欧米で急増するサル痘「性接触を介した感染が一因か」(2)

(前稿より続く)

「倒錯した性愛」が招く感染リスク

CDCによると、米国における男性同性愛者と両性愛者の性感染症は、明らかに増加しています。

2014年、米国における梅毒の発症例のうち、約83%は「男性の同性愛者、両性愛者。および男性同士で性行為をおこなった者」でした。

これらの集団は、梅毒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、クラミジア、淋病および淋菌感染症、B型肝炎、性器ヘルペスウイルスなど、各種の性感染症リスクがいずれも高いことが知られています。

これら、いわゆる「性病」とされる病気は、オーラルセックス、肛門性交、腟性交、性器との皮膚接触、感染者との避妊具不使用の性的接触によって人から人へ広がることが知られています。そのほか、患者の血液に触れたり、注射針を共用する麻薬注射などでも感染します。

 

最も感染リスクが高い部位

では、感染者との性的接触があった場合、ウイルスはどのように別の人体に侵入するのでしょうか。

HIVウイルスを例として申しましょう。
2019年、カナダのある研究によると、「人体内粘膜の上皮細胞は通常ウイルスの侵入を阻止できる。しかし、外部からの物理的ダメージにより粘膜上皮の完全性が損なわれた場合、HIVウイルスは粘膜下層に侵入して、ヒトに感染する」としています。

さらに「人体のどの部位がウイルスの侵入を受けやすいか」というと、女性と男性の生殖器官と比べた場合、肛門の直腸上皮のHIV感染リスクが最も高く、0.3%~5%とされています。それに対して、口腔粘膜の感染リスクは比較的低いと見られます。

また、CDCの統計によると、「肛門性交の受け手がHIVウイルスに感染するリスクは、膣性交の受け手のリスクの5倍である」と言います。

性行為を介したHIV感染リスクのなかでは、肛門性交の受け手の感染率が突出しています。(健康1+1/大紀元)

 

「多人数との性的関係」もリスク増大

性行動の様式が性感染症のリスクに影響するだけでなく、セックスパートナーの数もリスクの増大に関連しています。

感染症専門の学術誌『The Journal of Infectious Diseases』の研究によると、同性愛男性のEBウイルス(ヒトヘルペスウイルス)2型感染率(39%)は、異性愛男性(6%)に比べて明らかに高くなっています。

また「500人以上」のセックスパートナーを持つ同性愛男性は、100人未満のセックスパートナーを持つ男性に比べて、EBウイルス2型に感染するリスクが約10倍高くなります。

現在、サル痘に関する新しい感染経路は明確になっていませんが、衛生当局にはすでに動きがあります。

英国の医療安全保障局は、「同性愛者、両性愛者、および男性間性交を行う者に対して、性器もふくむ身体の各部分に、異常な発疹や病変がないか注意するように」と勧告しています。

米国でも最初の症例が発見された後、サル痘の発症者に注意するよう各医療機関に対して保険当局が指示しています。特に「性病の治療にあたる医師は十分注意するように」としています。

 

天然痘ワクチン」が有効か

サル痘のウイルス感染を予防するワクチンは、まだ存在しません。

ただし、サル痘ウイルスは天然痘ウイルスに非常に似ているため、天然痘ワクチンによって 85%の防御が可能であるとされます。
また、天然痘の治療に使用されている別の抗ウイルス薬も、サル痘の治療薬として承認されています。

イギリス、スペインなどの国はすでに同様のワクチンを購入し、今回の感染拡大に備えています。

(翻訳編集・鳥飼聡)

蘇冠米