目に見えない電磁界(電磁波)の危険性 (パート1)

なぜ科学者は5Gを危険視しているのか?

シリーズ「目に見えない電磁界(電磁波)の危険性」では、一般的な家電製品から5Gに至るまで、あらゆる場所に潜む電磁界・電磁波の影響と、脳と身体への影響について詳しく見ていきます。

1970年代初頭にモトローラが最初のコードレス携帯電話を発売して以来、携帯電話は目覚ましい進化を遂げた。電磁波を利用して情報を伝達する通信ネットワークも、音声通話のみに対応した1Gから、高速データ転送が期待できる最新の5Gへと進化している。しかし、こうした進歩の一方で、健康への影響に関する懸念も浮上しており、特に5Gは議論の的になっている。

通信会社や規制当局 [1]は、携帯電話の放射線と健康問題を結びつける科学的根拠はないと主張しているが、多くの専門家は同意していない。2017年には、180人の国際的な科学者や医師が、5Gに関連する潜在的な健康リスクについて独立した評価を実施するよう欧州連合に請願 [2]した。

これらのリスクはどれほど深刻なものなのか?

5G以前からの無線通信の疑問点

1970年代以降の研究により、携帯電話の放射線と不妊症  [3]、神経精神障害 [4]、がん、炎症などの健康問題との関連性の可能性が指摘されている。

資金調達に関する疑問

しかし、携帯電話の放射線の影響については、研究の資金源によって多少の違いはあるものの、一貫性のない結果が得られている。

ワシントン大学のヘンリー・ライ教授は、携帯電話の放射線の生物学的影響に関する200の研究 [5]を調査した。その結果、約半数の研究では生物学的な関連性はないとされ、残りの半数は関連性の可能性を示していることがわかった。

「非産業界からの受託研究を見ると、4本の論文のうち3本が放射線の影響を示している」とライ博士は述べた。「そして、産業界が資金を提供した研究を見ると、ほとんど逆で、4本の論文のうち1本しか放射線の影響がない」。

動物実験

動物実験では、2G、3G、4Gの技術に潜在する健康リスクが示唆されている。

米国立環境科学院が2018年に発表した研究では、高レベルの2Gおよび3G放射線が、ラットの発がんリスクの増加やDNAへの悪影響と関連していることが明らかになった [6]。この研究では、その種の放射線を浴びたラットやマウスは、脳や血液細胞にDNAの損傷を示し、心臓腫瘍の明確な証拠があり、出生前に浴びた場合は出生体重が低下していることが判明した。

しかし、この研究は、実際の被ばくシナリオを反映しない異常なほど高い放射線レベルを使用したことによる限界を認めている[7]。米国国家毒性プログラムの上席研究員で本研究の共著者であるジョン・バッチャー氏は、「研究で使用された被ばく量は、人間が携帯電話を使用する際に受ける被ばく量と直接比較することはできない」と述べている。

しかし、被ばく量を増やすことで、生涯にわたる研究を必要とせず、長期的なリスクに関する研究を迅速に進めることができると、ワシントン州立大学の生化学および医学科の名誉教授であるマーティン・ポール氏はエポックタイムズに語っている。

それでも、ほとんどの研究では、携帯電話の放射線と健康への悪影響とを結びつける決定的な証拠は見つかっていない。

脳腫瘍

2019年の5G展開前に発表された携帯電話の放射線[8]に関する研究では、耳の近くに携帯電話を置くと、頭蓋骨内の脳組織に放射線が吸収されることが実証されている[9]

一部の研究   [10]は、高頻度の携帯電話の使用と脳の一種の脳腫瘍であるグリオブラストーマとの関連性を示唆している。スウェーデンの分析[11]によると、携帯電話の長期使用者(10年以上携帯電話を持っている人)は、良性腫瘍を発症するリスクが高い。特に、携帯電話に接触している側頭部でリスクが最も高いことが分かっている。

しかし、因果関係はまだ不確定である。

研究によると、携帯電話基地局やアンテナの近くに住む住民を調査した結果、頭痛、記憶障害、めまい、うつ病、不眠症などの神経精神問題の訴えが報告されている。

5Gは前世代より悪いのか?

