近年、スクリーンの使用時間が急増する中、科学者や眼科専門医は、視力を強化し健康を維持するための秘訣として「朝の早い時間に太陽光を浴びること」を推奨しています。
オーストラリアの2022年版ビジョンインデックスによると、過去12か月間で人々のスクリーンに集中する時間は2倍以上に増加しており、回答者の大多数が1日最大8時間をデバイスやテレビに費やしていると報告しています。
スタンフォード大学医学部の神経生物学および眼科学の終身教授であるアンドリュー・ヒューバーマン博士は、視覚に関する最も重要な発見をした研究者に贈られる「コーガン賞」を受賞した専門家で、彼によれば「朝の太陽光を浴びること」は、太陽光による体内時計の調整を通じて、生涯にわたって健康な視力を維持するための特に効果的な方法です。
「明るい光に触れることで、レンズを調整する目の細胞が活性化され、目の構造に栄養を供給し、近視の発症リスクを低減します」とヒューバーマン博士は、科学誌Neuronに発表された研究を引用しながら説明しています。
太陽光は視力をリラックスさせ、維持するだけでなく、脳、気分、代謝など、精神的および身体的な健康にも大きな効果をもたらします。
彼は、毎朝5~10分間の明るい光を浴びることを推奨しています。
曇りの日でも、太陽光はポジティブな効果を引き起こすのに十分ですが、屋外にいる時間を15~20分程度に延ばす必要があります。
「太陽の方向を向きましょう。ただし、決して直接太陽を見たり、痛みを感じるような光の見方をしないでください。目を守るため、必要に応じて目を閉じたり瞬きをしてください」と彼は付け加えています。
パノラマ視野の練習
太陽光を浴びることに加えて、窓の外を見たり、外に出て何にも焦点を合わせずに広い視野を意識する「パノラマ視野」を練習することで、近くのものばかりに目を向ける状態を防ぐことができます。
ヒューバーマン博士によると、「これは、レンズが動いて厚くなったり、リラックスすることを伴います。レンズをリラックスさせることは、目の内部の筋肉にとって最も良いことの一つです」とのことです。
集中した作業を30分行ったら、一度外を眺め、顔や目の筋肉、さらに顎の筋肉もリラックスさせましょう。
もし近くのものやスマートフォン、パソコンの画面を見続ける場合、少なくとも90分ごとに視線を遠くに移し、1日にできるだけ20~30分は外に出て、遠くを見る習慣をつけるとよいでしょう。
もし外に出られない場合は、窓やバルコニーに出て、目をリラックスさせるだけでも効果があります。
理想的には、窓を開けて自然の光を取り入れましょう。窓は昼間に必要な青色光や太陽光をフィルターで遮断してしまうためです。
目の筋肉を鍛えるために物を追うトレーニング
目を動かす外眼筋を鍛えるためには、追跡運動が非常に効果的です。外眼筋は、目の動きをコントロールする筋肉です。
「私は、できるだけ実際の世界で動く物体をスムーズに追う体験をしてほしいと考えています」と、ヒューバーマン博士は言います。
「ホッケーの試合でパックを追いかけたり、ライブスポーツを観戦したり、テニスの試合でボールが行き交う様子をじっと見つめることは、目にとって非常に良いトレーニングになります」
もしこれが難しい場合は、ボールやペンを使って練習しましょう。近くに持ってきて5〜20秒ほどじっと見つめ、その後ゆっくりと腕を伸ばして遠くに移しながら焦点を合わせ直します。
この運動を週に3回、5〜10分間行うことが推奨されています。
「このトレーニングは、脳震とう後の視覚やバランス、運動機能、認知機能を回復するために行われる視覚トレーニングに似ています」と彼は付け加えています。
朝が苦手な人へ
朝早く起きられない人や、朝のうちに外出するのが難しい人は、午後に外に出てみましょう。
曇りの日でも、太陽が低い位置にある時の光は十分に届いています。
午後の太陽光は、脳と体に時間を知らせる「第二のアンカーポイント」として機能し、体内時計のリズムを整えるのに役立ちます。
また、午後の太陽光は、夜遅くに人工的な光を浴びることによる悪影響を軽減する効果もあります。
「視力を守るためには本当に価値があることです。若い人にとっては、これにより強い視覚システムを構築する助けにもなります」とヒューバーマン博士は言います。
ヒューバーマン博士は、脳の発達、脳の可塑性、神経の再生に関する分野で数々の貢献をしてきました。
彼は過去20年間、確立された科学と最新の研究に基づいて視覚システムの仕組みを解明しています。
(翻訳編集 華山律)
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