パトリック・ウィリアム・スレーターさん(60歳)は、数年前まで米国テキサス州のオースティンでフルタイムで医療業務に従事していた神経科医だ。休日には山で狩りや釣りを楽しんでいたという。
ところが2021年10月、彼は小脳失調症という運動に影響を及ぼす病気にかかり、食事もできず、トイレにも行けなくなった。
運動失調は薬で対処できたが、最大の症状であったパニック発作に対しては、薬はなかなか効かなかった。
エポックタイムズの取材に応じたスレーターさんは、ほとんど毎晩パニック発作に襲われ、「絶望的な恐怖」を味わい、何度も自殺を考えたと語った。
なぜこのような症状が出たのか、誰も納得のいく答えは出せなかった。検査報告書に異常は認められず、神経科医や精神科医は彼の症状を不安症と片付けてしまった。
しかし、スレーターさん自身は、新型コロナのmRNAワクチンが犯人だと確信している。
2回目の新型コロナワクチン接種を受けてから2週間ほど経ち、最初に症状が現れたとき、疑いを持ったという。キャリアを断念せざるを得ないほどの深刻な症状が出たのは、3回目の注射を打ってからだったという。その追加接種の後、もはや「疑問はなかった」という。
異常な精神疾患の増加
医師たちは、2020年後半に新型コロナワクチンが展開されて以来、異常な精神疾患の増加を目の当たりにしている。
精神科医のアマンダ・マクドナルド氏は、自身の患者の多くが精神的に不安定になっていることに気づいた。精神症状の悪化や新たな症状が、患者の間で急速に見られたという。
「なぜかは分かりませんでした。私の患者は通常なら安定していますが、多くの患者が突然、何の理由もなく不眠症、うつ病、不安神経症を患い来院しました」とマクドナルド氏はエポックタイムズに語った。
患者に対して薬の量を増やしたり、新たな薬を追加したりしたが、ほとんど効果はなかったという。
マクドナルド氏が繰り返し目にしたパニック発作は、明らかな誘因なく発症し、夕方になるにつれて症状がエスカレートし、夜間にクライマックスを迎えるという。
それらは心臓発作のような定型的なパニック発作とは違った。典型的なパニック発作はいつでも起こる可能性があり、しばしば誘因がある。患者がその誘因を避けることができれば治療は容易だ。
1年以上かけて患者を追跡調査した結果、マクドナルド氏は新型コロナワクチンが患者の精神疾患に関係している可能性に気づいたという。
また、神経科医・神経放射線科医のダイアン・カウンス氏は、強い不安と気分の悪化を経験する患者の増加を観察したという。「性格が変わったと話す人もいます。家族から変わったと言われるのでしょう」と述べた。
リーディング・エッジ・クリニックで何百人ものコロナ後遺症患者やワクチン後遺症患者を診てきた看護師のスコット・マーズランド氏によると、不安、うつ病、不眠症が最もよく見られる症状だという。さらには、幻覚や自殺願望に襲われる患者もいるという。
エビデンス
心筋炎とは異なり、新型コロナワクチン接種が精神疾患を引き起こすことを裏付ける決定的な証拠はない。しかし、新型コロナワクチンとうつ病、不安、パニック発作、精神病、自殺などの精神症状との関連性を示す研究は多い。
米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)には、新型コロナワクチンに関連した不安症例が9,400件以上、うつ病症例が1,600件以上報告されており、それぞれ全報告の60%以上と50%以上に上った。
VAERSは、米国疾病予防管理センター(CDC)と米国食品医薬品局(FDA)が共同で管理する自己申告のデータベースで、潜在的な有害反応の早期警告シグナルを監視するために使用される。
その他、新型コロナワクチンに関連した副作用は、一般的ではないものも、パニック発作が1,500件(全報告の80%以上)、幻覚が1,100件以上(全報告の65%以上)、過敏症が975件(全報告の10%)報告された。
研究者の中には、VAERSに報告されるまれな致死的な症例をめぐり、システムが悪用されている証拠ではないかと主張する者もいれば、ワクチンとの関連性を示唆するものであり、調査する価値があると考える研究者もいる。
精神病
症例研究では、ワクチン接種後の精神病の急性疾患が報告されている。精神病は、幻覚と妄想症などを特徴とする疾患だ。
ブラジルでは、それまで健康だった30代後半の女性が、新型コロナのmRNAワクチン接種から24時間以内に難治性の精神病を発症した。好戦的になり、思考が乱れ、自分が病院で迫害されていると思い込むようになった。
