耳は人体の縮図とも言われており、耳をもむことで内臓の働きを整え、全身のエネルギーの流れを良くすることができます。台湾・宜陞(ぎしょう)中医診所の院長である呉宏乾氏は、新唐人テレビの番組『健康1+1』で、正しい耳もみの方法を紹介しました。毎日わずか3〜5分間行うだけで、全身の健康ポテンシャルを呼び覚ますことができるといいます。
なぜ耳もみが健康に良いのか?
乾隆帝は中国史上で最も長寿だった皇帝で、在位期間は60年、享年89歳でした。その健康長寿の秘訣のひとつが、耳をもむことだったといいます。呉宏乾氏の説明によると、耳は「諸脈の宗(中心)」であり、全身のエネルギーの通り道が耳とつながっているため、耳をマッサージすることは全身の経絡を刺激することになり、気血の循環が良くなり、免疫力も高まるのです。
また呉氏は、中医学の考え方では「腎は耳に開く」とされており、耳のマッサージは腎臓を刺激することにもなると述べています。中医学における「腎」は、西洋医学でいう解剖学的な腎臓の二つの臓器だけでなく、骨や骨髄、耳、瞳孔、泌尿生殖系(膀胱、尿道、尿管、腎臓)、さらには性機能や性器も含むエネルギーシステム全体を指します。
耳は病気の兆候を映す鏡
耳は全身の各臓器と密接につながっているため、耳の様子を観察することで体の健康状態を知ることができます。以下はいくつかの例です:
1. 耳鳴り溝
耳が老化していたり耳鳴りのある人は、耳たぶの下に横線が現れます。これを「耳鳴り溝」と呼びます。

2. 降圧溝
耳の後ろ側にある溝は「降圧溝」と呼ばれます。高血圧の人は、この降圧溝の部分に2~3本の黒い血管が見えることが多く、この部位を押すことで高血圧の治療にも用いられます。また、血管の色を観察することで高血圧を早期に発見できる可能性もあります。

3. 不整脈溝
耳たぶにほぼ垂直に入ったシワがあり、これは「不整脈溝」と呼ばれます。他にも「冠心溝」「緊張溝」「ストレス溝」とも言われ、長期間ストレスにさらされたり、不整脈や心臓病がある人に見られることが多いです。

4. 腰椎のサイン
耳の中上部には腰椎に対応する部位があります。腰椎に問題がある人は、この部分に黒ずみや凸凹が見られることがあります。

耳は体の各部位に対応している
耳は逆さまの胎児のような形をしており、人体の縮図とも言われます。呉宏乾氏によると、耳と身体には以下のような対応関係があります:
頭部・顔面部: 耳たぶの位置に対応します。
胸腔(心臓・肺): 耳の中のくぼみ「耳甲腔」に対応します。心臓と肺もこのあたりに該当します。
腹腔: 耳の上部のくぼみ「耳甲艇」に対応します。
骨盤腔: 耳の上部にある小さなくぼみ「三角窩」に対応します。
脊椎: 耳の外縁の一部「対耳輪」に対応します。
手: 耳の縁と内側の間「耳舟」の部分に対応します。
足: 対耳輪の上端と下端の部分にそれぞれ対応します。
よくある症状に対する耳ツボ療法
1. 不眠症
不眠症の治療には、耳の肝区、心区、耳神門(じしんもん)といったツボをマッサージすると効果があります。これらはそれぞれ耳甲艇、耳甲腔、三角窩の部位に位置しています。
ドイツのある臨床試験では、不眠症状のある乳がん患者が5週間にわたり耳鍼治療を受けた結果、不眠・不安・疲労が大幅に改善し、その効果は4か月以上持続したことが報告されています。
呉宏乾氏は、耳鍼による耳ツボの刺激は医師や鍼灸師が行うべきだと注意を促しています。日常的に健康維持を目的とする場合は、医師にお願いして「王不留行(おうふるぎょう)」という植物の種を安眠に効くツボに貼ってもらい、寝る前にやさしくマッサージすると良いそうです。王不留行の種は大きさがちょうどよく、皮膚への刺激も少ないため、耳ツボへの使用に適しています。
2. ダイエット
食欲を抑えるためには、「飢点」や「渇点」といったツボが有効です。肺点は耳に分布する迷走神経と関係があり、依存症的な欲求を抑える働きがあります。神門は精神を安定させ、感情の問題を整える効果もあります。これらの主要ツボに加え、臀部や腰部に対応するツボも一緒にマッサージすることで、より明確な効果が期待できます。
呉氏は、簡単にできる方法として、人差し指を耳の中に入れて耳屏(じひょう)を外に押し出し、親指でこすりながら飢点と渇点をマッサージする方法を紹介しています。
2024年のある総説研究によると、耳ツボへの鍼やマッサージは体重減少に効果があり、特に耳にビーズを貼って自分でマッサージする方法は、鍼治療より効果が高いとされています。これは、毎日継続してマッサージを行うため、持続的な効果が得られるからと考えられています。
3. 生理痛
中医学では、肝の経絡が生殖器系を通るとされており、耳ツボの肝区をマッサージすることで日常の体調管理としても有効であり、特に生理痛の緩和に顕著な効果が期待できます。
「耳もみ八法」マッサージ法
毎日行える耳のセルフマッサージについて、呉宏乾氏は「耳もみ八法」と呼ばれる手法を紹介しています。そのステップは、前・後・滑・揉・拉・凹・凸・背の八つです。
前・後: まず両手をこすって温め、手のひらを耳の前に当てて前から後ろへと温めるようにマッサージします。次に耳を後ろから前へ折りたたむように動かします。
滑(すべらせる): 耳の上から下へと軽く滑らせるようにマッサージします。手のひら全体で耳を包み込み、ゆっくりと下に滑らせます。
揉(もむ): 最もおすすめされる方法で、親指と人差し指、または親指と中指で耳をつまみ、やさしく揉みます。力を入れすぎないことがポイントです。
拉(ひっぱる): 耳を軽く引っぱります。無理に引っぱらないよう注意が必要です。
凹(へこんだ部分): 耳甲腔、耳甲艇、三角窩などのくぼんだ部分をマッサージします。
凸(でっぱり): 耳たぶ、対耳輪、耳珠などの出っ張った部分をマッサージします。
背: 耳の裏側をマッサージします。
呉氏は、もっとも簡単な方法として、親指や人差し指で耳全体をやさしく揉むだけでもよく、朝晩3~5分ずつ行うと良いと勧めています。マッサージ後には耳がポカポカと温まり、眠気を感じることもあります。これは、耳には安眠に関わるツボがあるためで、特に就寝前に行うのが効果的です。
彼は次のように話しています:「絶対に力を入れて突いたり、無理に引っぱったりしないでください。耳はあなたの大切なペットのように思って、やさしく、丁寧に可愛がってください」
また注意点として、耳を傷つけると細菌感染を起こし、周囲のリンパ節が腫れたり、頭部全体に悪影響を及ぼすこともあります。耳は内臓ともつながっているため、怪我をすると内臓の不調にもつながる恐れがあります。そうした場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
(翻訳編集 華山律)
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