概要:あなたの腸内にいる小さな住人たちが、骨の強さを左右するかもしれません。研究によれば、健康な腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は栄養素の吸収効率を高め、炎症を抑制することで、骨粗しょう症の予防に役立つ可能性があります。発酵食品やプロバイオティクス(善玉菌)を取り入れて腸内環境を整えることが、実は骨の健康を守るための「秘密兵器」になるかもしれません。食事と生活習慣を見直すことで、骨をより丈夫に、健康に保つことができるのです。
腸内環境の乱れ:骨の健康を脅かす見えないリスク
腸内環境が乱れていても、日常的にその影響を実感することはあまりありません。しかし実は、その乱れがあなたの骨の健康に影響を与えているかもしれないのです。
「腸―骨―免疫軸というものは実際に存在しており、骨の健康は全身のバランスと切っても切れない関係にあります」と、自然療法医でありRevital Healthの創設者であるジョディ・デュヴァル氏はエポックタイムズに語っています。
腸内の健康が損なわれると、カルシウムやマグネシウムといった、骨に不可欠な栄養素の吸収が妨げられ、知らず知らずのうちに骨が弱くなってしまいます。そのため、マイクロバイオームを整える食事療法やプロバイオティクス(善玉菌)などを用いた対策が、骨粗しょう症の予防や改善を目指す新たなアプローチとして注目されています。
腸内細菌はどうやって骨の強さに影響するのか?
腸内細菌は、目には見えない「骨の守り手」として、骨の健康をさまざまな方法で支えています。具体的には、炎症を抑える、栄養素の吸収を高める、そして骨の形成に不可欠な化合物を生成するなどの役割を担っています。健康な腸内細菌は、カルシウム、マグネシウム、リン、ビタミンD、ビタミンK2といった骨の構築に重要な栄養素の吸収を助けます。
特定の腸内細菌は、これらの栄養素を腸でよりよく溶解・吸収できるようにします。登録栄養士のテレサ・ジェンティル氏はエポックタイムズの取材で、一部の細菌がカルシウムと結合するたんぱく質を作り、カルシウムを骨などの重要な場所へ効率的に運ぶ働きがあることを紹介しています。
一方で、腸内細菌のバランスが崩れると、骨密度の低下につながるおそれがあります。具体的には、腸内膜の機能が損なわれ、有害物質が血液中に入りやすくなり、全身性の炎症を引き起こします。この炎症が、骨の分解を促進し、新たな骨の形成とのバランスを崩すのです。長期的には、これが骨量の減少や骨粗しょう症の原因となります。炎症は骨のミネラル密度を下げ、骨の喪失を加速させます。
通常、骨が分解される過程ではカルシウムや成長因子が放出され、これらは免疫反応や組織の修復に役立ちますが、炎症があると新しい骨の生成は後回しにされます。新しい骨を作るには多くのエネルギーが必要だからです。また、炎症は腸内膜にも悪影響を与え、栄養の吸収を妨げたり腸内細菌のバランスを崩したりすることがあります。これらはいずれも骨の健康に深く関わっています。
ジョディ・デュヴァル氏は、「腸内細菌の多様性が高いほど、骨を守る力が強いようです」と述べています。中にはビタミンKなど、骨の代謝に関わる重要な化合物を生成する細菌も存在し、これが骨の形成を助け、分解を抑える働きにもつながります。
また、腸内細菌はホルモンの調整にも関与しており、特にセロトニン(血清素)の生成に重要な役割を果たしています。一般的にセロトニンは「幸せホルモン」として知られていますが、実はその約95%が腸で作られています。この腸由来の血清素は骨細胞に直接影響を及ぼし、破骨細胞(骨を分解する細胞)の活性を高めて骨の分解を促進し、逆に骨を作る成骨細胞の働きも調整します。また、セロトニンは全身の炎症を抑える働きもあり、間接的に骨を守る効果もあります。
これらの発見は、腸内細菌が骨の健康に与える大きな影響を明らかにし、今後の骨粗しょう症の予防や治療の新たな方向性を示しています。
健康な「腸-骨同盟」を築くには?
強い骨は、健やかな腸から始まります──そして、そのカギを握るのが「食事」です。「まさに薬食同源の実践ですね」と、ジョディ・デュヴァル氏は語ります。以下は、腸と骨の両方の健康を促進するための、実用的な食事と生活習慣の提案です。
食事のポイント:腸と骨を同時に育てる栄養術
デュヴァル氏は、腸内の善玉菌を育てるために、多様で栄養価の高い食事を推奨しています。これは骨の健康の土台をしっかり築くことにもつながります。以下は、腸内環境と骨の両方に良いとされる具体的な食材・栄養素です。
- 高繊維のホールフード:野菜、豆類、玉ねぎ、にんにく、レジスタントスターチ(オートミールなど)は、プレバイオティクス繊維が豊富で、腸内の善玉菌を増やし、カルシウムの吸収を助けます。
- 発酵食品:ザワークラウト、ケフィア(発酵乳)、味噌などは有益な微生物を補い、腸内の炎症を軽減し、間接的に骨を守ります。
- コラーゲンを含む食品:ボーンブロス(骨のだし)や、グリシン・プロリンを含む食品は腸粘膜の修復を助け、骨の構造も強化します。
- ビタミンK2を含む食品:納豆、グラスフェッド乳製品、卵黄などはカルシウムを骨へと正しく運び、血管などへの沈着を防ぎます。
- ポリフェノールが豊富な植物性食品:ベリー類、ハーブ、オリーブオイル、緑茶などは抗酸化作用があり、腸内細菌の多様性を高めてくれます。
- 低糖・非加工食品の摂取:糖分、アルコール、超加工食品の摂取を控えることで、腸内細菌のバランスが守られ、栄養の吸収効率も向上します。
栄養士のテレサ・ジェンティル氏も、腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸がカルシウム吸収を高めると述べており、乳製品、豆腐、葉物野菜などは優れたカルシウム源だとしています。ビタミンD(サーモン、卵黄など)もカルシウムの吸収と免疫調整に重要で、腸内細菌の状態がその活性にも関与する可能性があります。また、マグネシウムやリンは骨のミネラル化に不可欠で、ナッツ、種子類、豆類、葉物野菜、乳製品などから摂取できます。バランスの取れた低糖質の食生活こそが、腸と骨の両方を守る最も効果的な手段です。
プレバイオティクスとプロバイオティクス:腸の「健康補給」
「合生元(シンバイオティクス)」とは、プロバイオティクス(善玉菌として働く生きた微生物)と、プレバイオティクス(善玉菌の成長を促す食物繊維など消化されない成分)を組み合わせたものです。これにより、消化機能が改善されるだけでなく、免疫機能も調整され、骨粗しょう症の予防と改善に役立つ強力なサポートとなります。
たとえば、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)というプロバイオティクスは、免疫防御を担う細胞を強化し、炎症を抑えることで、骨の減少を防ぐ作用があるとされています。
また、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、炎症性マーカーを低下させ、骨の形成に必要な化合物の生成を促進することで、骨の健康をより強化します。
その他のライフスタイル習慣:骨を総合的に守るために
「薬は腸の『見えない敵』になる可能性があります」とジョディ・デュヴァル氏は警告します。たとえば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗生物質、ステロイド薬などは、腸内細菌のバランスを乱し、長期的には骨密度の低下につながる恐れがあります。ただし、薬の使用を見直す際は必ず医師に相談し、自己判断で中止しないことが大切です。
(翻訳編集 華山律)
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