腰痛がある人は、かかりつけ医から鎮痛剤を処方され、理学療法士を紹介され、痛みが続く場合には画像検査を受けることもあります。
しかし、痛みが実際にどこから始まったのかを尋ねた人はいるでしょうか?
「バランス、運動能力、筋力、栄養、ストレス、そして全体的な環境を総合的に見て回復をサポートできます」と、機能医学を専門とする一般開業医インドラ・バラサン(Indra Barathan)博士はエポックタイムズの取材に答えています。
残念ながら、変形性関節症、骨粗鬆症、痛風、サルコペニア、関節リウマチなど多くの筋骨格系疾患に対して、こうした包括的なアプローチは一般的ではありません。これらの疾患は高齢化とともに急速に増加しており、現在、アメリカでは1億2,100万人以上が影響を受けています。深刻な問題が発生する前に、個別化された全身的なサポートへの移行が必要です。
急速な増加
慢性の筋骨格系疾患は現在、世界的に障害の主要な原因となっています。これらの状態は運動能力を低下させるだけでなく、生活の質を損ない、転倒や骨折、入院のリスクを高めます。
2021年には、約6億700万人が変形性関節症を抱えており、これは1990年と比較して137%の増加です。関節リウマチと痛風も、それぞれ125%、150%増加しています。
これらの疾患にかかるコストは非常に高く、たとえば骨粗鬆症による骨折1回の平均治療費は21,800ドルを超えます。
筋骨格系疾患の急増の原因は何でしょうか?
高齢化は、時間の経過とともに筋肉や骨の強さが自然に失われるため、主要な要因です。しかし、それだけではありません。炎症も重要な役割を果たします。特に、慢性的な軽度の炎症、いわゆる「インフラメイジング」は、この退行的なサイクルを促進し、老化プロセスが筋骨格系の衰退とどのように関連しているかを示しています。
「炎症は多くの慢性疾患の根本にあることが多い」とバラサン氏は述べています。
「『-itis(炎)』で終わる多くの病名、たとえば関節炎や腱鞘炎などにその例が見られます」と彼女は語ります。
炎症は、本来はバランスを取り戻すための正常な治癒反応です。しかし、栄養の偏り、ストレス、環境要因などの引き金が継続すると、炎症は慢性化し、持続的な症状や複数の診断につながります。
職場での怪我、不適切な姿勢、物を持ち上げる際の負荷などは、筋骨格系の問題の一般的な直接原因ですが、機能医学—症状だけでなく根本原因に焦点を当てる医療アプローチ—では、さらに深い部分まで探ります。
「ライフスタイルの要因が、筋骨格系の問題を引き起こしやすくしている」とバラサン氏は指摘しています。
たとえば、栄養の偏りや栄養素の不足は、骨や神経を弱める原因になります。長時間座って過ごす生活習慣は、筋力低下やバランス感覚の低下につながります。慢性的なストレスは、睡眠や栄養、運動のパターンを乱し、集中力や協調性、回復力にまで影響を与えると、バラサン氏は述べています。
「従来の医療モデルでは、常に全体像を見ているわけではありません」と彼女は語っています。
効果的なケアへの障壁
認識の高まりや詳細な臨床ガイドラインがあるにもかかわらず、現場で一貫して高品質なケアを提供することは依然として困難です。
スタッフの不足、治療が複雑であるという認識、治療に関する一般的な誤解が、最良の実践と患者が実際に受ける医療との間にあるギャップをさらに広げています。
バラサン氏が指摘するように、即時的な症状だけでなく根本原因にまで目を向けることで、回復がよりうまくいく場合が多くあります。しかし、このような全体的で人間中心のアプローチは、多くの医療現場ではまだ標準とはなっていません。
特に、複数の慢性疾患を抱える高齢者の多剤併用は、状況をさらに複雑にします。骨粗鬆症の治療に用いられるビスフォスフォネートと、利尿剤や制酸剤などとの相互作用は、治療の効果を損なう可能性があります。また、痛みの緩和によく使われる非ステロイド性抗炎症薬は、潰瘍や消化管出血のリスクを高めることがあります。
薬の副作用は、カルシウムなどの栄養素の吸収にも影響を及ぼすことがあります。
「コルチコステロイド、プロトンポンプ阻害剤、利尿剤は、栄養素の吸収を妨げることで骨の健康に悪影響を及ぼす可能性があります」と、シアトルを拠点とする登録栄養士で、栄養・食事学会のスポークスパーソンであるアンジェル・プラネルス(Angel Planells)氏はエポックタイムズに語っています。
予防に焦点を当てたアプローチ
症状ベースの医療には限界があることを踏まえると、予防はより持続可能な道を提供します。多くの筋骨格系疾患は、根本的な問題に早期に対処することで、症状の軽減や進行の遅延が可能です。
「ライフスタイルと栄養は、予防と治療の両方において第一線の戦略として捉えるべきです」とプラネルス氏は述べています。
プラネルス氏によると、実践的でエビデンスに基づく食事の推奨には以下の項目が含まれます:
- カルシウムとビタミンD:骨の強化に不可欠で、低レベルは骨粗鬆症と密接に関係します。カルシウムは乳製品、強化植物性ミルク、葉物野菜などから、ビタミンDは日光やサプリメントから摂取することを目指しましょう。
- タンパク質:特に高齢者において筋肉量を維持するために重要で、摂取不足はサルコペニアのリスクを高めます。体重1kgあたり1.0〜1.2gの摂取が推奨され、赤身肉、卵、乳製品、豆類、豆腐、ナッツ、種子などが良い供給源です。
- オメガ3脂肪酸:抗炎症作用により関節の健康をサポートし、特に関節リウマチの管理に有効とされています。果物、野菜、全粒穀物、魚、ナッツ、オリーブオイルを含む地中海式食事が推奨されます。
- マグネシウム、ビタミンK、リン:骨や筋肉の機能を支え、構造の健全性を保ちます。
- 低ナトリウム・低糖質の飲料:塩分と糖分の摂取を控えることで、カルシウムの喪失を防ぎ、骨密度の維持に貢献します。牛乳や100%果汁など栄養価の高い飲料を選びましょう。
「可能な限り食品から栄養を摂るのが理想的です」とプラネルス氏は述べており、サプリメントではなくホールフードから摂取することが、吸収を高め、食物繊維や有益な植物成分などの追加効果も得られるとしています。
ただし、持病や加齢による変化、食事制限などで十分な栄養が取れない場合には、サプリメントの使用が必要になることもあります。プラネルス氏は、薬と栄養素の相互作用に注意し、サプリメントの使用を始める前に医療提供者に相談するよう推奨しています。
ライフスタイルの改善も同様に重要です。定期的な荷重運動や筋力トレーニングは骨密度の向上、筋力維持、バランスの改善に効果があります。実際、週5時間以上の中〜高強度の運動をしている人は、腰痛や首・肩の痛みを発症するリスクが低くなります。
また、プラネルス氏は喫煙の中止と節度ある飲酒の重要性も強調しています。これらはどちらも栄養吸収や骨の形成を妨げ、骨を弱くする原因となり得ます。
バラサン氏は、血糖値、トリグリセリド、骨密度といった主要な健康指標を測定してベースラインを確認し、経過を追跡することを推奨しています。
「筋骨格系の衰退は避けられないものではありません」とプラネルス氏は述べています。「適切な介入を行うことで、加齢による多くの変化を遅らせたり、逆転させたりすることが可能です」
(翻訳編集 日比野真吾)
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