骨盤底筋の健康の重要性

友達と楽しく笑っているとき、思わずおしっこが少し漏れてしまったことはありませんか? または、突然のくしゃみで同じような恥ずかしい経験をしたことはありませんか? ランニングや重い物を持つとき、トランポリンでジャンプするのが怖い、そんな経験は、あなたは一人ではありません。同じ悩みを持つ人は何百万といます。

ようこそ、骨盤底筋の世界へ。
 

骨盤底筋とは?

骨盤底筋は筋肉と靭帯の集合体で、膀胱や腸の失禁を防ぎ、骨盤内の臓器を支え、性機能にも重要な役割を果たします。この筋肉が正常に機能しているとき、体の基本的な働きはスムーズに行われます。そのため普段は意識することはありません。しかし、膀胱や腸の漏れ、性交痛、臓器の脱出などの問題が起きると、その不快感や恥ずかしさは計り知れません。

骨盤底筋の役割

骨盤底筋は、他の主要な筋肉群と連携して働きます。例えば、リフティングやくしゃみ、咳、ランニング、ジャンプ、笑いなど、外部からの圧力を吸収し、背骨やその他の臓器を守ります。

理学療法博士のミシェル・ウィークス氏は、「骨盤底筋は体幹の約4分の1を構成し、常に活発に働く筋肉群です。この筋肉群は完全に休むことはなく、失禁を防ぐために働いています」と述べています。

さらに、ウィークス氏によれば、骨盤底筋は腹筋、横隔膜(呼吸筋)、深層背筋と連携して機能しています。「体幹の目標は、内部に存在するすべてのものに対して一定の圧力を維持することです。血管や臓器は過剰な圧力を嫌います」と説明しています。

理学療法士で骨盤底筋運動や失禁研究の専門家であるカリ・ボー教授は、「膀胱、子宮、直腸などの内臓を支えるだけでなく、腹部内の圧力による膀胱や直腸の漏れを防ぐ役割も骨盤底筋が担っています」と語っています。

 

男女の骨盤底筋の違い

男性と女性では、骨盤底筋にも違いがあります。

ボー教授によると、男性の骨盤は女性よりも狭く、開口部は2つ(尿道と肛門)しかありません。一方、女性は3つの開口部(尿道、肛門、膣)を持ちます。また、女性にとって妊娠や出産は骨盤底筋に大きな影響を与える要因です。

骨盤底の健康の重要性
男性と女性の骨盤底(Shutterstock)

妊娠中、ホルモンの影響や赤ちゃんの体重によって骨盤底筋は伸び広がります。これは出産に必要な変化ですが、骨盤底筋や会陰部(膣と肛門の間)にダメージを与え、問題を引き起こす可能性があります。

一方、男性の場合、尿道が長く、前立腺が尿漏れを防ぐ役割を果たしています。しかし、加齢とともに別の問題が生じるとボー教授は指摘しています。

「前立腺が成長すると、男性は排尿が難しくなったり、尿の流れが弱くなったりすることがあります。一方で、女性は加齢とともに尿漏れしやすくなる傾向があります」と彼女は述べています。

 

 

骨盤底筋の問題

骨盤底筋の問題は、妊娠や出産、子宮摘出などの手術、肥満、慢性的な便秘、重い物を持ち上げること、そして慢性的な咳など、さまざまな要因によって引き起こされます。これらの要因は骨盤底筋や靭帯に過剰な圧力をかけ、問題を生じさせる可能性があります。

ウィークス氏は、スポーツによるけがや交通事故、身体的な外傷だけでなく、感情的なトラウマも骨盤底筋やその機能に影響を与えると指摘しています。

「骨盤底筋の問題は、筋肉が弱くなりすぎた場合、または逆に筋肉が固くなりすぎてリラックスできず、正常な可動域を保てなくなったときに発生します」とウィークス氏は説明しています。

骨盤底筋の問題は、女性と男性で異なることもあります。

 

骨盤問題の範囲

尿失禁(UI)は非常に一般的な問題で、アメリカでは約1300万人が影響を受けているとされています。

StatPearlsによると、尿失禁の発生率は女性が男性の2倍であり、以下の5つのタイプがあります。

腹圧性尿失禁

切迫性尿失禁

混合性尿失禁

溢流性尿失禁

機能性尿失禁

また、著者たちは、妊娠、出産、糖尿病、高いBMI(体格指数)が尿失禁のリスクを高める要因であると述べています。

 

尿失禁の種類

尿失禁の中でも最も一般的な問題の一つは、さまざまな活動中に起こる不随意の尿漏れです。ウィークス氏によると、咳やジャンプ、くしゃみ、子供を抱き上げるときなどに起こる尿漏れは「腹圧性尿失禁(SUI)」と呼ばれます。SUIは、これらの活動が骨盤底筋に過度の圧力をかけることで尿漏れが生じます。

