最近の研究によって、環境に優しいともてはやされている植物由来のストローに、人体や環境に有害な「永遠の化学物質」として知られるPFASが含まれていることが判明した。
PFASは有機フッ素化合物の総称で、水をはじくスプレーや焦げ付かない鍋などに使用されてきた12,000種以上の人工的な化学物質が分類されている。
今月24日、ベルギーで流通している5つの素材(紙、竹、ガラス、ステンレス、プラスチック)からなる39種類のストローのPFAS濃度を調査した新たな研究が、英国の学術出版社テイラー&フランシスに掲載された。
研究によると、PFASはほぼすべての種類のストローに含まれていたが、とりわけ植物由来のもの(紙と竹)に含まれる可能性が高かったという。
「これらの『環境に優しい』とされる植物由来のストローが、プラスチック製のストローと比べより持続可能な代替物となるとは限らない。なぜなら、それらはヒトや環境中のPFAS暴露の新たな原因と考えられるからだ」と研究者らは示した。
ちなみに、最も持続可能なストローは、PFASを含まず、リユースもリサイクルも可能なステンレス製のストローだったという。
食品包装、化粧品、調理器具などに広く使用されているPFASが「永遠の化学物質」と呼ばれるのは、分解がゆっくりで、数千年もかかる可能性があるからだ。それゆえに、野生生物や自然環境に取り返しのつかないダメージを与えうるとされている。
またそれらの化学物質の中には、腎臓がん、甲状腺疾患、精巣がんなどの病気との関連が指摘されているものもある。
今回の研究で調査された39種類のストローのうち、27種類からPFASが検出され、検出されたPFASは合計18種類だった。
PFASを含む可能性が最も高かったのは紙製のストローで、調査された20種類のうち18種類からPFASが検出された。竹製では、5種類のうち4種類から検出された。
プラスチック製では4種類のうち3種類から、ガラス製では5種類のうち2種類からこれらの化学物質が検出され、ステンレス製は、調査された5種類のいずれからもPFASは検出されなかった。
また、最も多く検出されたPFASは、2020年から世界的に禁止されているペルフルオロオクタン酸だった。
研究では、PFASは少量しか存在せず、人体への重大なリスクはないことが判明したが、それらが体内に残留し、時間の経過とともに蓄積される可能性はある。
今月25日付のテイラー&フランシスのプレスリリースで、研究に携わったアントワープ大学の環境科学者、ティモ・グロフェン博士は以下のように述べている。
「少量のPFASそれ自体は有害ではないが、すでに体内に存在する化学的負荷を増加させる可能性はある」
「ステンレス製のストローからはPFASは検出されなかったので、消費者にはこのタイプのストローを使うか、あるいはストローの使用を避けることを勧める」
なぜ紙ストローにPFASが?
2021年に電子ジャーナル「サイエンスダイレクト」に発表された同様の研究では、2020年初頭にアマゾンで購入した38種類の生分解性ストローが調査され、36種類からPFASが検出された。
「植物由来の飲料用ストローにPFASが含まれていることは、ストローが完全には生分解されないことを示しており、PFASを人間が直接摂取したり、廃棄物処理の流れでPFASが環境中を循環する一因となっている」と研究論文は述べている。
研究に参加したフロリダ大学獣医学部のジョン・ボウデン助教授は、2021年4月のエンバイロメンタル・ヘルス・ニュースでの取材で次のように述べている。
「紙製のストローが普及し始めた頃、ストローが口の中でバラバラになり、飲み物の中ですぐ崩れてしまうという問題があった」
「PFASでコーティングすることで、紙ストローは液体に強くなる。PFASを構成する炭素とフッ素の結合は『化学が作り出す最も強力な結合』のひとつであり、非常に分解されにくく、水をよくはじく。その性質がストローを非常に崩れにくくした」
米国疾病管理予防センター(CDC)によると、特定のPFASの濃度が高まると、コレステロール値の上昇、肝酵素の変化、乳児の出生体重のわずかな減少、子どものワクチン反応の低下、妊婦の高血圧リスクの上昇につながる可能性があるという。
CDCは複数の動物実験を引き合いに出し、PFASの濃度が高いと免疫系にダメージを与える可能性があることを警告している。それらの実験においてPFASは、動物の先天性欠損症、発育遅延、新生児の死亡を引き起こした。
PFASによる水質汚染
米国では、飲み水に含まれるPFASが話題となっている。環境保護団体エンバイロメンタル・ワーキング・グループ(EWG)が米国環境保護庁(EPA)のデータを分析したところ、2600万人の米国人が飲み水中のPFASに暴露されている可能性が明らかになった。
431の水道システムにおいて、PFASが最低報告基準値を超える水準で存在することが判明した。今月17日付の報道によると、EWGの政府問題担当課長のスコット・フェイバーは「数十年もの間、数百万人もの米国人が、PFASに汚染された水を知らず知らずのうちに摂取してきた」と述べたという。
「新たな検査データから、PFASを避けることはほぼ不可能だと分かる。EPAが仕事を終え、バイデン政権が今年中に飲料水基準を最終決定しなければならない」
7月、米国地質調査所(USGS)は、2016年から2021年にかけてサンプル採取した716の民間の井戸と公共給水システムのうち約45%で、少なくとも1種類のPFASが検出されたと報告した。
既知のPFAS汚染の履歴により、都市部は農村部よりもPFAS暴露のリスクが高く、都市部の70%以上でこの化学物質が検出されたことが分かっている。農村部ではPFASへの暴露はわずか8%だった。
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