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むずむず脚症候群の治療でパーキンソン病リスクが低下

アメリカで約3,000万人が経験するとされる夜間の脚のむずむず感(むずむず脚症候群)について、最近の研究は警戒すべき点と安心材料の両方を示しました。この疾患はパーキンソン病のわずかなリスク上昇と関連しますが、治療に使用される薬が保護的に働く可能性も示されています。

この発見は、両疾患が脳のドーパミン系を共有する複雑な関係を明らかにし、慢性の運動障害を持つ人にとって慎重な診断と継続的な経過観察が重要である理由を示しています。
 

意外な保護効果

『JAMA Network Open』に掲載された研究によると、むずむず脚症候群のある人は、ない人に比べてパーキンソン病のリスクが有意に高い傾向があります。

しかし、ドーパミンアゴニストで治療を受けている人はパーキンソン病の発症率がきわめて低く、むずむず脚のない人よりも低いという結果も示されました。

パーキンソン病治療でよく処方されるドーパミンアゴニストには、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンがあり、通常は錠剤や貼付剤として使われます。

韓国で約20,000人を対象にしたデータ分析では、ドーパミンアゴニスト未治療の人はパーキンソン病発症リスクが高く、対照群より早期に診断される傾向がありました。

治療群では15年間で0.5%のみがパーキンソン病と診断されました。一方、未治療群では2.1%で、4倍以上の差がありました。

今回の発見は、むずむず脚症候群とパーキンソン病の関連を示唆しますが、ドーパミンアゴニストがなぜリスク低下につながるのかについては、研究者もまだ明確には説明できていません。

ドーパミンアゴニストは、運動制御に関わる神経伝達物質ドーパミンに似た働きをします。パーキンソン病患者はしばしばドーパミン不足により運動時の振戦を経験します。ドーパミンアゴニストはパーキンソン病とむずむず脚症候群の両方の症状—振戦や脚を動かしたい衝動—を軽減することがありますが、どのような仕組みで効果が現れるのかは完全には分かっていません。
 

むずむず脚症候群の理解

むずむず脚症候群は、脚を動かしたくなる不快な衝動が特徴で、休息時や夕方に悪化し、運動によって部分的・一時的に緩和することが多いとされています。中西部総合脳卒中センター主任でSensIQ最高医療責任者、神経科専門医のルーク・バー博士(研究には非関与)がエポックタイムズに語りました。

女性に多く見られ、人口の最大10%に影響するとされるこの状態は、主に夜間に脚に「這うような」不快感が生じ、ほぼ抑えがたい動かしたい衝動が伴います。

「典型的には、内的な感覚と運動の現象です」とバー博士は述べています。

症状は休息時に悪化し、運動で改善しやすい傾向があります。鉄欠乏性貧血、腎疾患、糖尿病、多発性硬化症などが背景にある場合もあります。重症の場合、睡眠の質が低下し、精神的な健康や人間関係、仕事に影響することがあります。

酸化マグネシウムとビタミンB6は睡眠の質とむずむず脚症候群の症状を有意に改善し、マグネシウムの方がより効果的だったという報告もあります。
 

正確診断の重要性

治療による保護効果は励みになりますが、専門家は正確な診断が重要だと強調します。パーキンソン病患者にも見られる睡眠障害は周期的脚運動を伴うことがあり、むずむず脚症候群と誤認される可能性があります。

バー博士は、パーキンソン病はむずむず脚症候群と異なり、運動の遅れ、筋強剛、初期では片側のみに出る安静時振戦、腕振りの減少、歩行や姿勢の変化など特徴的な運動症状があると指摘します。

さらに彼は、初期のパーキンソン病では嗅覚の低下、睡眠障害、便秘、不安、うつなどの非運動症状が見られ、これは典型的なむずむず脚症候群では起こらないと説明しています。

研究の限界として、神経科医や睡眠専門医などの臨床医による診断確認の情報がなく、一部に誤診の可能性があると、神経学教授マーク・S・バロン博士が研究に付随する論説で述べています。

著者らはまた、2つの疾患の因果関係や、脳内で共有される経路の機能不全についても確定できていません。
 

患者にとってこれが何を意味するか

バー博士は、今回の研究は過度に不安を招くものではなく、思慮深く情報に基づく対応が重要であると述べています。

「新しい症状が出たときには、患者と臨床医の両方が再評価のハードルを低く保つことが大切です」と彼は言います。「特にパーキンソン病の症状や前駆となる非運動症状が見られる場合はなおさらです」

バー博士は、臨床現場での教訓として、患者の睡眠や運動症状の詳細に注意を払い、他の診断の可能性や変化を示す兆候に警戒し、状況が同じだと決めつけず時間とともに再評価を続けることが重要だと述べています。

患者にとっては、情報を把握し、新しい症状があればすぐに報告し、臨床医と定期的に経過を確認することが、今回の研究結果に対して合理的で落ち着いた対応につながると指摘しています。

(翻訳編集 日比野真吾)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。