パソコンにかがみこんだり、スマートフォンを長時間スクロールしたりするなど、電子機器の使用が長引くことに加え、長時間座ったままや猫背といった悪い姿勢が重なることで、頸椎の障害が増加しています。
筋骨格系の専門家である陳超龍(チェン・チャオロン)さんは、頸椎の不調の多くは体幹の筋力不足にあると指摘し、頸椎の健康を促進するための効果的なエクササイズを2つ紹介しています。
陳さんは、台湾の「中医診療所」の院長です。彼は、伝統的な中国の鍼(はり)、推拿(すいな・中国式マッサージ)、筋骨格障害の整形外科的治療を専門としています。
体幹の強さが頸椎の健康のカギ
陳さんによると、かつては農業や漁業で長時間しゃがんで作業することが多かったため、患者は腰や下肢のけがで来院するのが主な目的でした。しかし現代では、電子機器の過剰な使用や悪い姿勢が主な原因となり、頸椎や胸腰椎(背中から腰にかけて)の問題が目立つようになったそうです。
彼は、首の痛みはしばしば腰や骨盤の体幹筋肉と関係していると説明します。これらの筋肉群は、体幹や背骨を支えるために不可欠です。体幹の筋力が不十分だと、手足の動きが鈍るだけでなく、首や肩の健康にも悪影響を及ぼします。
彼の治療法は、まず腰や骨盤の筋肉の緊張をほぐすことから始めます。その後、患者それぞれの痛みの部位に応じて、腕や背中、首の調整を行い、不快感を和らげつつ背骨の健康をサポートします。
頸椎の不快感を和らげる2つのエクササイズ
陳さんは、運動こそが首の痛みを和らげ、頸椎の健康を保つ最良の方法だと強調します。普段あまり動かさない方向に首を伸ばして、筋肉のこわばりをほぐすのがポイントです。
彼が紹介する、首に特化したエクササイズは次の2つです。
1. 「米」首回し
首をあらゆる方向に動かし、漢字「米」の筆順や、星型、アスタリスク「*」の形をなぞるようにします。首の全方向への可動域を高め、深層の筋肉をリラックスさせます。
ステップ1:頭を左に回して、できるだけ下げます。両手を頭の後ろに当て、軽く下に押します。その状態で、頭を上に押し返すように少し抵抗をかけながら5秒間キープし、元に戻します。
ステップ2:右側に切り替えて、ステップ1の動きを繰り返します。
ステップ3:頭を後ろに反らせ、左に回します。5秒間キープしてから元に戻します。
ステップ4:頭を後ろに反らせ、右に回します。5秒間キープしてから元に戻します。
この4つのステップで1セットです。陳さんは、1日4セット行うことをすすめています。
2. 首の引き込み運動
この運動は、頸椎の位置を正し、首の後ろ側の筋肉を強化します。
ステップ1:背筋を伸ばして立ち、あごを引き、首を後ろに引っ込めるようにします。
ステップ2(上級編):タオルやトレーニング用のゴムバンドを頭の後ろに回します。両手で両端を持ち、前方に軽く引っ張って抵抗を作り、筋肉への負荷を高めます。
頸椎を傷めやすい3つの動作
首のこわばりや痛みだけでなく、不健康な頸椎は、手のしびれ、頭痛、耳鳴り、高血圧など、一見関係のないような症状を引き起こすことがあります。陳さんによると、頸椎の不調で頸動脈(けいどうみゃく・脳に血液を送る動脈)が圧迫されると、脳への血流が減り、心臓が刺激されて血圧が上がることがあります。これは「頸椎性高血圧」と呼ばれます。
陳さんが指摘する、日常生活で頸椎に悪影響を与える3つの動作は以下の通りです。
- 首の過伸展(長時間の前傾姿勢): カメが首を伸ばしたような前傾姿勢を長時間続けると、頸椎に過度な負担がかかり、使い過ぎによる損傷のリスクが高まります。
- 首を下げたままの姿勢: 頭を下に向けたままでいると、背中上部の筋肉に負担がかかり、疲労から肩や首の痛みにつながります。目線が正面を向いているときが、首への負担が最も少ないです。
- 肩をすくめる姿勢: 机や椅子の高さが合わないと、手を机に置いたときに肩が上がってしまい、肩や首に余計な負担がかかります。机や椅子の高さを調整し、肩が自然に下がるようにすると負担が減ります。
ネックピローの活用法
陳さんは、正しい首の位置を保つために、U字型のトラベル用ネックピローの使用をすすめています。読書やスマートフォンを使うときは、できるだけ目の高さで持ち、首への負担を減らしましょう。椅子の背もたれが首より高い場合は、ネックピローを背もたれに当てると、首や背中の筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。
良い姿勢を心がけ、簡単なエクササイズを取り入れ、サポートグッズを活用することで、頸椎のトラブルを防ぐことができます。痛みが出る前から、首の健康に気を配りましょう。
(翻訳編集 井田千景)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。