体重管理は、カロリー計算が必要な困難な課題であり、多くの人がその成果に高い期待を寄せています。ある臨床試験では、高酸性食品を低酸性食品に置き換えることで、短期間での体重減少が可能であることが示唆されました。
実際、参加者は16週間で約6kgの減量に成功しており、スピードは速いものの、医師が不健康と判断するほどではありません。この発見は、低酸性食品の摂取が健康に良い影響を与え、高酸性食品は悪影響を及ぼすという一連の研究の最新成果の一つです。
低食事酸負荷と減量
『Frontiers in Nutrition』に掲載されたこの臨床試験の著者らによれば、特定の穀物、肉、チーズ、魚、卵に含まれるタンパク質やリンは酸の前駆体を放出し、血液のpHを酸性に傾けるため、これらの食品を多く含む食事は「高食事酸負荷」とされます。反対に、多くの果物や野菜は酸を含んでいたとしてもアルカリ性の作用を持ち、これらを中心とした食事は「低食事酸負荷」となります。
著者らは、食事の酸負荷を変えることで体重にどのような影響が出るかを検証しました。62人の過体重の成人を無作為に、低脂肪ビーガン食または地中海食に割り当て、16週間継続。その後、4週間の洗浄期間(食事制限の解除)を経て、もう一方の食事をさらに16週間続けました。
体重の変化に加えて、研究者らは「純内因性酸生成量」と「潜在的腎酸負荷」を用いて食事の酸負荷を算出しました。潜在的腎酸負荷は、食品中のマグネシウム、タンパク質、カリウム、カルシウム、リンの含有量に基づいて、pHに与える影響を推定し、純内因性酸生成量はそこに身長や体重を加味したスコアです。
その結果、ビーガン食では酸負荷が大きく減少した一方、地中海食では顕著な変化は見られませんでした。また、ビーガン食は約6kgの減量と関連しており、地中海食では体重の変化はほとんどありませんでした。著者らは、この減量効果が摂取カロリーとは独立している可能性を示唆しており、ビーガン食が低カロリーであるにもかかわらず、他の要因が関与している可能性を指摘した過去の研究を引用しています。
ビーガン食は完全に植物性食品で構成されており、動物性食品を一切含まないため、強いアルカリ性効果を持ちます。これに対し、地中海食は植物性食品が中心ではあるものの、魚や乳製品、鶏肉も含まれており、ビーガン食ほどアルカリ化効果は高くありません。
「肉、卵、乳製品のような酸生成食品を摂取すると、食事酸負荷が増加し、体重増加に関与する炎症を引き起こします」と、主任研究者であり医師委員会の臨床研究ディレクターであるハナ・カレオヴァ博士はプレスリリースで述べています。「しかし、葉物野菜やベリー類、豆類などの植物性食品に置き換えることで、減量を促進し、健康的な腸内細菌叢(腸内の微生物環境)を育むことができます」
筋肉の消耗
カレオヴァ氏はエポックタイムズにメールで、ビーガン食は豆、レンズ豆、エンドウ、大豆、豆腐、豆乳などの植物性タンパク質源から十分なタンパク質を供給できると述べました。ビーガン食による筋肉消耗の可能性についての質問に対し、研究チームは骨密度スキャンで体組成を測定し、減量のほとんどが脂肪の減少によるものであると説明しました。
動物性食品を除いた食事で懸念されるのは、ビタミンB12の欠乏です。「この点については、サプリメントで補いました」とカレオヴァ氏は述べています。「ビタミンB12は栄養酵母、強化シリアル、植物性ミルクなどからも摂取可能ですが、最も簡単で確実な方法はサプリメントです」
「低酸性の食事が持つアルカリ化作用は、単なるカロリー制限を超えた代謝上のメリットを引き出す可能性があり、これは非常に強力です」と、今回の研究には関与していない、リニュー・バリアトリクスの主任肥満外科医であるヘクター・ペレス博士はエポックタイムズにメールで語りました。
低酸性ビーガン食は、適切に栄養補強され、個別に調整されれば、減量において効果的で賢明な戦略になり得るとペレス氏は述べています。一方で、計画が不十分なビーガン食では、ビタミンB12、鉄、カルシウム、オメガ3、タンパク質の質が不足し、特に体重や除脂肪体重を減らす際には問題となると指摘しました。
高タンパク質食と減量