SUIは特に出産後の女性や高齢者に多く見られます。StatPearlsによると、30歳以上の女性の24~45%が腹圧性尿失禁を経験しています。

ウィークス氏は、「SUIは女性に多いものの、男性にも一般的になる場合があります」と述べています。特に、前立腺がんの治療で前立腺を摘出した後、男性も腹圧性尿失禁に悩むことが多いとのことです。そのため、手術で影響を受けた筋肉を再び活性化させるためのリハビリが必要になる場合があります。

ボー教授によれば、骨盤底筋の問題を抱える人に多いもう一つの尿失禁の種類は「切迫性尿失禁(UUI)」です。UUIは、尿意を感じる前に不随意の尿漏れが起こる状態を指します。この状態では、トイレに間に合わないことがよくあります。

アメリカにおけるUUIの発生率は以下の通りです。

女性の22%

40〜44歳の女性の9%

75歳以上の女性の31%

75歳以上の男性の42%

 

骨盤臓器脱のリスク

骨盤底筋が弱くなると、いろいろな問題が起こります。性交時の痛み、便秘、下痢、腰痛、勃起不全、そして「骨盤臓器脱」と呼ばれる状態です。これは、子宮や膀胱、腸といった骨盤の中にある臓器が本来の位置からずれてしまい、膣や直腸に下がり込んだり、外に出てきたりすることを指します。

この問題は男女ともに起こることがありますが、特に女性に多く見られます。命に関わるものではありませんが、痛みや不快感が伴い、日常生活に支障をきたすことがあります。

予防と治療

良いニュースは、多くの骨盤臓器脱の問題は手術をしなくても改善できるということです。

ウィークス氏は、骨盤底筋の問題を専門にする「骨盤底理学療法士」や「骨盤底作業療法士」という専門家がいると説明しています。「一般のトレーナーによるプログラムも役に立つことがありますが、骨盤の健康に詳しい理学療法士や作業療法士は、より深い知識と経験を持っています」と述べています。

 

骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋の問題を改善するために、「骨盤底筋トレーニング(PFMT)」という運動があります。これは骨盤底筋を強くするためのエクササイズです。

PFMTは、特に腹圧性尿失禁(SUI)と呼ばれる、くしゃみや笑ったときに尿が漏れる問題を抱える女性に広く使われています。また、前立腺手術後に起こる男性の尿失禁や、便失禁などにも効果があります。

ボー教授によると、「PFMTは尿失禁や骨盤臓器脱(POP)の最初の治療法として国際的に認められており、その効果は信頼できる研究で証明されています」もし3か月間しっかりとPFMTを行っても改善が見られなければ、手術が選択肢になることもあります。

膀胱トレーニング

もう一つの治療法として「膀胱トレーニング」があります。これは、膀胱にもっと多くの尿を溜められるように訓練し、トイレに行く回数を減らす方法です。

ペッサリー

骨盤臓器脱の治療には、「ペッサリー」という装置が使われることがあります。ペッサリーは、小さな器具を膣の中に入れて、脱出した臓器を支えるものです。いろいろな形やサイズがあり、医師や専門家が最適なものを選びます。

特別な訓練を受けた骨盤底筋療法士もペッサリーを装着できます。ウィークス氏は、「ペッサリーを使うことで、時間をかけて組織が回復し、脱出症が改善する例もあります」と話しています。

 

骨盤底筋の健康を改善するために

もし、尿漏れや骨盤周りの違和感などの症状で悩んでいるなら、生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

ウィークス氏によると、栄養バランスの良い食事を摂り、水分をしっかり補給し、ストレスをうまくコントロールすることが大切です。また、自分が楽しめる運動を取り入れ、無理なく排便できるようにすることも、骨盤底筋の健康を守るポイントです。日常生活の中で、自分の体のサインに注意を払いましょう。

「空腹感や喉の渇きを感じたら無視せず、しっかりと休息を取り、ストレスをためないようにすることが、骨盤底筋を健康に保つために役立ちます」とウィークス氏は言います。

また、ボー教授は、トイレで力みすぎたり、体に余計な負担をかけることを避けることが重要だと述べています。体重管理も骨盤底筋の健康を守る助けになります。

 

もし症状を感じたら

骨盤底筋の健康に不安がある場合や症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。理学療法士や作業療法士などの専門家に相談することで、適切なアドバイスや治療を受けられます。近くに専門家がいなくても、一部のクリニックや療法士はオンライン相談にも対応しています。

ウィークス氏は、「腹圧性尿失禁は非常に一般的ですが、多くの場合、適切な治療を受ければ簡単に改善できます」と話しています。しかし、多くの人がこの問題を恥ずかしく感じ、我慢してしまうことが多いのが現実です。

「骨盤底筋の問題について話すのは、まだタブー視されがちです。男女問わず、多くの人が症状を隠し、助けを求めることに抵抗を感じています」とボー教授は指摘します。

しかし、こうした問題は適切な治療を受ければ改善することが多く、手術が必要な場合でも他の効果的な治療法があります。何よりも重要なのは、我慢する必要はないということです。骨盤底筋の問題は多くの人が経験しており、あなたも支援を受ける権利があります。困っているなら、専門家のサポートを受けましょう。

(翻訳編集 華山律)

AP
D.Ac
鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。