鍋や食器、そして毎日口にする食べ物は、一見するとごく普通のものですが、実は慢性的な毒素の発生源になる可能性があります。
がんを克服してから15年が経つ人気作家であり、台北医学大学公衆衛生学科の名誉教授でもある韓柏檉氏は、新唐人テレビの番組『健康1+1』の中で、調理器具や食生活の選び方を見直すことから始め、日常生活の中で「良いものを取り入れ、悪いものを避ける」ことで、毒物への曝露をできるだけ減らしてきた自身の経験を紹介しています。
フッ素加工鍋に潜む危険
フッ素加工鍋のコーティングには、製造過程において、かつてPFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が使用されていました。これらはいずれも有機フッ素化合物(PFAS)の一種です。
アメリカがん協会によると、PFOAへの曝露量が多い場合、精巣がんや腎がんのリスク上昇と関連する可能性が指摘されています。また、PFOSは国際がん研究機関(IARC)によって、「ヒトに対して発がん性の可能性がある(グループ2B)」物質に分類されています。
海外で長年ビジネスを行っていたある男性は、腎がんと膀胱がんを患い、台湾に戻って治療を受けました。検査の結果、体内のPFOS濃度が基準値を大きく上回っていることが判明しました。医師が生活環境を調べたところ、家庭で長期間、コーティングが傷ついたフッ素加工鍋を使い続けており、そこから有害物質が体内に蓄積した可能性が考えられるとされました。
また、肝がんを患った別の女性も、表面に傷のあるフッ素加工鍋を長年使用して調理していました。検査では、体内のPFAS濃度が深刻なレベルで超過していることが確認されました。医師は、高温で劣化したフッ素加工鍋を使用することで、有害物質が放出され、それが食べ物に混入し、肝がんなどの慢性疾患のリスクを高めた可能性があると判断しました。
アメリカではすでにPFOAやPFOSの使用は廃止されていますが、他国や地域で製造された製品には、現在も含まれている可能性があります。そのため、輸入品の使用や、環境中に残留した物質を通じて、接触が続いているケースも考えられます。
現在のフッ素加工鍋には、主にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が使用されています。PFOAの多くは別の化学物質に置き換えられていますが、研究によっては、これらの代替物質についても、同様の毒性が懸念される可能性が指摘されています。
PTFEコーティングのフッ素加工鍋は、非常に高温での調理には向いていません。調理温度が260℃を超えると、有害なガスが発生し始めるとされており、鍋を空のまま数分以上予熱すると、この温度に達する可能性があります。さらに350℃を超えると、コーティングが分解し、健康に好ましくないガスが放出される恐れがあります。
フッ素加工鍋は慎重に使用する
フッ素加工鍋を使用する場合、韓氏は次の点に注意することを勧めています。
- 温度をコントロールする:油を入れて炒める際は、少量の水を加え、温度が過度に上がらないようにします。
- 高温調理を避ける:調理は「中火から弱火」を基本とし、「揚げる・焼く」といった高温調理は、できるだけ控えます。
- 酸性食品と高温を避ける:フッ素加工鍋は酸に弱く、成分が溶け出しやすいとされているため、酸性の食品はできるだけ避けます。
- 定期的に交換する:韓氏の家庭では、フッ素加工鍋をおよそ半年から1年ごとに交換しています。目視で傷やひび割れ、コーティングの剥がれが確認できた場合は、早めに交換することが勧められます。
ステンレス鍋を選ぶ
韓氏は、フッ素加工鍋よりも、日常的にはステンレス鍋を使うことが多いと語っています。ステンレス鍋は非常に丈夫でコーティングがなく、彼の家庭では20年以上使い続けている鍋もあるそうです。
また、ステンレス鍋を選ぶ際には素材のグレードにも注意すべきだとして、次のように説明しています。
1.一般的な使用グレード:304ステンレス。食品用ステンレスとして広く使われており、通常の使用であれば特に問題はないとされています。
2.より高いグレード:316ステンレス。不純物が少なく、耐腐食性がさらに高いとされています。
3.最上位グレード:チタン合金ステンレス鍋。熱伝導が比較的均一で、安定性が高いとされています。
無地の陶磁器を選ぶ