医師は抗精神病薬と気分安定薬で彼女を治療したが、4か月の入院を経て行動しか改善せず、疾患は残った。
台湾では、15歳の少年が2回目のファイザー製ワクチン接種の2日後に、興奮状態になり、手足を伸ばしたり叫んだりするのを抑えられず、病院に送られた。
入院中、ベッドの上で祈るような姿勢をとり、頻繁に座ったり横になったりするなど、奇怪な行動をとった。抗精神病薬が処方されたが、その行動は退院後も1か月以上続いた。
その後、医師がステロイド治療を施すと、少年の症状は改善した。ステロイドには抗炎症作用があり、過剰な免疫系を落ち着かせる効果がある。
インドでは、新型コロナワクチンを接種した17歳の少女が48時間以内に精神病を発症した。彼女は落ち着きを失い、疑い深くなり、独り言を言うようになった。また、1か月にわたり不眠症を患った。
彼女に神経学的異常はなく、新型コロナの検査を含むすべての臨床検査が正常であった。精神薬を投与してから2週間後、症状は消えた。
全インド医科大学および地区病院の研究者らは、ワクチン接種直後に症状が出現したこと、他の可能性の高い原因が除外されたこと、遺伝的素因がなかったことから、「この精神疾患関連の有害事象はワクチンに関連している可能性がある」と症例報告に書いている。
他にも、精神病が数日、数週間、あるいは数か月続いた例を報告した文献もある。
自殺および自殺傾向
ワクチン後遺症の患者を支援する非営利団体React19によれば、ワクチン後遺症患者には自殺のリスクがあるという。しかし、後遺症が耐えがたいものになったために自殺に至ったのか、それともワクチンに対する生理的な反応から自殺に至ったのかを判断するのは難しいことが多い。
ファイザー製ワクチン接種後に報告された死亡例をCDCが調査した結果、ワクチン接種を受けた10代の若者のうち14人が死亡していることを発見し、うち2人は理由不明の自殺だった。
250人の歯科助手を対象にしたパキスタンでの調査によると、約12%がワクチン接種後の数日間に自殺願望を訴え、約1%は毎日自殺を考えていた。
個別の症例研究では、精神疾患の既往のない50代後半のトルコ人男性が、2回目のワクチン接種から3日以内に自殺未遂で救急外来を受診したことが確認された。彼は苛立ち、不眠症ぎみで、独り言を言っていたという。
和歌山県立医科大学の医師は、ある日本人のケースを詳細に説明した。
彼は1回目の予防接種後に疲労を覚え、4回目の予防接種時には軽い頭痛と浮遊感を覚えたという。
ところが、ワクチン接種の4日後、「競馬で20億円当たった」と誇大妄想を語り、饒舌になったほか、「みんな幸せになる」と言って泣くなど、情緒不安定になった。
神経科を受診したところ、脳炎などの神経学的障害の可能性は認められず、感染の兆候も認められなかった。ワクチン接種から1週間後、彼は自宅の2階から飛び降り、救急車で病院に運ばれた。
米国ではパンデミック以降、自殺者が増加している。2020年、CDCは最大46,000人の自殺者を報告した。2021年には48,000人以上に増え、2022年には50,000人近くが自殺で亡くなっている。ロックダウンのような規制措置やコロナ後遺症(ロングコビッド)は自殺と関連付けられるが、自殺率の増加と新型コロナワクチンを関連付けた研究は今のところない。
認知障害との重複
精神症状は、記憶力の低下などの認知障害と重なることもある。例えば、認知症はうつ病のような症状を示すことがある。
マクドナルド氏は、認知症に似たうつ病を発症したワクチン接種済み患者を治療した。その患者は90歳代であったが、自立心が強く、一人暮らしをしていた。ワクチン接種後、彼女は認知症と診断され、老人ホームに入所した。
イベルメクチンを服用したところ、症状は回復した。
スザンヌ・ガズダ氏のような神経科医は、症状を持ちながら治療を受けていない症例について懸念している。「自分が負傷していることに気づいていない人がたくさんいるのです」
ガズダ氏は統合医療を実践しており、数千人の神経変性疾患患者を治療しているが、その多くが精神症状を伴う認知機能の低下を訴えているという。
またカウンス氏は、脳萎縮を発症したワクチン接種済み患者を何人か抱えているという。ある患者は海馬が萎縮し、記憶喪失と性格の変化が見られた。脳の記憶中枢である海馬が萎縮すれば、隣接する感情を処理する大脳辺縁系も同様の影響を受ける可能性があると、カウンス氏は推論した。
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