私たちは皆、音楽を愛しています。音楽は心と体をリラックスさせたり、思わず体を動かしたくなったりします。特にクラシック音楽は、感情に良い影響を与えることで高く評価されています。
しかし、音楽は心の健康を高めるだけでなく、身体の健康、とりわけ血圧のような重要な指標にも深く関わっていることがわかってきました。新たな研究によれば、特定のクラシック音楽が血圧の調整に影響を与える可能性があり、身体がより効率的に血圧をコントロールできるようになるかもしれないのです。
最新研究:「音楽はどうやって血圧を『動かす』のか?」
2025年に開催された欧州心臓病学会議において、音楽と血圧に関する興味深い研究結果が発表されました。この研究によると、音楽のメロディーや音量の変化が規則的で予測しやすいほど、私たちの血圧もそのリズムに合わせて変化しやすくなることが明らかになりました。
この背後にある原理は「リズム同期」と呼ばれています。イメージとしては、好きな音楽を聴いていると自然に首を振ったり足踏みしたりすることがありますが、それと同じように、体内のリズム(例えば血圧の上下)も音楽のリズムに引き込まれていくという仕組みです。
この研究チームを率いたのは、ロンドン・キングス・カレッジのエレイン・チュー教授です。彼女たちの研究では、リストが編曲したシューベルトの「セレナーデ」のような構造が明確なクラシック音楽が、最も強いリズム同期効果を示したことが確認されました。
この発見は非常に興味深いものです。将来的には、特定の音楽を活用することで、より効率的に血圧を安定させることができるようになるかもしれません。しかも、この原理はクラシック音楽だけに限らず、「構造が明確」なジャンルの音楽全般に応用できる可能性があります。
「リズムの同調」:音楽療法の科学的な根拠
なぜ私たちは音楽を聴くと、無意識にリズムに合わせて体を動かすのでしょうか?それは、音楽が脳の「快楽中枢」を刺激するからです。そして、まさにそれこそが音楽が身体に強い影響を及ぼす出発点でもあります。
チュー教授は「人間は本能的に音楽と一緒に動く」と説明します。外部のリズムに身体が自然と同調しようとするこの能力は、健康にとって有益であるだけでなく、人間の社会的な結びつきの基礎にもなっています。
これまでの研究では、音楽に合わせて呼吸や心拍が変化することがわかっていました。今回の研究はそれをさらに一歩進め、血圧までもが音楽に合わせて変化するという事実を裏付けたのです。
高度なデータ解析によって、音楽と血圧には明確な関連性があることが証明されました。これにより、将来的に音楽が心血管の健康管理における、薬に頼らない治療法として活用される可能性に科学的な裏付けが与えられたのです。
専門家の見解:「音楽処方」の個別化時代へ
この研究に直接関与していない心臓専門医のニシャ・I・パリク医師も、この結果に高い関心を示しています。彼女は「音楽を用いた血圧管理は、非常に有望な非薬物療法のひとつであり、多くの患者が進んで試したがるだろう」と述べています。
ただし彼女は、「これがすぐに薬の代わりになるわけではない」とも指摘します。実際に「音楽処方」を臨床で取り入れるには、医師の指導のもとでウェアラブル機器などを使い、血圧を綿密にモニタリングしながら薬の量を安全に調整できるかどうかを判断する必要があります。
パリク医師が強調するこの研究の意義は、「精度の高さ」にあります。この研究は、「どんな音楽でも効果があるわけではない」ことを明確に示しました。予測可能な構造と適切な音量を持つ「特定の楽曲」こそが、有効な補助療法となり得るのです。
(翻訳編集 解問)
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