(前稿より続く)
糖分のもつ矛盾「必要だが危険」
糖分は「必要だが危険である」という、まことに困った矛盾を抱えた成分です。
例えば砂糖は、人の健康や楽しみの時間を維持するのに不可欠なものですが、それが人にもたらす健康問題、敢えて言えば「危険性」についても、私たちは真摯に向き合う必要があるのです。
特に注意しなければならないのは、野菜や果物などの食材に含まれる天然糖ではなく、工場で加工され製品化された「人工糖」です。
例えば、白砂糖、氷砂糖、コーンシロップ、濃縮果汁などは、いずれも人工糖です。おいしさに引かれて、これらを多く摂取すると血糖値を急激に上昇させてしまいます。
前稿で「果糖は甘味が強いが、野菜や果物を適度に食べることは体に良い」とお話ししました。実は、私たちが本当に注意しなければならないのは、人工的に添加された遊離糖なのです。
これは例えば、甘いチョコレートや生クリームのケーキなどの、子供から大人まで、多くの人に好まれる食品には必ず含まれているものです。
小さい子供はキャンディが大好きです。さらに成長して体が大きくなれば、もっと多くのエネルギーを必要とするようになります。その際には、もちろん砂糖のエネルギーだけでなく、幅広い食材から栄養摂取することが求められます。
「麻薬のような快感」で中毒に?
ここで注意しなければならないのは、糖分が人間の脳の快感中枢を活性化させ、快感を与えるホルモンであるドーパミンの分泌を引き起こすことです。
この快感が、時として習慣性を呼び「中毒」を引き起します。「砂糖は麻薬より中毒性がある」という説まであるのは、そのような理由からです。
2007年、フランスのボルドー大学の研究室で、43匹のラット(大型ネズミ)を使ってこんな実験が行われました。
ラットの前に2本のレバーを置き、自由に選択できるようにします。
Cのレバーを選ぶと、麻薬のコカインが得られます。Sのレバーは、カロリー無しの甘味料であるサッカリンが出てきます。ラットは、どちらのレバーを引くでしょうか。
「ラットは麻薬中毒になりコカインを欲しがるようになった」と思いきや、得られた結果は意外なものでした。
実験開始の翌日から、ラットはS(サッカリン)のレバーを選んで引くようになったのです。15日後には、94%のラットが、サッカリンを得られるレバーに飛びつきました。
次に、ラットを引き付けたものがサッカリンに含まれる化学物質なのか、単に甘味によるものなのかを調べるため、研究者がサッカリンをショ糖に替えて確認実験を重ねました。
その結果、ラットは、サッカリンと同じく、甘いショ糖を好むことが分かったのです。
このことから研究者は、「砂糖がもたらす甘味は中毒性がある」と結論付けました。
科学者はまた、砂糖が脳に与える反応が麻薬とほぼ同じであることから研究を重ねて、「砂糖の中毒性はコカインよりも数倍高い」ことを発見しました。
砂糖を摂ると、脳内でドーパミンが生成されて快感が生じます。これが人に「砂糖中毒」をもたらすのです。
(次稿へ続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)
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