重症では意識障害や脳浮腫を引き起こすことです。低カリウム血症とは、筋力低下、全身のまひ、不整脈を招きます。これは大げさに言っているのではありません。『ニューイングランド医学誌』では、マラソン選手が水を飲みすぎて脳浮腫を起こし昏睡に陥った事例が記録されています。
正しい方法:大量の水分を失った時は、水分補給と同時にナトリウム・カリウムなどの電解質も補うことが大切です。低糖のスポーツドリンクや、水に少量の塩を加えるとよいでしょう。
第9位:スープや飲料で水を代用する
研究によると、長期的に砂糖入り飲料、炭酸飲料、加工されたお茶飲料を水の代わりにすると、利尿作用や腎臓への負担が増し、さらにはタンパク尿やメタボリックシンドロームのリスクが高まることが分かっています。「水が苦手だから、スープを多めに飲めばいい」と思う人もいます。しかし、例えばラーメンのスープを最後まで飲み干すと、多くの場合、飽和脂肪、プリン体、カロリー、塩分、糖分などを大量に摂取することになり、負担がかかり飲料以上に腎臓を傷めるのです。
正しい方法:水分補給の基本は「水」にすること。飲料はたまに飲む程度にとどめ、加工飲料や砂糖入り飲料は避け、1日の総摂取水分量の10%を超えないようにします。参考としては、無糖の緑茶やブラックコーヒーなどが良い選択肢です。スープは天然素材を使い、薄味でシンプルなものを選びましょう。
第8位:夕食後や就寝前に大量の水を飲む
日中に忙しくて水を飲むのを忘れ、夜にまとめて飲む人もいますが、これはよくありません。夕食後や就寝前に水を大量に飲むと、睡眠の質が低下します。眠れなくなると脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンが減少し、尿を濃縮できずに夜間頻尿が起きたり、自律神経が乱れたりします。その結果、体が休まらず、免疫や代謝も乱れてしまい、腎臓への負担も大きくなります。
正しい方法:夕食後の水分摂取は1日の合計の20%以内に抑えること。就寝3時間前以降は150mlを超えないようにしましょう。
第7位:寒い日や冷房の部屋で水分補給を忘れる
寒い環境では喉の渇きを感じにくく、冬や冷房の効いた部屋では「水を飲まなくても大丈夫」と思いがちです。そのため、1日でコップ1杯しか飲まないという人も少なくありません。しかし寒い時期は血管が収縮し、水を飲まないと血液が濃縮して粘り気を増し、腎臓の細かい血管に大きな負担をかけます。これが冬の脳卒中や心筋梗塞の原因にもなり得ます。
正しい方法:寒い環境でも喉が渇いていなくても、意識的に水を飲むこと。目安としては2時間ごとにコップ1杯を飲むようにしましょう。
第6位:頻尿だからと水を控える
高齢の方の中には、糖尿病や前立腺肥大、あるいは骨盤底筋や神経系の衰えによって、頻尿・尿意切迫・尿失禁などの排尿トラブルを抱える人が少なくありません。その際、「水を飲まなければ排尿も減る」と考えて水分を控えてしまう人がいます。しかし、これは非常に危険な行為です。糖尿病や前立腺肥大などの排尿トラブル自体が慢性腎不全の原因となり得ます。さらに水分を減らせば腎機能は一層悪化し、ひとつの健康問題が二重の問題となってしまうのです。
正しい方法:泌尿器科や婦人科を受診し、頻尿の原因をきちんと治療することが大切です。頻尿があるかどうかに関わらず、水分摂取の頻度や量を減らしてはいけません。
第5位:起床後の最初の一杯を飲むのが遅い
人体が最も脱水状態にあり、血液が濃縮しているのは朝起きてまだ水を飲んでいない時です。夕食後から就寝前までは夜間のトイレを避けるために水分を控えがちですが、睡眠中も尿の生成、呼吸、発汗などで水分は失われています。特にいびきをかく人や寝汗をかきやすい人は、さらに水分が不足しやすいのです。
この水分不足による血液濃縮は、朝の脳梗塞や心筋梗塞の原因になり、腎臓にとっても大きな負担となります。この危機は、起床後すぐに水を飲むことで初めて和らぎます。しかし、多くの人は朝の最初の一杯を遅く飲んでしまい、リスクを高めています。
