シリーズ「目に見えない電磁界(電磁波)の危険性」では、一般的な家電製品から5Gに至るまで、あらゆる場所に潜む電磁界・電磁波の影響と、脳と身体への影響について詳しく見ていきます。
マイクロ波症候群の不可解な事例が表面化し続けるなか、第4世代 (4G) および第5世代 (5G) 移動通信システムの無線技術や、その他の電磁界から放出される放射線の害に対する懸念が高まっています。
しかし、多くの人は、電磁界が水や空気と同様に、私たちの体に不可欠な要素であることを知りません。
電磁放射線とは正確には何か?
電磁放射線は、電磁界とも呼ばれ、電荷や磁気波によって生み出される、どこにでも存在する目に見えない「力」です。この力と重力、強い核力、弱い核力とを合わせて、自然界の「4つの力」とされます。
電磁界にはすべての光と生命体が含まれます。人間が放出する熱などの電磁放射線は、赤外線カメラで検出できます。
電磁界にはさまざまな種類があります。
可視光スペクトルよりも低い周波数を持つ電磁界には、送電線を流れる電気、高周波 (マイクロ波を含む)、および赤外線が含まれます。
これらの電磁界は非電離放射線、すなわち細胞を構成する原子や分子から電子を引き剥がす(電離させる)ことができないものです。そのため、通常、人間にとって安全であると考えられています。電離作用はDNAに損傷を与える可能性があり、それによって細胞をガンのリスクにさらします。
一方、電離放射線、つまり可視光スペクトルより高い周波数の電磁界は、より多くのエネルギーを持ち、電離作用があります。電離放射線には、紫外線、X線、ガンマ線が含まれます。これらに長期間さらされると、ガンが発生する可能性があります。
別の意味で有害な非電離放射線
研究によると、一般的に「安全」とされる電磁界の中でも、高周波電磁界(人工的に作られることが多い)は、電離作用がなくても健康への悪影響を引き起こす可能性があることが示されています。
高周波電磁界を放出するものとしては、電話、Wi-Fi、スマート電子機器、Bluetoothデバイス、テレビが最も一般的です。高周波電磁界は、体内の荷電粒子の振動に影響を与え、粒子の軌道を変化させます。
ワシントン州立大学のマーティン・ポール名誉教授は、高周波電磁界が細胞表面に存在する電位依存性カルシウムチャネル周辺の電気環境を変化させることを理論づけました。電気環境が変化するとチャネルが開き、カルシウムイオンが突然体内に流れ込みます。
これにより、細胞内に酸化ストレスが生じ、DNA損傷、細胞損傷、炎症、細胞死、およびその他の関連する病状が引き起こされる可能性があります。
ポール氏は、電位依存性カルシウムチャネルを閉鎖させる薬剤が電磁界の活動も遮断できることを観察した後、この理論を提唱しました。しかし、その後の細胞研究では、電磁界が電位依存性カルシウムチャネルの抑制と活性化のいずれの作用も働くことが示されました。電磁界のこうした作用は、さらに広範囲にわたる細胞活動に影響を与えると考えられます。
一方、火や光のような自然発生の電磁界は主に熱的効果を生み出し、熱を通じて身体にダメージを与えます。ポール氏はこれら2つはほとんど別物と言うべきであると述べています。
人工的な電磁界と自然発生の電磁界
1. 人工的な電磁界は偏光しており、より強力な影響を与える
自然発生の電磁界と人工的な電磁界の決定的な違いは、偏光している(偏波)か否かです。
高周波電磁界は偏光しています。つまり、それらの電磁波はすべて均一な方向に伝わるため、より大きな生物学的影響をもたらします。
「高周波電磁界は基本的に1つの物体としてふるまう」とポール氏は説明します。
逆に、自然発生の電磁界は、基本的に混ざり合って相殺されるランダムな方向のエネルギーを放射します。たとえば、火は熱と光を全方向に放射し、電磁波を均等に放射します。
2. 自然発生の電磁界は体に不可欠であり、治癒効果がある
自然発生の電磁界には、人体を治癒できるものもあります。
大気中の雷放電が生成する電磁共鳴である「シューマン共鳴」には人間の脳波の周波数と高い相関があり、その共鳴を利用した治療法が睡眠の促進に役立つことは研究で示されています。また、宇宙飛行士が経験する宇宙酔いがこのシューマン共鳴の喪失に関連していると見る科学者もいます。
