【医学古今】 

病気を起こす「健康法」

長寿社会になった今、健康意識は非常に高まっています。健康を維持するために、さまざまな方法を試して努力している人は少なくありません。しかし、その健康法が自分の体質に合うかどうかを考えず、やみくもに実行している人もいます。時には、それが裏目に出て、健康を守るためにやっている方法が、逆に病気を引き起こしてしまう事もあります。

 先日診た1人の患者さんは、数カ月来、めまいに悩んでいました。治療をずっと受けていますが、なかなか治りません。脈と舌を見ると、痰飲(たんいん、分代謝が悪くて生じた邪気)があることが認められましたので、水分、陰交、陰陵泉、豊隆などのツボを選んで鍼とお灸を実施しました。1回治療した後、症状がすぐに緩和し、3回治療した後、症状は完全に消えました。

 詳しく聞いてみると、この患者さんは健康のために長年、朝起きてからまず水を飲む習慣がありました。数カ月前には、急に激しいめまいを起こし、嘔吐もありました。耳鼻科で治療を受けた後、激しいめまいはなくなったものの、姿勢が変わる時のふらつきがなかなか取れませんでした。

 水は命に欠かせない成分として、確かに非常に重要ですが、飲んだ水が代謝しきれなければ、水毒が生じて、病気を起こすこともあります。漢方医学の理論から言えば、きちんと代謝できた水は、津液(しんえき)として、身体が潤いますが、代謝できない水は、痰、飲、水、湿などの邪気になり、病気を起こします。水は陰性のもので、これを代謝するには、陽気が必要です。陽気の弱い体質であれば、水の代謝に問題が生じやすいのです。その場合、冷たい水を飲むより、温かい白湯を飲んだほうが体に優しいのです。

 この患者さんは、長年冷たい水を飲んでいたため、体質に変化が起こり、やがて病気が起こりました。そのため、この患者さんには冷たい水の代わりに、温かい白湯を飲むように勧めました。患者さんはこの意見を受け入れて、朝に白湯を飲むようになりました。
 

(漢方医師・甄 立学)