韓氏は、食器として陶磁器を選ぶ際には、「できるだけ白色で、食べ物が直接触れる内側は無地のもの」を勧めています。色付きの塗料や釉薬には、重金属が含まれている可能性があるためです。こうした器に熱い料理や酸性の食品を入れると、成分が溶け出しやすくなる場合があります。また、食器に傷や欠け、ひび割れが見られる場合は、早めに処分することで、有害物質の浸出や細菌・カビの繁殖リスクを減らせると注意しています。
『カナダ医学協会雑誌』(2016年)には、鉛中毒の症例が報告されています。55歳の女性が慢性的な腹痛の悪化により入院し、吐き気や嘔吐、強い倦怠感を伴っていました。検査の結果、血中鉛濃度は正常上限の36倍に達しており、同居していた息子の血中鉛濃度も高い数値を示していました。
調査の結果、母子はメキシコで購入した陶器製の鍋やカップを使って湯を沸かし、調理や飲み物に使用していたことが分かりました。陶器本体には鉛は含まれていませんでしたが、表面の釉薬には重量比で17%の鉛が含まれていました。使用を中止したところ、3か月後には貧血、腹痛、関節痛、疲労感が徐々に改善したと報告されています。論文では、メキシコや中国、さらに一部のヨーロッパ諸国で使われている鉛入り釉薬の陶器が、鉛中毒の一般的な原因の一つとして指摘されています。
野菜・果物の買い方と食事の心得
調理器具や食器の選び方に加え、韓氏は食材選びについて、次のような考え方を示しています。
1.市場やスーパーで買う
必ずしもオーガニック専門店にこだわる必要はなく、市場やスーパーで素材そのものの食材を選ぶことが多いといいます。市場の野菜や果物は新鮮で保存性が高い場合が多く、大型スーパーの検査体制も一定の安心材料になるとしています。
2.「9色」の食材を意識する
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色に、黒と白を加えた「9色」の野菜や果物を意識して食べることで、さまざまな栄養素を取り入れやすくなり、抗酸化や抗炎症の働きをサポートする可能性があると述べています。
3.食事はバランスを大切にする
韓氏の「無毒生活」の基本は、何よりもバランスを重視することです。科学的な正確さを過度に追い求めすぎると、かえってストレスになることもあるとしています。
「時にはジャンクフードを食べても構いません。他の時間帯で良い食事を心がけ、体のバランスを整えればよいのです」と語っています。たとえば、その日に肉料理が多ければ、翌日は野菜中心のあっさりした食事にするといった調整です。
「良いものを取り入れ、悪いものを避ける」ことが
長期の健康を守る
韓氏の無毒生活の考え方の中心にあるのは、「良いものを選び、害になる可能性のあるものを避ける」という姿勢です。化学汚染や毒素の残留が疑われる製品や食品をできるだけ避け、曝露を減らすことは、長期的な健康維持に役立つ可能性があります。
良い鍋に投資する
毎年買い替えが必要になることも多いフッ素加工鍋と比べ、品質の良い鍋への投資を勧めています。たとえば、彼の家庭で使用しているステンレス鍋は、購入時に約600ドルかかりましたが、20年以上使い続けているとのことです。結果として経済的で、安心して使える点もメリットだとしています。
シンプルな食器を選ぶ
派手な柄や塗料が使われた食器を避け、無地のものを選ぶことで、重金属などが溶け出すリスクを抑えられる可能性があります。
加工食品と添加物を減らす
ミルクティー用クリーム、ケーキ、ポテトチップス、アイスクリーム、炭酸飲料、マヨネーズなどの加工食品には、多くの添加物が含まれていることがあります。こうした食品を控えめにすることで、体への不要な化学的負担を軽減できる可能性があります。
解毒力を高める
生活環境に存在する毒素を完全に避けることは難しいため、体が本来持つ解毒の働きを保つことが大切だとされています。排便、排尿、発汗、呼吸はいずれも体内の老廃物を排出する役割を担っています。新鮮な野菜や果物、全粒穀物を取り入れることで、栄養素や食物繊維が代謝を支え、体内の不要物の排出を助ける可能性があります。
最後に韓氏は、「良い食べ物、良い水、良い鍋、そして良い気持ち」から始めることを勧めています。「たった5%の変化でも、大きな影響を生み、健康に良い方向への『バタフライ効果』につながる可能性があります」とまとめています。
(翻訳編集 解問)
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