腰痛を減らすには、快適な靴を履いて毎日歩くだけで十分かもしれません。
ノルウェーの研究者は、1日あたり100分歩くことで、歩行速度に関係なく慢性腰痛のリスクを約4分の1低減できることを発見しました。
歩行時間の重要性
6月に『JAMA Open Network』で発表された研究で、ノルウェー科学技術大学の研究者は、4年間にわたり1万1,000人以上の成人を追跡した「ノルウェー・トロンデラーグ健康調査」のデータを分析しました。
その結果、1日78〜100分歩く人は78分未満の人に比べて慢性腰痛のリスクが13%低く、125分以上歩く人では23%低減しました。
「最も重要なのは『歩く量』です」と、メドブリッジの臨床プログラムディレクターで理学療法士のジョン・アイド=ドン(Jon Ide-Don)氏は『エポックタイムズ』に語りました。「速度や心拍数を気にする必要はありません。ドアを開けて歩き始めたり、トレッドミルを使ったり、身近な方法で始めてみてください」
速度も役立ちますが、歩行時間ほどではありません。研究では速歩にも保護効果が見られましたが、時間と速度を同時に分析すると、歩行時間が主な要因であり、速歩による追加の効果はほとんど消えました。
時速約3.2kmの軽い散歩に比べ、時速約4.8kmではリスクが15%低下し、時速約5.6〜6.4kmの速歩でも同程度の保護効果が確認されました。
「1日を通して複数回の短い散歩でも、1回の長い散歩でも、合計の歩行時間が慢性腰痛の予防と改善の鍵です」とアイド=ドン氏は述べています。
効果は1日100分ほどで頭打ちになりますが、それ以上歩くことも一定の効果があり、100分が腰痛予防の「スイートスポット」と言えます。
痛みや慢性疾患、体重指数(BMI)を考慮しても歩行の保護効果は残っており(やや弱まるものの)、健康な人ほど多く歩くことによる恩恵が示唆されています。
歩行が腰にもたらすメリット
歩行は単なる良い運動というだけでなく、脊椎に対して特に治療的な効果があります。以下の点がその理由です。
身体的な効果
歩行は体幹や姿勢筋を強化し、脊椎組織への血流を改善します。また、長時間座ることで生じる硬直を防ぎ、体重管理によって脊椎への圧力を軽減します。
「運動はさまざまな方法で腰痛のリスクを減らします」と、フィットネス・ウェルネスブランドの健康ライターで理学療法士のギャビン・ウィリアムズ氏はエポックタイムズに語りました。「循環を促進し、筋肉量を維持し、健康な神経筋システムを支え、靭帯や腱を柔軟に保つのです」
神経のリセット
歩行は神経系を「リセット」し、損傷がなくても痛み信号を過剰に発する敏感な脳や脊髄を落ち着かせます。また、身体に「運動は安全だ」と再認識させ、長時間の座り姿勢を中断する効果もあります、とアイド=ドン氏は述べています。
気分と痛みの緩和
他の有酸素運動と同様に、歩行はエンドルフィン(自然の「気分を高める」ホルモン)を分泌し、気分を向上させ、痛みを和らげます。
座りすぎの問題
アイド=ドン氏は、1日を通した継続的な運動の重要性を強調しています。座ること自体が悪いわけではありませんが、4〜5時間連続、または合計で12時間以上座っている場合は、途中で体を動かすことが必要です。
「座位は立位や仰向けよりも脊椎に最も大きな負荷をかけるため、長時間座ることが腰痛の大きなリスク要因なのです」とウィリアムズ氏は補足しました。
長時間座ることは、肥満、糖尿病、心臓疾患、がんなどとも関連があります。
2024年に行われたUKバイオバンク研究(36万5,000人以上を対象)では、1日1時間の座り時間を身体活動に置き換えるだけで、腰痛リスクが2〜8%低減することが示されました。
また、2019年のコホート研究レビューでは、活動的な人(活動の分散に関係なく)は腰痛リスクが約10%低いことが分かりました。
これらの証拠から、どんな運動でも一定の効果があり、十分な時間と適度な強度を組み合わせることで最大の健康効果が得られると考えられます。そのため、公衆衛生ガイドラインでも週150分の中強度運動が推奨されているのです。
100分歩行の実践Tips
1日100分を達成する鍵は、歩行を日常のルーチンに自然に組み込むことです。研究では、食後の散歩や移動中の電話、短距離の車利用を徒歩に置き換えるなど、既存の行動に結びつけることで習慣化しやすいことが示されています。
アイド=ドン氏は、「まずは多くの日で確実に達成できる目標から始めること」を勧めています。「たとえば1日2回、15分の歩行を80〜90%の確信で実行できるなら、それは素晴らしいスタートです」と述べました。
習慣化のためのポイント:
- 事前計画:いつ、どこを歩くかを決め、予想される障害を考え、代替案も用意しておきましょう。
- 合図とリマインダー:靴をドアのそばに置いたり、カレンダーでアラートを設定したり、朝食後に歩くなど既存の習慣と結びつけて自動化すると効果的です。
- 進捗の記録:歩数計やウォーキングアプリ、シンプルなチェックリストで進捗を確認すると、モチベーションの維持に役立ちます。
「小さな機械的な不均衡でも、長期的にはケガのリスクを高めます」とウィリアムズ氏は述べています。 正しい姿勢と快適さに注意し、体幹強化やバランス訓練、インソールの使用などを取り入れることで、より効率的で疲れにくい歩行が可能になります。
特に歩行量を増やすときには、これらを意識することが推奨されます。
すでに腰痛がある場合
穏やかな歩行は、腰痛のある人にも通常は安全で、推奨されています。
腰痛の人が運動を避けてしまうのは理解できます。
「どんな運動も痛みを引き起こすと感じ、動くことを控えてしまう人が多いのです」とアイド=ドン氏は述べました。
急性の痛みがある時期に一時的に運動を避けるのは有効ですが、数日経って症状が落ち着いたら、再び体を動かし始めることが大切です。
アイデ・ドン氏とウィリアムズ氏によると、腰痛のある人の歩行に関するガイドラインは次のとおりです。
- 症状が大きく悪化しない範囲で、一貫して実行できるレベルを見つける。
- 痛みの強さが基準より10段階中3以上増えないようにする。
- 通常の歩行がつらい場合は、プールでの歩行、水泳、または固定式自転車の使用を検討する。
- 筋肉のけいれん(腰痛の一般的な症状)を和らげるために、温熱療法や冷却療法を併用する。
「歩行は、恐怖や不安を感じにくく、腰に穏やかに運動を再導入できる方法です」とアイド=ドン氏は述べました。慢性腰痛に対する「ゴールドスタンダード治療」である包括的なリハビリ戦略にも、理想的に組み込むことができます。
(翻訳編集 日比野真吾)
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