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結腸がん予防に期待! カルシウムがもたらす驚きの効果

結腸がんの発生率は、北米やヨーロッパの大半の高所得国では高く、アフリカや南アジアの低所得国では低くなっています。 さらに、低所得国から高所得国へ移住すると、結腸直腸がんの発生率が移住先の発生率に近づくことが分かっています。 これは、環境要因ががんの発生に影響していることを示唆しています。 特に、カルシウムを多く含む食事はリスクを低減させることが研究で明らかになっています。

この研究では、カルシウムサプリメントが同様の効果をもたらすかどうかを評価していませんが、過去の研究では、特に大量摂取の場合、健康に悪影響を及ぼす可能性を指摘しています。一方、カルシウムを多く含む食品を摂取することは、その他の健康効果にも関連しています。

カルシウムが保護する可能性

Nature Communications誌に掲載されたこの研究では、研究者たちは、50万人以上の女性を対象に、平均16年間にわたって大腸がんのリスクに対する97の食事要因の影響を調査しました。

データ分析の結果、牛乳やヨーグルトなどの乳製品(ただしチーズやアイスクリームは除く)は結腸がんの予防に役立つことを示し、その効果のすべてまたは大部分がカルシウムによるものであることが分かりました。この結果に基づき、牛乳をコップ1杯飲むことで、300ミリグラムのカルシウムを余分に摂取すると、結腸がんの可能性を14%低減させることが分かりました。緑黄色野菜などの乳製品以外のカルシウム源からの摂取も、同様に予防効果を示しました。

「これは、食事と腸がんの関係についてこれまでに行われた研究の中で最も包括的なものであり、この病気の発症におけるカルシウムの潜在的な保護的役割を明らかにしています」と、この研究の主任研究員であるケレン・パピエ(Keren Papier)氏は、Cancer Research UKに語りました。

また、カルシウムの摂取量を増やすことが万人に推奨されるかは、さらなる研究が必要であると述べています。

この研究は女性のみを対象としたものですが、Garage Gym Reviewsのフィットネスおよび栄養アドバイザーであるクリス・モア(Chris Mohr)氏によると、この結果は男性にも当てはまるはずだと言います。

「男女ともに消化器官は同じであり、大腸がんのリスク要因も同様です。食事による影響も同様であり、カルシウムが保護効果をもたらすメカニズムは性別に関係ありません」と、同氏は本紙に電子メールで回答しました。

 

なぜ食事性カルシウムが保護効果をもたらす可能性があるのか

「カルシウムがこのような効果をもたらす理由については、ある程度分かっています。カルシウムは胆汁酸や遊離脂肪酸と結合して無害な『石鹸』のような物質を形成し、腸の粘膜を傷つけるのを防ぐことで、大腸がんを予防できるのです」と、パピエ氏は声明で述べています。この石鹸は胆汁や脂肪酸の蓄積を除去する浄化作用があり、それによって害を引き起こす可能性は低くなるのです。

上記の間接的な効果に加え、カルシウムには結腸組織を直接的に保護する効果もあるかもしれません。研究者たちは、結腸における突然変異やその他の有害な変化を減らし、がんにつながる可能性を低減させる研究を引用しています。

「食事から摂取するカルシウムによるその他の保護効果としては、ヨーグルトなどの発酵乳製品によって腸内微生物の構成を改善し、結腸の健康を増進させると考えられます。ケールやブロッコリーなどの乳製品以外のカルシウム源は、抗酸化物質や食物繊維も摂取でき、それらの栄養素もまた、がんリスクをさらに低減させるでしょう」とモア氏は述べました。

同氏は、栄養価の高いさまざまな食品を摂取が、結腸がんやその他の種類のがん、および健康への悪影響のリスクを低減する鍵であると述べています。

 

食事からのカルシウム摂取とカルシウムサプリメント

カルシウムを多く含む食品が有効であるならば、カルシウムサプリメントも有効ではないかという疑問が生じます。

Nutrients誌に掲載された系統的レビューによると、カルシウムサプリメントは、カルシウムを多く含む食品とは逆に、結腸がんに悪影響を与えることを示唆しています。著者たちは、1日1200ミリグラムのサプリメント摂取が結腸がんの予防に悪影響を与えることを発見しました。これは特に女性と長期喫煙者に顕著に見られました。

WOWMDの登録栄養士でダイエットコンサルタントのキャサリン・ガーバシオ(Catherine Gervacio)氏によると、カルシウムサプリメントは、他にもいくつかの理由から摂取を避けるべきだと言います。その理由には、カルシウムの吸収率が速いことや、カルシウムが腎臓結石を引き起こしやすいことが挙げられます。