一部の研究では、推奨される1日摂取量を上回るタンパク質摂取が、減量と関連していることが示されています。たとえば、『Journal of Obesity & Metabolic Syndrome』に掲載された研究では、高タンパク質の食事が空腹ホルモン(食欲を刺激するホルモン)を抑え、満腹ホルモン(満足感を高めるホルモン)を増やすことで、減量に効果的であることが示されました。しかし別の研究では、腎機能に障害のある人にとって高タンパク質食は死亡リスクの上昇と関連しており、推奨されないことが分かっています。
以下に紹介する2人の専門家は、特定の条件を満たし安全性を確保すれば、高タンパク質食は減量に有効であるとしています。一人は推奨される1日摂取量を大きく超える摂取を勧め、もう一人はわずかに超える摂取を推奨しています。
推奨される1日摂取量の25~50%超のタンパク質摂取
ペレス氏は高タンパク質食を減量のために推奨していますが、「詳細が重要です」と強調します。リブアイステーキやプロテインシェイクを無制限に摂るのではなく、タンパク質は食物繊維や健康的な脂肪と組み合わせ、腎機能や水分補給にも常に注意を払う必要があります。
「現在のタンパク質の推奨される1日摂取量は、体重1kgあたり0.8gですが、これは欠乏を防ぐための最小限の量です。減量中に筋肉量を維持するには十分ではありません」と彼は述べています。「私は1.0~1.2g/kgを提案します。これは推奨される1日摂取量の25~50%増にあたります。たとえば体重70kgの人なら、基準の56gではなく、1日あたり約70~84gが適切です」
ちなみに、刻んだ鶏むね肉1カップには約43gのタンパク質が含まれています。
ペレス氏はまた、タンパク質の摂取によって果物や野菜の摂取が犠牲になってはならないと警告しています。彼は、タンパク質を食事の中心に据え、皿の残りの部分は食物繊維が豊富な植物性食品で満たすことを勧めています。
推奨される1日摂取量をわずかに超えるタンパク質
体重管理は非常に重要な課題ですが、それを全体的な健康という観点から捉える必要があります。高タンパク質食のような減量戦略は、行き過ぎると他の健康に必要な栄養素を十分に摂れなくなる可能性があると、認定栄養士のリサ・シュルツ氏は述べています。
高タンパク質食が減量をサポートすることは事実ですが、その効果についての議論はしばしば単純化されすぎていると、シュルツ氏はエポックタイムズへのメールで語りました。タンパク質には体重管理を間接的に助ける機能がありますが、タンパク質の「質」や、食物繊維、健康的な脂肪、炭水化物とのバランスを無視した高タンパク質食は、かえって逆効果になる可能性があります。
「プロテインシェイクや加工肉を過剰に摂取し、野菜や複合炭水化物を軽視する人たちを多く見てきました。その結果、疲労感、膨満感、停滞感を訴えるようになります」と彼女は述べました。
シュルツ氏は、推奨される1日摂取量をわずかに超える程度のタンパク質摂取を推奨しています。本当に重要なのはバランスの取れた食事であり、赤身のタンパク質を、食物繊維が豊富な野菜や全粒穀物と組み合わせることで、減量効果に加えて、消化、エネルギー、気分の改善にもつながると述べました。タンパク質は確かに大切ですが、あくまで全体の栄養バランスの中の一部にすぎないとも強調しています。
食事酸負荷が他の健康に与える影響
研究では、食事酸負荷が以下のような健康リスクに関与していることが示されています。
がん
『Frontiers in Nutrition』に掲載された系統的レビューによると、高酸負荷の食事は、がんのリスク増加や、がん患者における予後の悪化と関連する可能性があります。この背後にあるメカニズムの一つとして、高酸性の食事は通常、果物や野菜が少なく、動物性および加工食品が多い傾向があり、これががんに関連していると考えられています。また、酸塩基バランスの乱れは、がんの発症や進行に関わる特定の分子活動を調節することも分かっています。
2型糖尿病
『Diabetologia』に掲載されたフランスの大規模な人口ベースの研究では、欧米型の高酸負荷食が、他のリスク要因とは無関係に2型糖尿病のリスク増加と関連していることが明らかになりました。著者らは、今後の研究によってこの結果が再確認されれば、糖尿病予防のために低酸負荷食を推奨する動きにつながる可能性があると述べています。根本的なメカニズムとしては、高酸負荷食がインスリン抵抗性の促進やインスリン感受性の低下に影響し、血糖コントロールの悪化につながると考えられています。
