よもぎ団子で迎える健康と幸運の春

 

よもぎと小豆は、漢方と日常生活において重要な役割を果たしてきました。二つの組み合わせはその味に魅力があるだけでなく、そのユニークな性質を活かして体のバランスを整えてくれます。特に、よもぎはその多様な使用法と健康への貢献で知られ、薬草としてだけでなく、生活の知恵としても広く活用されています。

 

よもぎ:古代から伝わる自然の恵みで
体のバランスを整える

よもぎは昔から薬草として煎じたりして食べたり、その殺菌効果から匂い消しなどにも利用されてきました。現代人が患う様々な病気にもよもぎは効果的で、疲労や体の不調を和らげるのに役立つとされていますが、具体的によもぎがどのように作用するかは十分に解明されていません。簡単に言うと、よもぎは体内のエネルギー(「気」と呼ばれるもの)や血流を良くし、これによって全体の健康が向上すると考えられています。

また、よもぎは古代中国で独特の使い方もされていました。たとえば、軍隊が行軍や戦闘中に水源を探す際に使用されたことがあります。地面に穴を掘り、よもぎを燃やしてその中に入れます。しばらくして、煙や水蒸気が出てきたら、その下に地下水があると分かります。このようにして水を見つけることができれば、困難な状況を乗り越えるのに役立ちます。

よもぎ(若竹 / PIXTA)

よもぎのこうした使い方の背景には、よもぎが水の動きを活性化させるという性質が関係しています。漢方では、よもぎを使って特定のツボに灸をし、発汗させる治療があります。これは、体内の余分な水分や寒気を取り除き、風邪の症状や水腫の改善に効果が期待できます。

漢方では、人体を小宇宙と捉え、健康を保つためには宇宙の五行のエネルギーのバランスを整えることが肝要だとされています。この考えに基づき、体内には五つの主要な臓器と経絡に対応する五行の循環システムが存在するとされています。例えば、腎臓は五行の中で水に対応する臓器とされ、体内の水分バランスを調節します。しかし、この水の気は本来冷たいため、冷えを感じやすく、湿度が高い季節には腰痛や手足が重く感じるなどの症状を引き起こすことがあります。このため、腎臓は「陽の気」をしっかり保つことが重要とされています。

そこで、よもぎが登場します。よもぎには体を温める効果があり、冷たい水分を細胞が利用しやすい微細な水の粒子に変えることができます。この「気化」という過程で冷たい水を温めて上昇させます。これにより、体の冷えを和らげ、上半身への水分の流れを改善し、全体のエネルギーバランスを整えることができます。また、よもぎは肝臓の機能をサポートし、血液の流れを良くすることで、体全体の調子を整え、健康を促進します。これがよもぎを使った古代の健康法と治療法の原理です。

さらに、古代の人々は高い湿度の季節に香草(ハーブ)を身につけることで、邪気を払い(災難を避け)、同時に幸運と健康を引き寄せると信じていました。その理由は、香り高い薬草は体内のエネルギーの流れを整え、病気に対する抵抗力を高める効果があるとされているからです。これらの知識は、今日でも自然治療法としてその価値が認められています。

よもぎ団子(MIKO / PIXTA)

 

よもぎと小豆:自然の力で体のバランスを整える

よもぎと小豆は、古代から使われてきた自然の素材で、体の内側からバランスを整えるのに役立ちます。よもぎは水分を体の下部から上部へと移動させ、特に肝臓の機能をサポートして気血の流れを良くする効果があります。

一方、赤色の小豆は「火」の属性を持ち、五行に対応している心臓に働きかけます。心臓を強くし、体内の余分な水分を押し出して尿として排出します。これは、体内の余分な湿気や熱を減らすのに寄与し、腹痛や下痢などの症状を防ぐために重要です。特に、脾と胃の健康にも良い影響を与え、これらの臓器が関連する「土」の要素を通じて体内のバランスを整えます。

よもぎと小豆は、体内における水と火のバランスを整えるために理想的な組み合わせです。よもぎが水分を上に運び、小豆が余分な湿気や熱を下に送ることで、人体の陰陽のバランスが調和されます。これにより、五臓の機能が自ずと調整され、健康が維持されるのです。古代の人々がこの組み合わせで健康を維持し、病気を予防していた知恵は、今でもその価値が認められています。

よもぎ大福( freeangle / PIXTA)

 

甲辰年(2024年)は湿気が強い

2024年は、旧暦では「甲辰年」とされ、古代中国の医学書『黄帝内経』によると、自然界の土の気が強まる年です。この年は湿気が多く、の季節には寒さと共に湿気が広がり、雨や霧が多くなります。これによって、消化器系である脾と胃が影響を受け、その機能が弱まりがちです。特に、生の冷たい食べ物を食べると、お腹の痛みや下痢を引き起こすリスクが高まります。また、土の気が過剰になると、腎の機能が低下し、手足が重く感じやすいでしょう。春になると、肝の働きが活発になり、心や肺、顔に熱をもたらし、さまざまな炎症やイライラ、不眠を引き起こすことがあります。

この年の特性に合わせて、湿気と寒さを取り除き、体のバランスを保つためには、特定の食品が推奨されます。例えば、よもぎを使った団子は、肝や腎、脾、胃の機能を整えるのに効果的です。春は自然界で木の気が強くなる時期でもあり、地震や強風などの自然災害が発生しやすくなりますが、これは強くなっていく土の気を抑えるために五行のメカニズムがバランスを取ろうとしている現象です。人体も自然界と同じように五行のバランスがあり、似たような現象が起こるので、それに合わせて食べ物の性質を理解し、適切な食生活を心がけましょう。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。