より良い睡眠を手に入れて認知症を予防――ビタミンDの力

ビタミンDのあまり知られていない利点や、効果に応じた最適な摂取タイミングについて学びましょう。

パンデミック以来、ビタミンDはCOVID-19の治療効果が注目されていますが、COVID-19と免疫力を高める以外にも、カルシウムの吸収を促したり認知症を予防したりするなど、多くの機能があります。メリーランド大学の統合医療専門家であるオウ・ハン・ウェン博士は、ビタミンD欠乏により引き起こされる睡眠障害について詳しく説明し、最適なサプリメント摂取法を概説しました。

ビタミンDはホルモンとして、免疫系や心血管系、皮膚や筋肉の機能、細胞の増殖など様々な機能を調整しています。ビタミンDが不足すると、次の4つの症状を引き起こす可能性があります。

 

1.骨粗しょう症

 ビタミンDは小腸でのカルシウム吸収を促進し、骨の強度を高めます。ビタミンDのレベルが不十分だったら、カルシウムが豊富にあっても体はカルシウムを吸収できません。

 

2.免疫力の低下

研究により、ビタミンDは免疫調整に重要な役割を果たしています。ビタミンDを補給すると、体がウイルスと戦うのを助けることができます。研究では、血清中のビタミン D レベルと COVID-19 の発生率および重症度の間には負の相関関係があることが示されています。

 

3.心血管疾患

長い間、心血管疾患はコレステロールと関連付けられてきました。高コレステロールレベルは血栓を引き起こす可能性があります。しかし、実際には血管内のコレステロール沈着は炎症によって発生し、酸化コレステロールの形成につながります。適切なビタミン D レベルは炎症やフリーラジカルの攻撃を軽減し、酸化コレステロールのリスクを下げて心血管疾患の予防に役立ちます。

 

4.気分の落ち込みや不眠症

ビタミンDはセロトニン、ドーパミン、メラトニンなどの脳内の神経伝達物質の分泌と密接に関連しており、それによって気分や睡眠の調節に重要な役割を果たします。ある研究では、ビタミンDの補充がうつ病患者の症状の緩和に良い効果を示します。さらに、全体的な気分と睡眠の質の改善に役立つ可能性があります。

 

ビタミンDで睡眠障害を改善する

オウ博士は、不眠症を主に3つのタイプに分類しました。1つ目は、寝つきが悪く、30分以上寝返りを打っても眠れないタイプです。2つ目は、夜中に3回以上目が覚めるタイプです。3つ目は、予定の起床時間よりも早く、または夜明け前に目が覚めるタイプです。さらに、いくつかの不眠症は、胃食道逆流症、夜間の足けいれん、むずむず脚症候群などの症状によって引き起こされます。

ビタミンⅮは、眠りが浅く、夢が鮮明で、深い眠りにつけないなどの不眠症を改善できます。脳には多数のビタミンD受容体があり、ビタミンDが受容体に結合すると、メラトニンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌に影響を与えます。研究によれば、ビタミンDの欠乏と睡眠障害の間に相関関係が見られます。具体的には、ビタミンⅮ欠乏によりメラトニンの適切な生成を妨げ、眠りにつきにくくなります。さらに、セロトニンのレベルが低下し、不安感が生じる可能性があります。

ただし、オウ博士は、不眠症の即効薬としてビタミンDサプリメントに頼るべきではないと強調しています。まずは、不眠症の根本的な原因を特定することが重要です。オウ博士は、10種類以上の睡眠補助薬やサプリメントを持ち込んできた患者の例を挙げ、「これらをすべて試してみましたが、まだ眠れない」と述べました。その患者の寝室が賑やかな通りに隣接していることが判明し、その騒音が睡眠の質を妨げていたことが分かりました。窓を交換した後、睡眠の質は大幅に改善しました。

睡眠の質を改善するために、オウ博士は次のようなライフスタイルの変化から始めることを推奨しています。

 

規則的な睡眠パターンを維持すること

睡眠スケジュールを一定に保つと、体内時計が調整され、適切な時間に眠りにつきやすくなります。例えば、ある日夜8時に就寝して、翌日は深夜2時に就寝するような不規則な就寝時間は体を混乱させ、睡眠を妨げる可能性があります。

 

睡眠環境を最適化すること

睡眠環境が明るすぎたり、暑すぎたり、湿度が高すぎたりすると、眠りにつきにくくなります。

 

電子機器の使用を制限すること

寝る前にスマートフォンやタブレットを使用すると、体にブルーライトが当たり、コルチゾールの分泌が刺激され、メラトニンのレベルを低下させるため、眠りにくくなります。

 

刺激物摂取を減らすこと

寝る前にコーヒーや紅茶などの刺激物を控えましょう。また、ビタミンDや魚、卵黄、乳製品などの食品を摂取することで睡眠の質を高めることができます。

 

ビタミンDで脳の衰退を防ぐ

認知機能低下や神経疾患を持つ人は、ビタミンD欠乏症を呈することが多いのです。ある研究では、ビタミンD欠乏の人は認知障害のリスクが31%高くなることが明らかになりました。別の研究では、適切なビタミンDレベルを維持することで認知症および軽度認知障害のリスクをそれぞれ25%と33%減少させることが実証されました。これらの研究結果は、適切なビタミンDレベルが認知症の予防に寄与することを示唆しています。

オウ博士は、ビタミンD欠乏が神経伝達物質の不十分な生成を引き起こし、脳の栄養状態に悪影響を与えると説明しました。その結果、脳細胞が衰退または死滅しやすくなり、記憶力の低下、論理的思考力や計算能力の低下につながります。

ただし、オウ博士は、既に認知症を患っている人はビタミンDを摂取しても症状が改善する可能性が低いと強調しています。言い換えれば、適切なビタミンDレベルを維持することは神経衰退疾患の予防には役立ちますが、治療はできないというこです。

 

最適なビタミンDの摂取量とタイミング

ビタミンDは脂溶性ビタミンです。オウ博士は、ビタミンDサプリメントを摂取する最適なタイミングは食事とともにすることであり、特にオリーブ油、魚油、ナッツ油、または脂肪の多い魚などの健康的な脂肪と一緒に摂取するのが理想的だと述べています。

骨を強くするには、カルシウムとビタミンKの摂取を組み合わせることを推めます。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、ビタミンKは吸収されたカルシウムを骨の隙間に沈着させるのを助け、骨密度を改善します。しかし、ビタミンDサプリメントは体内のマグネシウムを消耗させるため、毎日カルシウムサプリメントの摂取量のおよそ半分にあたる500 ミリグラムのマグネシウム摂取を奨めます。

ビタミンDの摂取タイミングについて、オウ博士は、骨密度を高めたり、心血管の健康を改善したりするために、日中いつでも摂取できると述べています。ただし、メラトニンの分泌を促進させて睡眠を改善する目的であれば、午後、夕方、または夕食後に摂取することが推奨されます。最適な摂取量は個人によって異なりますので、検査を受けて医療専門家に相談しましょう。

 

(翻訳編集 季千里)

認定パーソナルトレーナー。個人に合わせた運動プログラムを開発および実施するための米国運動評議会の要件をすべて合格。ナチュラルスキンケア製品のマーケティングマネージャーとして経験を積み、健康と美容のレポーターおよび編集者として10年以上勤務。YouTube番組「Amber Running Green」と「Amber Health Interview」のホスト兼プロデューサー。