口をテープで塞ぐ?鼻呼吸の意外な効果とは?(下)

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鼻で呼吸することは、病気から身を守り、脳の機能を向上させるなど、様々な健康・美容効果があります。

5. 神経系を鎮める

鼻からの呼吸は、交感神経系と副交感神経系のバランスを取る上で中心的な役割を果たし、ストレスの軽減や健康状態の向上に欠かせません。鼻呼吸をすると、ゆっくりと深い呼吸が自然と行われ、副交感神経系が働き、心身ともに落ち着いた状態になります。

「Scientific Reports」が発表した新しい研究によると、意識的な呼吸がストレスや精神的健康に大きな影響を与えることが明らかになりました。この研究は、鼻呼吸を中心とした呼吸法が、様々な人のストレス、不安、抑うつを大幅に減少させることを確認しています。

Breathpodの創業者であるスチュアート・サンデマン氏は「鼻呼吸は呼吸の速度を落ち着かせ、副交感神経系の『休息と消化』の反応を引き起こします」と述べています。

また、右の鼻孔を通した呼吸が交感神経系を活性化し、左の鼻孔は副交感神経系を促進すると説明しており、この優位は「鼻周期」と呼ばれる日々の変動パターンに従っていると説明しました。

2022年3月の研究では、ヨガのプラーナヤーマ(生命エネルギーをコントロールする、調気法、呼吸法)の一環としての遅い鼻呼吸が脳に顕著な効果をもたらすことを発見しました。瞑想中にこの呼吸法を行った参加者は独特の意識状態を経験しました。研究者はこれらの参加者から脳活動の顕著な変化を観察しました。これは、鼻呼吸が単に体をリラックスさせるだけでなく、私たちの思考や感情にも深い影響を及ぼすことを示唆しています。

6. 脳を守る

鼻呼吸は、空気を吸うためだけではなく、脳の健康に必要な血中の二酸化炭素の適切なレベルを維持するために重要です。鼻呼吸は記憶力、集中力、注意力などの認知機能にとって基本的なものです。

最近の脳イメージング研究によると、鼻呼吸は記憶タスクを行う際の脳機能向上が示されています。口呼吸と比べて、鼻呼吸は脳の重要な領域をより効果的に活性化させるため、長期的には口呼吸が脳のパフォーマンスを低下させます。

7. 顔つきを改善

若い頃からの鼻呼吸は、顔の形成にとって重要な役割を果たします。クリーブランドクリニックによると、「口呼吸は子供たちの顔の発達に影響を与え、いわゆる『アデノイド顔貌』を引き起こすことがあります。口呼吸の人の顔は、顔幅が狭く、顎が後退していることが多いのです」

この点を裏付ける研究によると、口で呼吸する子供たちは、鼻で呼吸する子供たちと比べて顔の構造が異なります。この研究は、鼻呼吸が広い口蓋(口腔上壁)とバランスの取れた顔の外観に寄与しており、健康と美的発展において重要であることを示唆しています。

(buritora / PIXTA)

 

変化に適応する:鼻呼吸を促進する方法

鼻を通して呼吸する習慣を身につけるのは、特に常に口で呼吸している人にとっては挑戦的です。以下に、この変化をスムーズに行うための実践的なテクニックとトレーニングを紹介します。

夜間の口テープ:簡単で効果的な方法として夜、口にテープを貼ります。唇に通気性の良いテープを少し貼ることで、鼻呼吸を促し、睡眠時の口呼吸を防ぎます。

サンデマン氏は、口から鼻への呼吸法の変更は挑戦的だと述べ、「口呼吸の人は、最初は鼻呼吸に切り替えるのが難しいと感じるかもしれません」と語りました。

サンデマン氏は、日中に1分から始めて徐々に30分まで口にテープを貼る時間を延ばし、最終的には夜通しテープを貼るよう勧めています。

呼吸法:特定の呼吸法により、呼吸器系を鍛え、鼻呼吸を促します。交互に鼻の穴から呼吸したり、横隔膜を意識して使う横隔膜呼吸は、特に有効です。

アレルギー対策:アレルギーによる鼻のつまりに悩む人は、鼻呼吸が難しいと感じるでしょう。医療専門家と相談し、長期的なアレルギー対策を立てると助けになります。

意識的な練習:日常生活では、鼻呼吸を心がけましょう。定期的に自分の呼吸パターンを確認し、口呼吸になっていたら修正するようリマインダーを設けてください。

顎と舌の運動:顎と舌を鍛えることで、気道を開けて鼻呼吸をサポートします。舌を上あごに押し付けて数秒間キープするなど、簡単な運動も効果的です。

バランスのとれた見方:口呼吸が必要な場合

激しい運動をしている時や、ある医療状態の時など、口呼吸は避けられないことがあります。このような呼吸が必要になる状況と、その負の影響をどう軽減するか理解することが大切です。

サンデマン氏は「普段は鼻から呼吸するのが望ましいですが、口からの呼吸が命を救うこともあります」と述べています。

例えば、予期せず車の前に飛び出してしまった場合、口からの急な息の吸い込みが足の筋肉への血流を速め、迅速に安全な場所へ跳ね返ることを助けます、と彼は説明しています。

口呼吸から鼻呼吸への切り替えは、長年の習慣に挑戦することかもしれませんが、自然に健康を向上させます。この習慣へ意識的に戻ることのメリットは計り知れません。

(完)

10年にわたる執筆キャリアを持つベテラン看護師。ミドルべリー大学とジョンズ・ホプキンス大学を卒業。専門知識を取り入れたインパクトのある記事を執筆している。バーモント州在住。3人の子を持つ親でもある。