精神的健康
『BMC Psychiatry』に掲載された研究では、酸性食品への曝露が特に高いイランの男女において、高酸負荷食が不安の発症率と関連し、女性では抑うつの発症率とも関連していることが示されました。考えられるメカニズムとしては、細胞外の酸性度の変化に敏感な「酸感受性イオンチャネル」が関与している可能性があり、高酸負荷食がこれらのチャネルを活性化させることで、動物実験では抑うつに関連する生物学的変化を引き起こすことが示唆されています。
酸性-アルカリ性食事をめぐる論争の説明
医学界の一部では、酸性-アルカリ性食事理論を支持する声がある一方で、懐疑的な意見も存在します。しかし、両者の主張を分析すると、その違いは一般に思われているほど大きくはないようです。
この論争は主に2つの要因に起因していると考えられます。ひとつは、酸を含む食品と、食事酸負荷を増加させる食品との混同です。食事酸負荷とは、食品が消化・代謝された後に体内でどのようなpH変化をもたらすかを示します。たとえば、オレンジやトマトなどの酸味のある果物は、消化後には体をアルカリ化する作用があり、「低酸負荷食品」と見なされます。反対に、肉や卵などは代謝後に酸性の作用を示し、「高酸負荷食品」とされます。これは『Open Heart』誌に掲載された研究でも報告されています。
もうひとつの論点は、「低度代謝性アシドーシス」と「真のアシドーシス」の区別です。酸性-アルカリ性食事理論を支持する人々は、肉の摂取量が多く、果物や野菜の摂取が少ない食生活を送る多くの西洋諸国の人々が、低度代謝性アシドーシスの影響を受けていると主張しています。
一方で、この理論に懐疑的な人々は、人体には緩衝システムが備わっており、血中のpHは通常7.35~7.45の範囲に保たれるため、食事によってアシドーシス(酸血症)が起こることはないと指摘します。確かに、通常の食品摂取では血中pHが7.35を下回ることはなく、医学的に危険な「真のアシドーシス」を引き起こすことはありません。
ただし、酸性-アルカリ性食事理論を支持する人々も、食品が真のアシドーシスを引き起こさないことには同意しています。彼らは、高酸負荷の食事が「低度代謝性アシドーシス」(正常範囲内ではあるが、やや低めのpH:7.35超~7.42未満)を引き起こすと考えています。
この理論を支持する専門家の一人であるカレオヴァ氏は、高酸負荷の食事が低度代謝性アシドーシスを招き、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促し、健康に悪影響を及ぼすと述べています。
一方、植物性食品はこのpHの低下を防ぐだけでなく、コルチゾールの生成を抑える効果もあり、減量や心代謝の健康指標の改善にもつながるとされています。
「食事によって引き起こされる低度代謝性アシドーシスという概念は、血中pHが危険なほど低下するのではなく、体内の酸負荷がわずかに、かつ慢性的に増加することを意味します」と、『Your Doctors Online』に所属する内科・心臓専門医のアシム・チーマ博士はエポックタイムズに語っています。この見解は、カレオヴァ氏の主張とも一致します。
さらにチーマ氏は、高酸負荷の食事が直接的に血中pHを変化させることはないものの、長期的には腎臓や骨に負担をかける可能性があると指摘しています。低度のアシドーシスは目立ちにくいものの、長期的に見ると骨密度や筋機能、炎症マーカーなどに悪影響を及ぼす可能性があります。「したがって、『アルカリ性』食品が血中pHを直接アルカリ性に変えることはないとしても、植物を多く含む食事は炎症を軽減し、代謝機能を支えるという点で、血中pHとは異なる仕組みで健康を促進します」
要するに、酸性-アルカリ性食事理論を支持する人々は、植物性食品が体内のpHを正常範囲内でわずかに調整し、健康に有益な影響をもたらすと考えています。一方で、懐疑的な人々は、植物性食品の健康効果は抗炎症作用やその他の生理的な特性によるものだとみなしています。
結論としては、どちらの立場を取るにせよ、果物や野菜を豊富に含む食事は、健康を大いに促進することに変わりありません。
(翻訳編集 日比野真吾)
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