また、太陽光は赤外線のような有益な電磁界を生成しています。赤外線はミトコンドリアの機能を改善し、概日リズム、いわゆる体内時計の強化に役立ちます。
トレント大学のマグダ・ハバス教授は、「私たち人間は実際には電磁気的な存在です」とエポックタイムズに語っています。「必須栄養素があるのと同じように、人間に必要な必須周波数も存在します」。人間の耳でこれらの波動が聞こえなくても、身体はそれに反応するといいます。
自然の波動を模倣して電磁波を放射する治療装置は、骨折の治癒や血流の改善に使用されてきました。経頭蓋脳刺激 (TMS) は、過渡磁気の波を脳内に放出する治療法で、精神疾患の治療に使用されてきました。
3. 通信に使用される電磁界のパルスが損傷を引き起こす
自然発生の電磁界は滑らかで連続的な波を放出しますが、ほとんどの高周波電磁波は不規則で脈打つように振動しており、人体に対し電位的に損害を与えるものです(アナログラジオなど一部の高周波電磁界は、電位的に損害が少ない連続波を放出しています)。
ハバス氏は「騒音と音楽の違いのようなものです」と説明しています。
高周波を放出するレーダーに潜む健康上の懸念に関する研究は、1900年代半ばに現れてきました。レーダーを使って作業する軍関係者に関するある報告によって、彼らの体内を循環する免疫細胞のレベルが低く、細胞やDNAに損傷の兆候が見られがちであることが判明しました。
偶発的かつ過剰なレーダー照射により、軍関係者は頭痛、吐き気、疲労、倦怠感、動悸などを訴えていました。これらの症状は、心の不安に関連したものと断定できるものではありません。
動物およびヒトの細胞研究では、2G、3G、4G、Wi-Fi への曝露が、酸化ストレス、炎症、細胞損傷、細胞死に関連していることもわかっています 。
こうした電気通信は「削岩機の音を聞くようなもの」だとハバス氏は言います。
電気通信はパルスと呼ばれる、ごく短時間に生じる電気信号の波を利用して、携帯電話、Wi-Fi対応デバイス、およびBluetoothデバイスにデータを送信します。これらのデバイスは近くのアンテナ、携帯電話基地局、Wi-Fiルーターとの接続を常に確認する必要があるため、パルス電磁界が1日24時間、1年365日送信されています。
パルスの強度は通信活動に応じて変化します。ネットワーク信号が弱い場合、またはエレベーター内で電話をかける場合、パルスの出力は増加します。
といっても、パルスの強度が高いほど害が大きいとは限りません。
「研究では、特定の範囲の強度が、生物学的に最大の効果をもたらすことが示されている」とポール氏は述べます。
ただし、送信されるパルスが多いほど、電位に関わる生物学的影響を及ぼす可能性は高まります。5Gや4Gなどの高周波数ネットワークは、3Gや2Gよりも多くのパルスを生成します。
業界標準は生物学的な安全性には「無関係」
現在の業界標準によれば、私たちの体は、どの組織1グラムあたりの平均で見ても、30分間続けて1キログラムあたり1.6ワットを超える高周波曝露があってはいけません。 米国連邦通信委員会 (FCC) によって設定されたこの安全基準は、1996年以来変更されていません。
しかし、ほとんどのスマートフォン利用者は、スマホをポケットに入れたり、通話中に耳の横で持ったりすることで、すでにこの日常生活における安全基準を超えています。
さらにポール氏は、数分間の平均強度を考慮する現在のFCC基準は生物学的な安全性とは無関係であると述べています。
電磁界の特定の強度はナノ秒しか持続しないものであっても、やはり重大な生物学的影響を与える可能性があるとポール氏は指摘しました。この特性を考慮すると、平均値よりも最大強度を定める方が意味があります。
ポール氏は次のように例えています。
「銃弾の威力も30分間の平均で見れば致命的ではない、と言うようなものです。規制当局に行って、『強力なライフルで撃たれそうで怖い』と言うと、彼らはこう答えるのです。『心配する必要はありません。 6分間または30分間にわたって体にかかる力を平均すると、平均強度は1億分の1程度に低下するため、何も影響はありません』」
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