私の友人である40歳のエンジニアが最近、高血圧、頸椎(首の背骨)の歪み、そして頸動脈の狭窄と診断されたと話してくれました。
これは決して珍しいことではありません。
長時間の座り仕事や画面を覗き込む姿勢が原因で姿勢が悪くなり、首や肩の筋肉がこわばってしまいます。この筋肉のこわばりは、単に不快なだけでなく、高血圧や頸椎の歪みといった深刻な健康問題にもつながる可能性があります。
首や肩の筋肉が緊張すると、脳へ血液を送る頸動脈や椎骨動脈(首の骨の中を通る血管)などの重要な血管が圧迫されることがあります。血流が減ると、身体は脳へ十分な酸素や栄養を送るために血圧を上げて補おうとします。
また、首や肩の周囲には、自律神経とつながる神経が多く存在します。慢性的な筋肉の緊張は、交感神経を過剰に刺激し、結果として高血圧が持続する原因となることもあります。
これらの問題に対応するためにストレッチを取り入れることで、緊張が和らぎ、姿勢が改善され、健康的な血圧を保つことができます。また、長時間デスクやパソコン作業をする場合は、40分ごとに一度立ち上がって体を動かす習慣をつけると、姿勢が固定されるのを防ぐことができます。
ここから、その方法をご紹介します。
頸椎を緩めるエクササイズ
首の緊張は、前かがみや下向きの姿勢など、長時間続く悪い姿勢によって引き起こされることが主な原因です。したがって、身体に正しい姿勢を覚えさせることが重要です。
1. あご引きエクササイズ
ステップ1:意識的に首を前方へ最大限に伸ばします。
ステップ2:頸椎を少しずつ後ろへ引き戻し、体の側面から見て首が肩と同じ高さになるように調整します。
※強度を上げる方法:トレーニングチューブ(ゴムバンド)を頭の後ろに巻きつけ、両手で両端を持ちながら、あご引きの動きを繰り返すことで、矯正効果が高まります。
2. 頸椎逆ストレッチ
ステップ1:人差し指で首の骨の両側の一番上の関節部分を優しく押さえます。
ステップ2:頭を後ろに倒して伸ばし、7~10秒キープ。その後、指を一段下の関節に移動させ、同じ動作を繰り返します。
肩関節を緩めるエクササイズ
首や肩の痛みのもう一つの見落とされがちな要因は「肩が上がった姿勢」です。これは机が椅子よりも高すぎる、または肘を机に置く習慣などが原因となります。
また、体幹の筋肉が弱い人は、自然と肩を持ち上げがちで、肩の緊張を悪化させてしまいます。
以下のエクササイズで肩の柔軟性を改善しましょう。
1. 肩すくめ運動
肩を耳に近づけるようにぐっと持ち上げ、7〜10秒キープしてから下ろします。これを10回繰り返します。
2. 肩回し運動
両手を肩に置き、肘を前に10回、後ろに10回回します。
肘を前に回すと、肩甲骨が開くのを感じます。
肘を後ろに回すと、肩甲骨を寄せるような動きになります。
3. ショルダーロール
肩の力を抜いて下げたままにし、片方の肩を前に、もう片方の肩を後ろに回すように交互に動かします。
胸椎を緩めるエクササイズ
猫背や丸まった肩は、首や肩の痛みにも関係します。肩甲骨周りの筋肉を強化し、胸や広背筋を緩めることで改善が期待できます。
以下の運動を試してみましょう。
1. 「YTWL」トレーニング
背筋を伸ばして座り、両腕を「Y」の形に上げ、親指を後ろに向けます。腕を引き、肩甲骨を寄せます。
次に、両腕を横に広げて「T」の形にし、親指を後ろに向けて同様に肩甲骨を寄せます。
続いて、「W」の形に両腕を上げ、同じ動きを繰り返します。
最後に、肘を曲げて体側に近づけ、「L」の形(上腕と前腕が直角になる形)を作ります。親指は後ろ向きにし、腕を引いて肩甲骨を寄せます。
2. 上腕ストレッチ
肩幅より広めに足を開き、膝を床につけ、腕を椅子の上に乗せます。背筋と腕をできるだけまっすぐに保ちつつ、背中を曲げて、上腕(二の腕)を下に押し出すようにストレッチします。
緊張で健康を損なわないように
悪い姿勢によるわずかな筋肉のこわばりが、知らぬ間に高血圧や血管の圧迫といった重大な問題へと発展することがあります。しかし、毎日のストレッチや姿勢に配慮する習慣によって、慢性的な緊張を和らげ、背骨を調整し、心臓や脳の健康を支えることができます。毎日10〜15分だけでも、首、肩、背中のケアを行いましょう。これは、健康を維持するためにできる最も簡単で効果的な運動のひとつです。
(翻訳編集 井田千景)
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