答えは、科学者にもわからない。

2G、3G、4Gが無線周波数とマイクロ波を放射するのに対し、5Gはミリ波を放射する。

ミリ波放射は、マイクロ波やラジオ波放射とは異なり、より高い周波数で動作し、より高速な信号伝送を容易にする。しかし、ミリ波放射の潜在的な健康への影響は、政府による研究資金が不足しているため、未知のままである。

科学者が知っているのは、マイクロ波携帯電話放射とは異なり、ミリ波は体内に深く浸透しない[12]ということだ。そのため、多くの科学者[13]は5Gは安全だと考えている。

ミリ波は通信速度が速い反面、周波数が高いため電波が弱く、落ち葉や雨水、壁などで遮られやすい。そのため、通信事業者は5Gアンテナを増設する必要がある。しかし、これらのアンテナは2G、3G、4Gの信号も送信するため、5Gの広範な展開は潜在的な健康リスクをもたらす。

環境毒物学博士、電磁波の健康への影響を専門とする名誉教授で、EUモラトリアムの署名者でもあるマグダ・ハヴァス氏は、5Gの展開について懸念を表明した。

「都市部では、およそ100メートルごとにアンテナが設置されている。「人々は、すでに浴びている通常の(3Gと4Gの)周波数に加え、長期的な健康への影響についてテストされていないミリ波を、より高いレベルで浴びることになる」

5Gミリ波の健康への影響

5Gの健康への影響についてはまだ議論の余地があるが、ポール氏とハヴァス氏はそのミリ波が健康への影響を誘発する可能性があることを示唆している。

5Gのミリ波は体内に浸透しないとはいえ、皮膚に吸収される可能性はある。ハヴァス博士は、紫外線は体内に浸透しないが、皮膚のメラノーマ(悪性黒色腫)を引き起こす可能性があると指摘した。

2020年に実施された5Gの放射線に関する研究 [14]では、10センチ離れた場所から放射された場合、皮膚を約0.9ミリメートル透過することが証明された。

この深さは4Gや3Gと比べると浅いが、放射強度はかなり高い。さらに、0.9ミリメートルは浅いと言えないかもしれない。ミリ波に関する2008年の研究[15]では、0.65ミリメートルの浸透深度は「表皮と真皮に位置するほとんどの皮膚構造に影響を与えるのに十分」と著者は書いている。

「私たちの体にはさまざまな種類の細胞がある。色々な研究で示されているように、異なる種類の細胞を見ると、ある細胞タイプは他の細胞タイプよりもはるかに電磁波(放射線)に対して敏感であることがわかる」とポール氏は述べている。

さらに、彼は生物学的不均一性を考慮する必要があると指摘。単純な物理学では生物学的影響を正確に予測することはできないと強調した。

5Gの長期的な健康への影響は未知のままだが、ポール氏はミリ波が細胞の電荷を変化させることで生物学的反応を引き起こす可能性があることを示す研究を行った。

電気通信ネットワークが進化し、5Gがより高速でより大きな接続性を約束するにつれ、人の健康への影響を理解する必要性がますます重要になっている。5G技術の潜在的な健康への影響をめぐる議論は、依然として関心と論争の的となっている。

 

[1] Scientific Evidence for Cell Phone Safety
https://www.fda.gov/radiation-emitting-products/cell-phones/scientific-evidence-cell-phone-safety

[2] EU 5G Appeal – Scientists warn of potential serious health effects of 5G
https://www.jrseco.com/european-union-5g-appeal-scientists-warn-of-potential-serious-health-effects-of-5g/

[3]https://apps.dtic.mil/sti/pdfs/AD0750271.pdf

[4] Low intensity microwave radiation induced oxidative stress, inflammatory response and DNA damage in rat brain

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26511840/

[5] UW researcher’s wake-up call on cellphone radiation is finally getting heard
https://magazine.washington.edu/feature/uw-researchers-wake-up-call-on-cellphone-radiation-is-finally-getting-heard/

[6] Cellphone Radio Frequency Radiation Studies
https://www.niehs.nih.gov/health/materials/cell_phone_radiofrequency_radiation_studies_508.pdf

[7] New cellphone and health studies don’t eliminate uncertainty
https://www.science.org/content/article/new-cellphone-and-health-studies-don-t-eliminate-uncertainty

[8] Kids’ Tracker: An Android Application for Tracking Children
https://www.scirp.org/journal/paperinformation.aspx?paperid=81417

[9] Effect of Mobile Phone Radiation on Human Brain
https://juniperpublishers.com/aibm/pdf/AIBM.MS.ID.555655.pdf

[10] Cellular Telephone Use and the Risk of Brain Tumors: Update of the UK Million Women Study 
https://academic.oup.com/jnci/article/114/5/704/6554484?login=false

[11] Long‐term use of cellular phones and brain tumours: increased risk associated with use for ⩾10 years
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2092574/

[12] 5G Technology: Why Should We Expect a shift from RF-Induced Brain Cancers to Skin Cancers?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6820018/#:~:text=However%2C%20the%20depth%20of%20penetration,is%20about%20a%20few%20mm.

[13] Why conspiracy theorists think 5G is bad for your health and why experts say not to worry
https://edition.cnn.com/2020/06/14/tech/5g-health-conspiracy-debunked/index.html

[14] Human Electromagnetic Field Exposure in 5G at 28 GHz
https://ieeexplore.ieee.org/document/9090831

[15] Millimeter wave dosimetry of human skin
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17929264/

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。