現代人は、ストレスや不規則な生活、食生活のバランスの崩れにより、身体や口腔に健康上の警告サインが現れることが多くなっています。イギリスのある新しい研究では、地中海式の食事に近い生活習慣を実践している人は、歯ぐきがより健康で、歯周炎などの口腔疾患にかかるリスクも、明らかに一般の人より低いことが示されています。
歯周炎は、微生物によって引き起こされる人間の免疫反応と関連のある疾患であり、歯周組織や骨を破壊し、重症化すると歯の脱落を引き起こすこともあります。研究では、微生物や物理的損傷が歯ぐきの免疫システムを活性化させ、「高感度C反応性タンパク質」などの炎症性バイオマーカーを生成させることが判明しています。
しかしながら、これまでのところ、免疫系の活性化が完全に歯周炎によるものなのか、それとも食事など他の要因によるものなのかは明らかではありませんでした。これらの問題は、学界で長年注目されてきた焦点の一つです。
これらの問題を明確にするために、約200年の歴史を持つキングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、地中海式の食事を実践していない人の方が、より重度の歯周疾患にかかりやすいことを発見しました。この研究は、9月15日に『歯周病学ジャーナル』に発表されました。
今回、研究チームが地中海式の食事を対照に選んだのは、それが心血管疾患、神経変性疾患、そして一部のがんなど、重大な病気のリスクを下げることが広く証明されているからです。そのため、地中海式の食事は世界中で健康的な食事スタイルの一つとして評価されています。
この食事法は、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、そして健康的な脂肪(オリーブオイル)を多く摂ることで知られています。また、多くの証拠が、良質な栄養素が人体の免疫システムや炎症反応を効果的に調整できることを示しており、その効果は、食事中に含まれるマクロ栄養素、ミクロ栄養素、植物化学物質によって異なります。
研究チームは、ロンドンのキングス・カレッジの入院患者200名を対象に、まず歯周の包括的な臨床評価と血液採取を行い、さらに詳細な食事頻度アンケートを通じて、地中海式食事への順守度を調査しました。同時に、患者の喫煙習慣や身長・体重などのデータも記録しました。
その後、研究者たちは、患者の血清中に含まれる主要な炎症性マーカーである「高感度C反応性タンパク質」、および副次的な炎症マーカーである「マトリックスメタロプロテイナーゼ-8」と「インターロイキン(IL)」IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-10、IL-17の濃度を分析しました。
調査の過程で、200名の入院患者のうち195名が完全なデータを提供しており、そのうち112名の参加者は、地中海式の食事に高い順守度を持つと分類されました。また、非喫煙者は全体の55.7%、かつて喫煙していた人が34.4%、現在喫煙している人が9.4%を占めていました。
比較の結果、完全なデータを持つ195名の参加者のうち、実に170名が中等度から重度の歯周炎と診断され、歯周の健康状態が良好だったのはわずか14名でした。データの分析によると、地中海式の食事を実践していない患者は中重度の歯周炎にかかる傾向が強く、血清中の炎症マーカーであるIL-6および高感度C反応性タンパク質の濃度も高いことがわかりました。
対照的に、豆類、野菜、果物、健康的な脂肪、全粒穀物など、植物性栄養素を豊富に含む食品を頻繁に摂取する地中海式食事の実践者は、体内の各種炎症マーカーの濃度が全体的に低く、多くが非喫煙者でした。さらに、研究では、赤身肉の摂取頻度が歯周炎の重症度と正の相関関係にあることも明らかになりました。
研究者は、データ中の変数を調整した結果、IL-6だけが歯周炎と直接的な関連を持つことが確認されたと述べています。また、赤身肉の摂取頻度が歯周炎の重症度と正比例することも発見されました。これは、赤身肉がタンパク質と弱酸性を豊富に含んでおり、口腔内の歯周病原菌にとって繁殖しやすい環境を提供している可能性があるためです。
研究者は、これらの結果から、バランスの取れた地中海式の食事が歯ぐきの病気や全身の炎症を減らすのに役立つ可能性があると指摘しています。また、赤身肉の摂取量も歯周の炎症に影響を及ぼす可能性があります。今後は、より大規模なサンプルサイズ、さらに詳細な食物摂取頻度アンケート、カロリー摂取量などを含めた精密な研究を行い、これらの観察結果をさらに裏付けていく予定です。
研究の第一著者である、ロンドン・キングス・カレッジのポスドク研究員ジュゼッペ・マイナス博士は、同大学のニュースルームに対して次のように述べています。「私たちの研究結果は、バランスの取れた地中海式の食事が、歯ぐきの疾患や全身の炎症を減らす可能性があることを示しています。同時に、歯周病の重症度、食事、炎症のあいだには関連がある可能性も観察されました」
彼は続けてこう述べています。「そのため、今後患者の歯周炎治療計画を立てる際には、食事という要素も考慮に入れるべきです。今後は、食物の摂取と歯ぐきの疾患との関係について、さらに深い研究を行っていくことができます」
この研究の責任著者である、ロンドン・キングス・カレッジの歯周病学教授ルイージ・ニバリ氏は、次のように述べています。「ますます多くの証拠が、バランスの取れた食事が人々の歯ぐきの健康維持に役立つことを示しています。私たちの研究もこの点を示しており、今後は個別化された食事プランを開発するためのさらなる研究が必要です」
(翻訳編集 解問)
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