【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。
抗炎症の正体は「熱と巡り」

科学と中医学が出会う場所:ポリフェノール食と体の調和

最近、炎症をやわらげたり、老化の進み方をゆるやかにしたり、健康に長く過ごすことへの関心が高まっています。その中で、お茶やベリー類、カカオ、豆類、野菜や果物など、ポリフェノールを多く含む食品が注目されています。

最新の研究では、ポリフェノールは活性酸素の除去や免疫の調整に役立つ可能性があるだけでなく、腸内で抗炎作用が期待される代謝物(IPAなど)をつくることも報告されています。これにより、慢性的な炎症がやわらぎ、さまざまな病気のリスクを下げる可能性があると考えられています。

興味深いことに、中医学では昔から炎症の正体を「炎」という一文字で示し、体の中の「熱」や「巡りの乱れ」として説明してきました。現代科学と中医学ではアプローチは異なりますが、体のバランスを整えて炎症を落ち着かせるという点では、どちらも共通した方向を向いています。
 

1.現代の抗炎症と長寿のための食事:科学は「余分な火」を探求している

近年、緑茶、ベリー、カカオ、日本の伝統的な食事が健康に良いと言われる理由は、ポリフェノールが豊富で、慢性的な炎症をやわらげ、細胞や血管の老化を防ぐ働きが期待されているためです。

現代の研究では、慢性炎症が多くの生活習慣病の背景にあると考えられています。炎症が少ないことは、健康を長く維持するための大切な指標にもなっています。

たとえばスペインの研究では、高齢者が8週間ポリフェノールをとり続けたところ、血液中のIPAが増え、腸の善玉菌が増加して腸内環境が安定したとされています。これは、食事によって腸が整うことで全身の炎症がやわらぐ可能性を示しており、中医学の考え方ともよく似ています。
 

2.「炎」という字が表す、体の「熱」と「乱れ」

「炎」という字は上下に火が並び、火が強く燃えている様子を表しています。これは、炎症が起きているところに「余分な熱」が生じていることを示しています。熱が強すぎると、体のエネルギーバランスが乱れ、体内の水分が不足し、血液やリンパの巡りも悪くなります。

体の状態は気候のようなものでもあり、暑すぎたり乾きすぎたり、反対に冷えすぎたり湿気が多すぎたりすると、体内の環境が乱れやすくなります。巡りが悪くなると老廃物が排出されにくく、栄養が行き渡りにくくなるため、細胞がうまく働けません。その結果、疲れやすさ、痛み、肥満、血圧や血糖の乱れなどが起こりやすくなります。

現代医学ではこれを「慢性炎症」と呼び、中医学では「火が強い」「水分が足りない」「巡りが悪い」などと表現しますが、どちらも同じ現象を説明していると言えます。
 

3.体はひとつの「気候システム」:寒い・熱い・乾く・湿るのバランスが大切

炎症をおさえるには、薬で炎症を抑えるという発想だけでなく、体本来のバランスに戻すことが大切です。熱をおさえ、体内の水分を満たし、血液やリンパの巡りを良くし、乾きすぎや湿気の滞りをなくすことで、体は自然に安定していきます。

ポリフェノールを多く含む食事は、このバランスを整える助けになると考えられています。緑茶、ベリー、豆類、コーヒー、ナッツなどは活性酸素を減らし、腸で抗炎作用が期待される物質をつくり、血流や代謝の安定に役立つとされています。その結果、体がほどよく温かく、乾きすぎず、巡りの良い状態に近づいていきます。
 

4.現代の抗炎症と中医学の「調和」は、実は同じこと

たとえばお茶を飲むことを、現代では「抗酸化作用」や「抗炎症作用」と説明しますが、中医学では「熱を冷ます」「巡りを良くする」「のどや体内を潤す」と表現します。野菜や果物は現代では「炎症を起こす物質を減らす」と言われますが、中医学では「体を潤す」「ストレスを和らげる」と考えます。

豆類は現代では「血糖値を安定させる」「血管の健康を守る」と言われ、中医学では「胃腸を整える」「体力を補う」と説明されます。

ポリフェノールが腸内環境を良くし、全身の炎症を落ち着かせるという研究結果は、中医学が大切にしてきた「胃腸が整えば全身が整う」という考え方ともつながっています。結局どちらも、体の余分な熱をおさえ、巡りを良くし、滞りをなくすことを目指しているのです。
 

5.体の「天気」を春のように整える:熱くなりすぎず、滞りのない体へ

いわゆる抗炎症の食事とは、昔の人が語っていた「食べ物で体のバランスを整える」という知恵にも通じています。体のバランス(陰陽)が整うと巡りが良くなり、臓器の働きも整い、炎症も自然に落ち着いていくと考えられています。

慢性的な不調は急に起こるものではなく、「熱すぎ・乾きすぎ・滞りすぎ」という状態が積み重なって現れます。食事、生活リズム、感情の状態を整えることで巡りが改善し、体に必要な水分が満たされ、腸内環境が安定すると、まるで季節が変わるように体が軽く穏やかに感じられます。

現代の抗炎症の考え方も、中医学の調和の考え方も、最終的には同じところに行き着きます。体の中の「天気」を春のように温かく、潤いがあり、巡りの良い状態に戻すということです。

ポリフェノールを多く含む食事は、現代的な科学の視点からも、中医学の知恵の視点からも、その後押しをしてくれます。そして体のバランスが整えば、炎症は自然に落ち着き、健康と長寿につながっていきます。

(翻訳編集 解問)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。