正しい方法:就寝前にベッドのそばに温かい水を入れた保温ボトルを置いておきましょう。夜中にトイレに起きた際に数口飲むと良いです。そして、朝は起き上がる前にまず250mlの水を飲み、それからゆっくりと体を起こすようにしてください。これで朝の血液濃縮のリスクを回避できます。
第4位:ミネラルウォーター・海洋深層水・アルカリ水を盲信する
一部の腎臓病患者の中には、炭酸水やミネラルウォーター、海洋深層水、アルカリ水などのペットボトル水を「体に良い」と信じ、日常的に飲み続けている人がいます。しかし、これらを毎日飲むことでプラスチック微粒子を大量に取り込むリスクがあります。また、多くのボトル水には電解質が過剰に含まれており、リン・カリウム・マグネシウムの制限が必要な慢性腎不全の患者にとっては、かえって腎臓の負担となります。
正しい方法:家庭の水道水を簡単にフィルターでろ過し、沸かしてから飲用するのがおすすめです。経済的で健康的、そして腎臓にも優しい方法です。
第3位:本来は水分制限が必要なのに大量に飲む
1日の正しい水分摂取量は体重の3〜4%が目安です。体重60kgなら1,800〜2,400ml、体重70kgなら2,100〜2,800mlの水を飲むようにしましょう。この総量には食べ物・果物・飲料・スープなども含まれます。3%は最低限で、尿路結石・尿路感染・風邪・痛風・慢性腎不全の人は4%を目安にすると良いとされています。
しかし、心不全・肺水腫・肝硬変、あるいは慢性腎不全で尿量が減っている、透析を受けている場合などは水分制限が必要です。尿が少ないのに大量に飲むと、急性肺水腫を引き起こし命に関わる危険があります。
正しい方法:尿量が明らかに少ない、あるいは医師から水分制限を指示されている場合は、公式②「前日の尿量+500〜700ml」が基準となります。
例:昨日の尿量が300mlなら、翌日の摂取量は800〜1,000mlに制限すべきです。
第2位:「水をたくさん飲むほど腎臓に良い」と思い込む
臨床では、腎機能が急速に悪化した患者さんに「水をしっかり飲んでください」と指導することがあります。しかし一部の人は「飲めば飲むほど腎臓が守られる」と誤解し、1日4,000〜5,000mlもの水を飲むケースがあります。
これは「過ぎたるは及ばざるが如し」です。1つ目のリスクは、電解質が薄まり、低ナトリウム血症・低カリウム血症を起こします。もう1つのリスクは、腎臓が過労状態になり、糸球体が高ろ過状態に。短期的には異常を感じにくいが、長期的には硬化を招き腎臓を傷める恐れがあります。
正しい方法:慢性腎不全の人は「体重の3〜4%」を基準に。多くても4%を超えないようにし、焦って大量に飲まないことが大切です。
第1位:子どもの頃から水をほとんど飲まず、それに気づかない
実際には「水を飲みすぎて腎臓を傷める人」よりも、「水をほとんど飲まない人」の方が圧倒的に多いのです。私の臨床経験でも、毎日1,000ml以下しか飲まないまま大人になった人が多数います。そうした人は、疲れやすい、風邪をひきやすい、代謝が遅い、高血圧・高血糖・高脂血症・痛風になりやすい、尿路感染や尿路結石を繰り返す、同年代に比べ腎機能(糸球体ろ過率)が低い。こうした「長期的な慢性脱水」が、腎臓の早期老化を招いているのです。
多くの人は「喉が渇いたら水を飲めばいい」と考えていますが、喉の渇きを感じる時点ですでに腎臓は深刻な水不足に陥っています。
正しい方法:1日、実際に自分がどのくらい水を飲んでいるかを計測してみましょう。目安は「体重の3〜4%」。常に清潔な水を身近に置き、仕事や学校でもこまめに飲む習慣をつけることが大切です。
間違った水分補給習慣によって、知らないうちに腎臓を傷めてしまっていませんか? この記事を参考に、正しい水分補給の習慣を身につけましょう。
(翻訳編集 華山律)
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