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世界一乾燥した砂漠に奇跡の雨 壮大な花の絨毯が出現

チリ北部に位置するアタカマ砂漠は、世界で最も乾燥した砂漠として知られています。この地域では最近、非常に珍しい降雨があり、乾いた大地に眠っていた花が一斉に芽吹き、見事な花畑が出現しました。

AP通信によると、アタカマ砂漠の年間平均降水量はわずか2ミリです。現在は南半球の冬にあたり、先日には異例の豪雨が数回にわたって発生し、砂漠の山麓や高地を潤し、色とりどりの花が咲き誇る幻想的な景観が広がりました。

専門家たちは、2025年は近年で最も降雨量が多い年だと指摘しており、国境付近にある一部の高地では、7月から8月にかけて降水量が60ミリに達した地域もあるといいます。

チリ国立自然史博物館の植物学部門で首席館長を務めるビクトル・アルディレス氏は、アタカマ砂漠の赤い土壌には200種類以上の花の種子が一年中埋もれており、冬の雨を静かに待っていると説明しました。

アルディレス氏は、「空気中の湿度が一定の数値に達すると、土に埋まっている花の種は発芽し、成長を遂げて開花を始めます。ただし、すべての種が花茎となり、地上に伸びられるわけではありません」と述べました。

彼は「この過程で開花に至るかどうかを決める鍵は、水・温度・日照・湿度という4つの要素です。すべての種子が発芽するわけではなく、あるものは次の世代のために残され、またあるものは生き残れません」と補足しました。

今回の花畑では、ピンクや紫を中心に、黄色・赤・青・白の花々も見られました。夏の訪れとともに多くの花は11月には姿を消しますが、乾燥に強い種類は翌年1月まで咲き続けます。

この貴重な自然現象を一目見ようと、多くの観光客がアタカマ砂漠に押し寄せています。中には、首都サンティアゴから長距離を移動して訪れる人々もいます。アルディレス氏は「今回チリで起きたこの奇跡は、地球上のどこに行っても見ることはできません」と語りました。

2025年10月3日、チリのアタカマ砂漠で咲いた花。(JOSE TORRES/AFP via Getty Images)

専門家が植物の乾燥耐性遺伝子の秘密を探究

ロイター通信によると、科学者たちはアタカマ砂漠に生まれた小さな花を研究しているといいます。この花が持つ遺伝子が、気候変動による干ばつの悪化に対抗できる農作物の開発に役立つ可能性があるとしています。

地元で「パタ・デ・グアナコ」と呼ばれるこの植物は、アタカマ砂漠でまれに降る雨によって紫色の花を咲かせます。

チリ・アンドレス・ベロ大学の研究チームは、このパタ・デ・グアナコの遺伝子配列を解析し、極端に水が少なく温度差が激しい環境で生き残る仕組みを解明しようとしています。研究者たちの目標は、この乾燥耐性の特徴を他の農作物に応用することです。

同大学の植物バイオテクノロジーセンター長であるアリエル・オレリャーナ氏は、「気候変動の影響により、干ばつは世界中、そして我が国の農業にとって深刻な問題となっています。私たちには、干ばつに耐えられる植物が必要です」と述べました。

オレリャーナ氏によると、パタ・デ・グアナコの最大の特徴は、光合成の方式を環境によって切り替えられる点にあります。干ばつ、強烈な日射、高い塩分濃度といった過酷な条件下では、ベンケイソウ型有機酸代謝型光合成を行い、環境が改善すると一般的なC3型光合成に戻るという柔軟性を持っています。

同氏は、「この柔軟性こそが、遺伝子が環境の変化に従って光合成の切り替えを制御する機能を研究するための理想的なモデルとなります」と述べています。

(翻訳編集 正道勇)

陳俊村