水の中で育ちながら、赤く輝く鯛。その色は火を象徴し、水火がひとつになった存在とされています。秋分は陰陽がちょうど交わる節目。この時季に赤い鯛が選ばれてきたのは、食材そのものが持つ色と性質が、まるで季節のリズムに呼応するかのように、人の体の陰陽バランスを整えるヒントを与えてくれます。
鯛と栗を一緒に炊き込む料理は、秋分の時季に寄り添った養生の知恵といえます。栗はほのかな甘みを持つ温性の食材で、体の基盤を補う「脾」と「腎」を整えるとされています。一方、鯛の赤い色は五行で「火」に属し、心の働きを助け、血のめぐりを支えて気持ちを落ち着かせる食材として用いられてきました。
この二つが組み合わさることで、火と水のバランスが調い、心と腎のめぐりがつながり、陰陽の調和を図る一碗となります。ご飯が気を補い肺を養いながら、魚と栗の旨味を吸い込み、しっとりとした甘みと香りを引き立てることで、栄養を無駄なく体に届けてくれる理想的な食養の調理法です。
現代栄養学の観点からも、鯛には良質なたんぱく質やDHA・EPAが豊富に含まれており、脳を養い、神経を落ち着かせ、疲労をやわらげ、心と脳の働きを高めることが確認されています。
栗は体の根本を補い、鯛は血を養って心を安定させるとされており、乙巳年のように風と火の気が入り交じる秋に生じやすい心の不安定さや、上半身に熱がこもり下半身が冷えやすい体のアンバランスに、特に適した組み合わせです。
鯛と栗の炊き込みご飯(2〜3人分)
材料:
- 鯛 1尾(約400g)
- 新米 2合(約300g)
- 栗 8〜10粒(約100g)
- 昆布 小1枚
- 清酒 大さじ1
- 塩 適量
- 青ねぎ、または柚子の皮 少々(仕上げ用)
作り方:
- 鯛はうろこ・内臓を取り、軽く塩をふって10分ほど置き、蒸すか焼いて八分通り火を通しておく。
- 新米を洗い、昆布と清酒を加えて炊飯する。
- 栗を一口大に切って米にのせ、その上に蒸した鯛をのせて、米が炊き上がるまで一緒に蒸す。
- 炊き上がったら鯛の骨を取り除き、身をほぐして軽く混ぜ、青ねぎや柚子の皮を散らして香りを添える。
全体の働き:
栗は体の土台を補い、鯛は水火の陰陽を調和し、血を養い心を安らげ、脾を健やかに保つとされています。
適する方:
気分が落ち着かない、眠りが浅い、脾胃が弱い、疲れやすい方におすすめです。
控えた方がよい方:
海産物にアレルギーのある方は避けてください。
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