(続き)
進行性の近視は大きなリスク
子共の近視の発症が早く、しかも進行性が高いということは、将来的にあまり良い傾向ではありません。11~13歳の子供でも、「強度近視の流行」のリスクが高いのです。 近視になると眼球が引き伸ばされ、この解剖学的変化は不可逆的で、特に後年、深刻な視力障害を引き起こすリスクが高くなります。
AAOチームによると、75歳までに近視の人の3.8%、強度近視の人の39%が「矯正不可能な視覚障害」になるといいます。つまり、近視の程度が低~中程度であっても、近視は網膜剥離、白内障、緑内障などの永久失明のリスクを高めるのです。
またAAOチームは、近視率の上昇は臨床的・社会的に広く影響を及ぼすため、特に発症年齢が若いほど悪化する傾向にあることから、「世界的に協調した対応」が必要であると説明しています。
AAOチームの報告によると、2055年までに近視による矯正不能な視覚障害の数が、リスクの高い地域で7~13倍に増加すると推定されています。近視の公衆衛生上の負担は、屈折異常の光学的矯正に伴う直接的なコストにとどまらず、視覚障害に伴う社会経済的な影響や生活の質の低下も含まれます。
中国では、子供の近視の増加傾向に対処するため、大規模な改革が実施されています。ビデオゲームの制限に加え、3年生まで筆記試験は行われず、さらに学校の机には金属板が追加され、子供たちが学業から離れざるを得ないような環境になっています。
スクリーンの見過ぎと屋外活動の不足が主な原因?
テクノロジーが急速に発展し続ける中、人々がスクリーンに夢中になり、起きている時間が何らかの形でスクリーンに支配されているというのは想像を絶することです。
その結果、視力に影響を及ぼしているのです。専門家チームは、雑誌「網膜と眼科研究の進歩(Progress in Retinal and Eye Research)」において、近視蔓延の主な危険因子として、教育の強化(つまり学習の増加)と屋外での時間制限を挙げています。
彼らは、「流行の局地化は、これらの要因に対する遺伝的感受性の高まりというよりも、その地域での高い教育圧力と限られた屋外時間によるものと思われる」と記述しています。
屋外で過ごす時間が不十分であることが原因として臨床的に検証されており、学校や屋外で過ごす時間を増やせば、近視の発症を防ぐことができるかもしれません。学業上のストレスから、イスラエルの正統派学校に通うユダヤ人少年は、宗教学校に通う姉妹や、無宗教の学校に通う少年少女と比較して、近視や強度近視の発症率が高いと言われています。
この研究では、近視の発生率を減らすために学校で屋外での活動時間を増やし、近視の発達を抑える医学的アプローチと組み合わせることで、健康上の大きな課題となる疫病をも抑制できると結論付けています。激しい競争に対応して早期教育を加速させる必要性を減らすために、学校制度の組織を変更することも重要です。
AAOはまた、「室内で過ごす時間が長すぎると、子供の近視のリスクが高まり、自然光の下で屋外活動を増やすと、子供の近視のリスクが下がるという研究結果が出ています」と述べています。同様に、フランスの研究者は、「屋外活動」を小児近視の最も有望な治療法の一つと述べています。
また、「アメリカ眼科雑誌」に掲載された別の研究では、COVID-19流行時のデジタルスクリーン時間が「近視をさらに急増させるリスク」になると記述しています。この研究ではさらに、デジタルスクリーン時間の増加、近接作業、屋外活動の制限が近視と関連し、COVID-19パンデミック中およびその後にこの影響を悪化させる可能性があることを確認しています。
(つづく)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。