かへりこぬ昔を今と思ひ寝の夢の枕ににほふ橘(新古今)
歌意「返らない昔を、まるで今のことのように懐かしく思い出しています。それは橘の花が香る、夢見の枕の上でのことですけれども」。
式子内親王(1149~1201)の歌。出生年については異説もありますが、平安時代の最末期から鎌倉時代はじめにかけての歌人で、歴史としては源平合戦を挟む、激しい嵐の時代に生きた人でした。
後白河院の娘です。和歌を藤原俊成に学んだ式子内親王は、『新古今和歌集』に49首が載るなど、当代きっての女流歌人となります。
俊成の息子で、内親王より13歳年下であった定家との間には、恋愛に近い感情があったとも言われています。昔を思う「夢の枕」は、それを暗示しているのかもしれません。
(聡)
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