ナイアシン(ビタミンB3)はあまり知られていませんが、このビタミンが持つさまざまな病気に対する予防・治療効果について、研究者や医師らは数十年にわたり驚くべき研究結果を示してきました。
最近出版された『Niacin: The Real Story(ナイアシン: 真実の物語)』第2版で、著者の一人であるアンドリュー・ソール博士は、オーソモレキュラー医学において、ナイアシンを用いた心血管疾患の予防、関節炎の回復、アルツハイマー病の予防、および多くの精神疾患の治療に成功していると記しています。
この書籍の筆頭著者は、 ナイアシンを用いて何千人もの患者を治療した精神科医、故エイブラム・ホッファー博士です。
新型コロナと腎臓病
2020年後半に「Kidney360」誌に掲載された研究では、ナイアシンが、急性腎障害に苦しむ新型コロナウイルス感染症患者の死亡率を低下させることが発見されました。
研究では、ナイアシンの一種であるナイアシンアミドを毎日1,000ミリグラム投与した患者は、25%低い死亡率を示しました。 新型コロナウイルスの関連疾患に対する確立された治療法がない中での発見でした。
また、インドの医師らは、ナイアシンアミドのサプリメントにより、一般的な治療のみを受けた患者と比較して、新型コロナウイルス感染症患者の回復時間が30%近く短縮されたことを発見しました。
腫瘍学者のムクル・ガロテ博士は2021年4月の論文で、ウイルス感染を防ぐには自然免疫を高める必要があるとし、次のように述べました。
「インドにおける新型コロナウイルス感染症の第2波を疫学的に見ると、感染の波は主にマハーラーシュトラ州を襲い、この州だけでインド全体の感染者数のほぼ50%を占めています。 マハーラーシュトラ州の人々の主食はジョワル(ソルガム)です。 ジョワルにはロイシン13が過剰に含まれており、トリプトファンがナイアシンに変換されるのを阻害しています。これがペラグラの原因として知られるナイアシン欠乏症を引き起こします」
同氏は、新型コロナウイルス感染症の対症療法として、また感染予防としても、ナイアシンアミドを推奨しています。
『Niacin: The Real Story(ナイアシン: 真実の物語)』で新型コロナウイルス感染症に関する章を執筆したトッド・ペンバーシー博士は、ナイアシンとその治癒特性に23年にわたり夢中になってきたといいます。
生化学の博士号を持つペンバーシー博士は、エポックタイムズに対し、「ナイアシンが慢性腎臓病を回復させることを示す研究があります。他のアプローチでは通常、このような回復は起こりません」と述べました。
ナイアシンは体内でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)に変換されます。NADはあらゆる生きた細胞に存在する補酵素で、酵素と連携することで化学反応を起こし、エネルギーの生成を促進します。
新型コロナなどのウイルス感染症は、感染細胞内のNADを枯渇させる免疫反応を刺激することで、重症化を引き起こします。
「ナイアシンの多量摂取でNADを増やすことができる」とペンバーシー博士は言います。
「NADがなければ細胞は30秒以内に死んでしまいます。NADを枯渇させることで細胞が死滅するという明確な動作経路があります。NADは400以上の遺伝子機能に必須です」
糖尿病と心臓病
ペンバーシー博士によると、 糖尿病や心臓病の心配がある人にとっても、ナイアシンが重要なサプリメントになる可能性があるといいます。
「ナイアシンはインスリン抵抗性を高め、糖尿病患者に最も多い死因である心血管疾患のリスクを軽減します。また、驚くべき安全性が記録されており、有害事象については全く心配していません」
ナイアシンに関する研究が50年以上にわたって行われてきた中で、多くの臨床試験は、最も一般的な死因である心血管疾患に焦点を当ててきたとペンバーシー博士は述べています。
「ナイアシンは、心血管疾患のリスクを軽減する能力において他に例を見ません」とのことです。
寿命を伸ばす
2006年、カナダのサスカチュワン州在住のメアリー・マクアイザックさんが112歳で亡くなりました。
当時カナダで2番目に高齢だった彼女は、110歳になるまでクロスカントリースキーや乗馬を楽しみ、亡くなるまでピアノを弾いていました。
亡くなるまで明晰な思考を保っていたマクアイザックさんは、自身の長寿はナイアシンのおかげだと認めています。彼女は晩年の40年間ナイアシンを服用していました。
エイブラム・ホッファー博士は、マクアイザックさんを含む自身のすべての患者に、ナイアシンを摂取すれば気分が良くなり、長生きできるだろうと伝えてきたそうです。著書で述べています。
適切な栄養とビタミンが健康を促進することは広く信じられていますが、長寿促進におけるナイアシンの役割は広く知られてはおらず、受け入れられていません。
ナイアシンは動脈内のプラークの沈着を抑制し、心臓と脳を保護します。
ナイアシンを推奨する医師らが言うには、このビタミンには、コレステロール値、トリグリセリド、およびリポタンパク質(a)を低下させ、さらに善玉コレステロールのレベルを上昇させることを示す記録があるといいます。ソール博士によると、ナイアシンだけが善玉コレステロールを大幅に増加させるそうです。
また、ナイアシンには、細胞レベルで作用する老化防止特性が含まれています。さまざまな研究で、細胞死とNADの枯渇が関連付けられているほか、多くの死はニューロンや血管の損傷によって引き起こされることから、これらを予防するナイアシンは老化防止物質として分類できるのです。
皮膚が赤くなるが有害性はない
ナイアシンを摂取すると、一時的に皮膚が赤くなることがあります。
しかし、必要量の範囲内であれば、ナイアシンを多く摂取しても皮膚は赤くならないと、ホッファー博士は述べています。
紅潮は血管が一時的に拡張するために起こりますが、症状が深刻であればあるほど体はナイアシンを吸収するため、その場合は紅潮しません。
