漢方医学から見た 部屋が片付かない意外な理由

雑然」という意味は、見苦しい、手入れがされていない、散らかっている、乱れている、という意味ですが、物が乱雑に置かれている場所に入ると、不安や極度の焦りを感じることがあります。

現代の大量消費社会における消費者として、より多くの物を持つことを果てしなく追求する中で、この「雑然」とした状態が大きな問題になっているようです。これは「溜め込み障害」と呼ばれる心理的な問題にもなっています。

人が物をため込む理由はさまざまです。地下室にレコードやキャンペーンのバッジや過去のコンサートの半券など、楽しかった思い出を捨てられず、それらをため込んでいるのかもしれません。もう一つの理由は、古いラジオのスイッチ、錆びたネジなど、いつか必要になるかもしれないと思い、ため込んでいるのでしょう。

両方やっている人もいますが、いずれにせよ、ため込んでしまうということは、何らかの形で今を生きることを忘れてしまっているということなのです。

この「雑然」としていることと漢方医学は関係がある、と言うと不思議に思われるかもしれません。しかし漢方医学の考え方は深遠なものです。

例えば、脾臓は漢方医学の理論ではさらなる役割を担っており、胃とともに消化器系の生体システムを形成しています。そのシステムは食物を取り込み、エネルギーや栄養素に変換し、老廃物を排泄するシステムです。これは非常に物理的な説明ですが、漢方医学では、生体システムには精神的、象徴的な要素も含まれています。

ダヴェリック・レゲット氏は、その著書『自己治癒の方法』の中で、脾臓と選別、分類、排泄のプロセスとの関係について述べています。

彼は、「消化は食から始まり、食物を摂取することにつながる。そして、食物を選別し、有用なものを必要な場所に運んだり、体内に保存したりし、使われないものは排泄される。思考回路も同様で、知識を得たいという欲求から情報を吸収し、それをフィルターにかけ、分類する。すぐに使えるものは使い、残りは将来のために保存し、無関係な情報や無駄な情報は忘れられる」と述べています。

レジェット氏は、人体の消化過程だけでなく、心の消化過程についても語っています。健全な精神は、有益な情報を使い、無用な情報を捨てることができます。それがうまくいかないと、心配したり、過去にこだわったり、不安になったり、恨んだりと、脳の消化不良のような状態になるのです。

これは私達の物をため込んでいく過程と似ています。それは、「持ちたい」という欲求から始まり、モノを手に入れることにつながっていく。役に立つものは有効活用され、役に立たないものは時間の経過とともにリサイクルされたり捨てられたりするのが理想的です。しかし、ふるい分けや取捨選択ができないと、空間が雑然としてしまいます。乱雑さは、パーソナルスペースの消化不良ともいえるのです。

私の経験では、私が治療する人の中には、身の回りの整理整頓に苦労しているとき、体重の問題にも悩まされているという事がよくあります。脾臓の選別機能に問題があると、食べ物や水分の代謝がうまくいかなくなるのです。その結果、沈殿し、脾臓の湿の場合は湿った組織、別名・脂肪という形で現れます。

太っている、心配性、本や書類の山が廊下をふさいでいるなど、どんな形であれ、雑念は停滞の一形態と考えられているのです。漢方医学では、「滞り」とは、何かが自由に流れなくなることだとされています。つまり、太り過ぎは水分組織の滞り、心配事は感情の滞り、そして敷地内の散らかりは物理的な滞りということです。

では、もし散らかり放題なら、どこから手をつければいいのでしょうか? 一つの方法は、良い食習慣によって脾臓を強化することです。

しかし、身の回りをすっきりさせることは、生活や仕事のストレスを軽減し、停滞感を改変し始めるというメリットもあるのです。ここでは、そのプロセスをスムーズに進めるための簡単なコツをご紹介します。

まずは小さいことから始めましょう。キッチンテーブルなど部屋の隅や、ソファの周りの2フィート(60センチ)ほどの範囲から始めてみてください。きれいになったら、時間の許す限り次の場所をきれいにしていきます。

郵便物。受けとった書類を保管する場所を決めます。手紙や書類は、散らかる大きな原因の1つであることが多いです。郵便物や紙類は、中身を見たり、リサイクルしたり、請求書の支払いをする時間ができるまで、決められた受信箱やカゴを用意しておくとよいでしょう。

毎日10分、15分と時間を決めて、散らかったものを片付けます。きっと、圧倒されることなく、多くのことをこなせるようになる事に驚くでしょう。

他の人の手を借りる。もしあなたが買いだめをしているのなら、信頼できる友人を見つけ、物の整理を手伝ってもらいましょう。その人の仕事は、例えば、1997年のハロウィンで身につけたピンクの飾り物のスカーフを本当にとっておく必要があるかどうかを貴方に聞くことです。

誰かに譲る。家の中の散らかった物の多くは、他の人に譲ることができます。本を友人に贈るにしても、古着の入ったバッグを寄付するにしても、これらのアイテムに新しい命を与えることになります。ですので、貴方の生活空間から出してしまいましょう。

(翻訳・志水慧美)