9つの人類の自滅行為

虚言、欺瞞、盗み、自殺、殺人―。われわれ人類は歴史上、他人を傷つけ、自分を駄目にしてしまう行為を繰り返してきた。米科学誌「ライブサイエンス」ウェブ版では、高い知恵を持つヒトがなぜ自滅行為を行うのかを科学的に分析し、代表的な9つの行為を解説している。

 1、弱いものいじめ

 2009年に欧州で発表された子どもの行動心理に関する論文によると、小学生の約半数がいじめを体験していることが明らかになった。またアメリカで行われた別の調査によると、適切な情報があたえられなかったり、中傷されたりするなどの「職場いじめ」を体験したことのある人は約30%にのぼる。

 アリゾナ州立大学で健康と生活科学を研究するサラ・トレイシーさんは「いじめはたいていエスカレートする傾向にある。些細なことがきっかけになるため、防ぐことは非常に難しい」と話す。

 なぜ我々はいじめを行うのだろうか? ある心理学者は、いじめは地位と権力を築く目的で行われるとしているが、生態生物学者は、サルがいじめ行為を行うのを見て、人類進化の過程で既に通過した点ではないかと分析している。

 2、過度のストレス

 過度のストレスは、心臓疾患・がんなどあらゆる病気の危険性を高め、最悪のケースではうつ病にかかり自らの命を絶ってしまうこともある。現代の働く環境は過剰なストレスを感じさせる場となっており、そのストレスは子供へも影響している。国際労働組合の発表したデータによると、世界中で約6億人(世界人口の約22%)が毎週48時間以上働いているという。適度な運動と十分な睡眠が、ストレス解消の最も有効な手段だと専門家は言う。

 3、ギャンブル癖

 ケンブリッジ大学のクラーク博士によると、賭博にはまる心理は、薬物中毒患者のものと似ている。夢中になってスロットマシーンのマークを合わせようとしている人の脳には、大量のドーパミンが分泌している。そのため興奮と快楽を感じ、中毒になるという。もし負けると理性がなくなり、冷静な判断能力が失われ、かえってたくさん賭けてしまう。

 4、ゴシップ

 人は、うわさ話やゴシップを流すことで社会関係を円滑にしている。オックスフォード霊長類学研究者のロビン・ダンバー氏は、「ヒヒは、社会的なつながりを強くするのに互いの毛並みの手入れをすることに気遣うが、人間が社会的接着剤として使うのはゴシップだ」と指摘する。南フロリダ大学(USF)心理学のボブソン教授によると、共通の嫌いな人をもつ二人が、その人についての正確でない、事実と関係のない話をする時、互いの絆が強まるという。そこには、うわさの対象とされる人への配慮はない。

 5、騙すこと

 人は時に、自分をより魅力的に見せようとしてをつく。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、5分の1の米国人は、脱税行為はモラルの問題ではないと考えており、10%が不倫について相反する感情をもっている。そして、高い地位につく人でも最悪のペテン師になりうると調査結果は示している。女性に比べて、男性は性欲を満たすために自分の配偶者を騙す可能性が高い。ニューヨーク・アデルフィ大学の臨床心理士は「必ずしも人は毎度、有言実行することはできない」とし、「発言を実行に移すか否かについて、どこまで個人の倫理観や価値観が影響しているかはまだ明らかになっていない」と話している。

 

 6、盗み

 ミネソタ大学精神医学者ジョン・グラント氏(JOHN GRANT)が米国人4万3千人を対象に行った調査によると、「物を盗んだことがある」と回答した人は11%だった。グラントさんによると、彼らはみな購買力を持つが、窃盗行為のもつスリルを得るために物を盗んだという。

 

 

 

 7、暴力の傾向

 史料によると、人類は何百万年も前から侵略などに伴う暴力行為を繰り返してきた。それは家族や領土、自国の平和を守るために行われたことであり、今日のようなドラッグを求め、凶悪な武器を使うような争いの性質のものではない。暴力と怒りに満ちた現代人より、古代人は平和を好んでいたことがわかる。多くの研究者によると、暴力は生き残りをかけた戦いの歴史の中にあり、人類が発展する過程で超えてきた点だ。

 8、偽りを言う

 人は頻繁に嘘をつく。米イェール大学心理学者ロバート・フェルドマン氏の研究によると、60%の人が、10分間の会話の中で少なくとも一回は嘘を言うという。人は自尊心が揺るがされそうだと感じたとき、脳は深層心理に働きかけ「嘘をつく」ことを指令する。調査によると、職場の電子メールでの嘘は手紙よりも多いことがわかった。また嘘を話すことは真実を話すより30%多くの時間と労力が必要である。

 9、美容整形や刺青

 美を追究するために整形や刺青などを行い、皮膚を傷つける人は多い。2015年までに、17%の米国人が整形手術や刺青など、体の表面に何らかの処理をしていると予測されている。心理学者ダイアナ・ザッカーマン氏によると、より良いルックスであろうとする心理は、幸せであることを示そうという意味だという。また「論理的に見れば、外見が重視される社会に生きる私たちにとって、理解できる行為だ」と話している。

 科学者は性善説を信じる

 もちろん、善意ある行為を行うのも人間の性質である。ある科学者によると、人は善に基づいた行為をするとき、脳が快楽を感じ、健康と長寿をもたらすという。

 人類は様々な破壊行為を繰り返しているとしても、多くの科学者は「性善説」を信じている。米医科大ネットワークに掲載された、生物倫理学のポスト教授による50項目の研究によると、利他主義者の脳に現れた快楽を与える物質はストレスを解消させ、体に健康と長寿をもたらすことがわかっている。

 DNAや人類の発展、神経学、社会科学、心理学などの領域から、多くの科学者は人類には生まれつき善を行おうとする願望があり、善行は人類に多くの利益を与えるということを認めている。

 

 

 

 

 (翻訳編集・小松)