「食品から摂取したカルシウムは、サプリメントから摂取したカルシウムよりもゆっくりと吸収されます」と、彼女は本紙に電子メールで回答しました。「サプリメントの場合、カルシウムは大量に素早く血流に放出されます。カルシウム濃度が急激に上昇すると、腎臓に負担がかかったり、血管内にカルシウムが沈着し、腎結石や心臓病のリスクが高まる可能性があります。

実際、2014年に『Translational Andrology and Urology』誌に掲載された研究論文によると、食事とは別に大量のカルシウムサプリメントを摂取すると、腎結石の形成が高いことが分かりました。『Nutrients』誌に掲載されたメタ分析では、1日1千ミリグラムのカルシウムサプリメントを摂取すると、心臓病のリスクが高まると指摘しています。

カルシウムは自然食品から摂取する方が望ましく、健康的な食事に追加すれば、慢性疾患の予防に役立つ抗酸化物質やその他の有益な化合物が含まれているため、1日に必要なミネラルも十分に摂取できます。

「乳製品以外の食品から摂取するカルシウムには限界があります」と、カリフォルニア・バプティスト大学の統合栄養学修士課程の栄養学助教授であり、プログラムディレクターを務めるナタリー・リード(Natalie Reed)氏は語ります。

「これらの食品には、カルシウムの吸収に必要なビタミンDが不足しています」と、リード氏は本紙に電子メールで述べました。ビタミンDは、日光浴や強化乳製品の摂取によって得られるものです。つまり、カルシウム摂取を乳製品以外の食品だけに頼っている人は、十分な日光浴を心がけるべきだということです。

「経験上、特にカルシウムを多く日常的に摂取している人は、サプリメントでカルシウムを過剰摂取していることが多い。長期間にわたって過剰なカルシウムを摂取すると、副作用のリスクが高まります。食品の場合、食欲や食事のバラエティによって摂取量が制限されるため、そのような過剰摂取にはなりにくいのです」とガーバシオ氏は警告しています。

リード氏はこれに同意し、過剰なカルシウムの補給はカルシウム中毒につながる可能性があることを消費者は認識するよう促しました。

成人男女の食事摂取基準は1日1千ミリグラムです。カルシウムのサプリメントは不足している場合には摂取すべきですが、その必要性は検査値の異常による場合が多く、主治医の指示に従う必要があります。しかし、栄養士による食事での推奨は、カルシウムだけでなく、不足している栄養素の経口摂取量を増やすのに役立ちます。例えば、大きなグラス3杯の牛乳には900ミリグラムのカルシウムが含まれますが、食事に加えれば1日に必要なミネラルを十分に摂取することができます。

食事から十分な量のカルシウムを摂取できず、カルシウムのサプリメントを摂取する場合、アメリカ国立衛生研究所では、食事と一緒に摂取し、1回に500ミリグラム以下の量にとどめるよう勧めています。 また、サプリメントは一部の医薬品と相互作用を起こすため、市販薬や処方薬との関係でサプリメントを摂取するタイミングについて医師に確認する必要があります。

 

食事から摂取するカルシウムのその他の健康効果

カルシウムを豊富に含む健康的な食品には、他にも健康効果があります。

「カルシウムは骨や歯の成長と健康に不可欠です。くる病(子供の骨が弱くなる病気)、骨軟化症(骨が柔らかくなる病気)、骨減少症(骨密度が低下する病気)などの骨の疾患から体を守るには、十分なカルシウムが必要です。妊娠中から、母親の体は胎児の骨の成長のために十分なカルシウムの摂取を必要とします」とリード氏は言います。 彼女の主張は、骨の強度を高めるために乳製品や乳製品以外のカルシウム食品を食事に取り入れるよう勧める保健当局の推奨事項と一致しています。

モーア氏によると、牛乳やヨーグルトなどの乳製品から摂取するカルシウムは、体重管理を促進します。また、カルシウム食品は、カリウムやマグネシウムなどの独自の栄養素を含むため、血圧を下げる効果も期待できます。

分子科学国際ジャーナルに掲載されたレビュー論文では、食事から摂取するカルシウムには抗肥満効果があり、その理由は脂肪代謝の調整、あるいは脂肪吸収の減少と脂肪排泄の増加によるものだろうと示唆しています。

Nutrientsに掲載された研究論文では、カルシウム食品を定期的に摂取することで、ビタミンD欠乏症ではない人々において高血圧の予防と治療に役立つ可能性があることが分かりました。

「野菜をベースとしたカルシウム豊富な食品は食物繊維を多く含んでいます。食物繊維の大腸がんリスク低減における重要な役割はさておき、食物繊維は消化しない物質であることが多く、消化の過程で腸壁を強化します。食物繊維は腸内細菌に栄養を与えるプレバイオティクスでもあり、腸の健康を最適に保つために必要です」とリード氏は言います。
 

(翻訳編集 呉安誠)

Mary West
フリーランスライター。ルイジアナ大学モンロー校で2つの理学士号を取得。