紅潮は程度の軽いものから非常に重いものまであります。 通常は額のチクチク感から始まり、徐々に強くなります。 胃の内容物など、さまざまな要因が関係しているため、正確な症状を予測することは不可能です。通常は顔に影響しますが、胸や腕が赤くなったり、つま先に出ることもあります。この反応は無害で、通常なら約20分以内に消えます。
アルコール依存症
アルコール依存症ほど寿命を縮めることが知られている病気はありません。
アルコール依存症者の自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」の共同創設者であるビル・ウィルソン氏は、ホッファー博士に出会い、ナイアシンによる治療を受けた最初のアルコール依存症者の一人です。
ウィルソン氏は、アルコール依存症者はスピリチュアル、メンタル、医療の側面から対処することで回復できるという考え方を広めました。
精神病患者をナイアシンで治療していたホッファー博士は、酒を断った後にうつ病と不安症に苦しんでいるウィルソン氏と出会いました。ホッファー博士によると、ウィルソン氏はナイアシンを1日3回摂取し始めてから2週間で正常になったといいます。
ウィルソン氏はその後、 AAの友人30人にナイアシンを試すよう説得しました。そのうち20人は2、3ヶ月で快方に向かいました。この結果を受け、AAの医師らもナイアシンが効果的な治療法であることに賛同しました。
AAの国際本部はビタミン治療の使用に反対しましたが、ウィルソン氏は1968年2月に出版された『The Vitamin B-3 Therapy(ビタミンB-3療法)』という小冊子を含む文献をAAの医師に配布し、その3年後に75歳で亡くなりました。
ナイアシンの有効性に関する最高の権威として広く知られているホッファー博士は、ウィルソン氏がこのビタミンについて広め始めてすぐに亡くなっていなかったら、ナイアシンの治療的使用はさらに進んでいただろうと『Niacin: The Real Story(ナイアシン: 真実の物語)』で述べています。
また、同書籍は、ナイアシンが依存症患者が通常経験する不安、疲労、うつ病、その他の不快感から回復するのに役立つことをウィルソン氏が現に示したと指摘しています。
依存者がアルコールや薬物に頼るのは、それらの不快感が原因であると彼らは指摘しています。
リーキーガット
ホッファー博士は、AAが提唱した依存症から脱するための「12ステップのプログラム」の支持者として知られていました。 彼は、このプログラムと並行してオーソモレキュラーの栄養療法を行うのが最も効果的であると述べました。
多くのアルコール依存症患者は、一般的にリーキーガット(腸管壁侵漏)という症状を患っています。ホッファー博士は、胃腸系を治療するために、禁酒と健康的な食事を推奨するとともに、毎日100ミリグラムのナイアシンを処方しました。
2000年代に、ブラジルのサンパウロ大学の研究者らが、食事におけるナイアシンの欠乏に起因する疾患であるアルコール性ペラグラ患者のリーキーガットと酸化ストレスに対する、ナイアシン補給の影響を調査しました。
ペラグラ患者10人をナイアシンによる治療の前後で調べたところ、 患者は27日間の治療後にリーキーガットの大幅な低下を示しました。研究者らは、ペラグラ患者はナイアシンによる治療に加え、禁酒とバランスの取れた食事によって正常な胃腸値に回復できると結論付けました。
メンタルヘルス
1930年代から40年代初頭にかけて、米国では、認知症、下痢、皮膚炎、死亡を特徴とするペラグラが流行しましたが、ナイアシンの欠乏がこの病気の根本原因であることが判明しています。
ペラグラの患者数は約300万人、死亡者数は約10万人でした。この病気は貧しい南部の住民に特に多く見られ、他の地域より死亡率が高かったものの、連邦政府が小麦粉にナイアシンアミドを添加することを義務付けた後、流行は終息しました。
1950年代初頭、ホッファー博士は、統合失調症などに関連する精神病が、ペラグラ患者が診断されるそれと同一であると特定しました。
彼は、非慢性患者を対象とした一連の二重盲検プラセボ対照研究を実施しました。実験では、プラセボを投与された患者と比較して、ナイアシンの投与により回復率が倍増したと結論づけられました。
精神病患者をビタミンで効果的に治療できるということは、メンタルヘルスに携わる多くの人にとって朗報となるでしょう。
HIVとエイズ
ビタミンBには、HIVやAIDSの患者の回復を助ける効果があります。ナイアシンの欠乏は、重篤なウイルス感染症からの回復を妨げます。ウイルス性疾患の患者を治療している人にとっては驚くべき事実でしょう。
1993年にワシントン近辺でHIV陽性の男性281人を対象に実施された研究では、複数のビタミンを大量に摂取した人は、サプリメントを摂取しなかった人に比べて、HIVがエイズに進行する相対危険率が52%であると示されました。
ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らは、ナイアシンがエイズへの進行率の大幅な低下と関連していると報告しました。ペンバーシー博士は、この研究に関するコメントの中で、この重要な研究がほとんど宣伝されていないのは奇妙だと述べました。ビタミン剤だけでエイズ症例が50%減少するなど、一面を飾るニュースになって然るべきだと彼は語りました。
ペンバーシー博士は、『Niacin: The Real Story(ナイアシン: 真実の物語)』の自身が執筆した章でエイズについても触れ、ナイアシンの利点に関するさらなる研究を望みました。
彼は次のようにコメントしています。
「ナイアシンを使用したすべての臨床試験では、次々と肯定的な結果が得られています。さらに多くの症状、特に脳に関する試験が行われていないのは残念なことです」
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。