自然が教えたユニークな化合物、ケベコール

メープルシロップの魅力 フェノール化合物とその驚くべき効果(下)

しょ糖を主成分とする精製糖と比べて、メープルシロップには250を超える多様な物質が含まれています

メープルシロップの健康効果

ロードアイランド大学のシーラム教授は、メープルシロップにはさらなる研究開発が必要な物質が数多く含まれていると述べました。そのフェノール化合物は、抗変異原性(遺伝子の傷害に伴う突然変異を抑制する作用)、抗ラジカル性(ラジカル:酸化を起こしやすい不安定な状態)、抗酸化性、抗炎症性、抗糖尿病性、さらには抗ガン性など、さまざまな有益な作用を示しています。

1.抗糖尿病薬

食べ物が酵素によって分解・吸収されると血糖値が上昇します。これらの酵素を阻害することは、2型糖尿病を治療するための重要な戦略だと考えられています。

メープルシロップエキスには、酢酸エチルやブタノールなどのフェノール化合物が豊富に含まれており、デンプンを糖に分解する酵素を阻害することができます。これらの化合物はまた、小腸での糖の吸収を助ける酵素の働きを妨げ、炭水化物の急速な消化を遅らせ、食後の血糖値を抑える効果があります。

メープルシロップに含まれるアブシジン酸(ABA)は、潜在的な抗糖尿病特性があると考えられています。アブシジン酸は植物ホルモンで、抗糖尿病薬のチアゾリジン薬と構造的に類似しています。動物実験では、ABAの2型糖尿病に対する予防効果が実証されています。

カナダのラヴァル大学で行われた研究によると、玄米シロップ、コーンシロップ、純粋なブドウ糖と比較して、メープルシロップを摂取すると、血糖値の変動がより小さくなり、インスリン分泌やその他の関連指標において、より良い反応が見られました。

玄米シロップ、コーンシロップ、ブドウ糖に比べ、メープルシロップを摂取すると、血糖値の変動がより小さい(エポックタイムズ)
 

2.抗炎症作用と抗酸化作用

ストレス、身体的外傷、ウイルス感染、化学物質への暴露、その他の要因は、細胞が自由ラジカルを含む毒性物質を、放出するきっかけとなることがあります。過剰なフリーラジカル(人の体を酸化させ、錆びさせるもの)によって引き起こされる酸化ストレスは、老化や、がん、心臓病、多発性硬化症、パーキンソン病、自己免疫疾患、認知症など、さまざまな変性疾患と関連があるとされています。

メープルの樹液やシロップに含まれるフェノール化合物が抗酸化作用、フリーラジカルを消去することが研究で確認されています。「Journal of Medicinal Food」誌に掲載された研究によると、純粋なメープルシロップのフリーラジカル消去能力はブルーベリー果汁より低いものの、オレンジ果汁やストロベリー果汁に相当します。さらに、色の濃い品種はフェノール含有量が高いため、抗酸化作用がより顕著です。

3. 抗がん効果および抗変異原性

メープルシロップには、ケンぺロール、ルテオリン、ケルセチン、ミリセチン、カテキンなどの様々なフェノール化合物が含まれています。これらの化合物は強力な抗がん効果および抗変異原性を持っています。

前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がんなど、さまざまながん細胞の増殖を抑制することができます。注目すべきことに、実験において、メープルシロップは正常細胞には影響を与えず、急速に成長するがん細胞を標的にしています。

メープルシロップ抽出物はまた細胞を保護し、有毒化学物質による突然変異誘発作用を打ち消す効果があります。

4. ユニークなフェノール化合物:ケベコール

ケベコールは近年メープルシロップから発見されたユニークな化合物で、抗炎症作用があると考えられています。興味深いことに、ケベコールはメープルの樹液には含まれておらず、メープルシロップにも少量しか含まれていません。ラヴァル大学化学部のノーマン・ボワイエ教授はエポックタイムズに、「この化学物質は、樹液を加熱し沸騰させて蒸発させるという、メープルシロップを作る一連の熱工程の中で生成されます」と語りました。ボワイエ教授と彼の同僚は、ケベコールの合成法を開発しました。おかげで世界中の科学者がこの物質を研究しています。

ボワイエ教授は「インスピレーションの源は自然でした」とし、自然は市場にある他の多くの薬のインスピレーションにもなっていると指摘しました。

「自然は、美しい化学構造やユニークな天然物質を提供してくれます」

実験室での研究では、ケベコールは炎症性疾患の治療に大きな可能性を示しています。例えば、歯周炎乾癬(かんせん:慢性の皮膚角化症状をはじめとする全身炎症性の自己免疫疾患)などの症状に良い影響を与えることが証明されています。

 

メープルシロップの選び方

精製糖の代用としてメープルシロップを使用する前に、製品のラベルや説明書をよく読むことが重要です。

メープルシロップの中には、異性化糖(ぶどう糖と果糖の混合液)にメープルの風味を加えたものがあります。そのGI値は最大68と、純粋なメープルシロップよりもはるかに高くなっています。長期にわたる人工糖の大量摂取は、インスリン抵抗性、腹部脂肪蓄積、高脂血症などの代謝障害を引き起こす可能性があります。

原材料表示を見て、100%本物のメープルシロップを選ぶようにしましょう。

さらに、メープルシロップを選ぶ際は、フェノール化合物を多く含む色の濃いものを選ぶこと。メープルシロップの利点にもかかわらず、食べ過ぎないことが重要です。

シーラム教授は「何よりもまず、メープルシロップは甘味料です。どんな甘味料でも大量に使うべきではありません」と指摘しました。

「メープルシロップは精製されていない砂糖よりも機能的な甘味料、または賢い甘味料だと思いますか? 答えはイエスだ」としながらも、「大量に摂取するのではなく、適量を楽しむべきです」と付け加えました。

米国農務省が策定した「2021-2025米国民向け食事ガイドライン」によると、遊離糖の摂取を1日の総カロリーの10%未満に抑えることが推奨されています。1日の摂取カロリーが2000キロカロリーの方なら、遊離糖の摂取上限は200キロカロリーとなります。60ミリリットル(約72g)のメープルシロップは270キロカロリーです。なので、200キロカロリーのメイプルシロップは約53g(63.5ml)になりますね。

英国政府はさらに一歩踏み込んで、遊離糖のエネルギーを5%以下に制限するよう勧告しています。つまり、成人の場合、遊離糖の1日の総摂取量は30g以下に抑えるべきです。これはメープルシロップ約48g(40ml)未満に相当します。