【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

東洋と西洋の智慧に学ぶ、無理なく痩せるスープ

お腹まわりは脂肪がたまりやすく、しかも落ちにくい。これは多くの人にとって悩ましい問題です。「食べる量を減らして運動を増やす」という方法を試しても、なかなか効果が出ず、リバウンドしやすいのも現実です。

しかし、現代医学の観点から見ても、中医学の理論から見ても、共通しているのは、本当に減量を成功させ、リバウンドを防ぐためには、体の内側の代謝バランスを回復させることが最も重要だということです。

代謝の根本は脾と胃にあります。脾胃の働きが整えば、自然と体は軽くなり、無理なく痩せていきます。したがって、正しい食事こそがダイエットの要なのです。

現代の減量法:水溶性食物繊維を上手に利用する

現代の栄養学の研究によると、ダイエットの成功を左右する重要な要素のひとつが、水溶性食物繊維に含まれる「粘性のある繊維」です。

この植物由来の粘性繊維は、腸の中で水分を吸収して膨らみ、満腹感を与えてくれるため、食べすぎを防ぐ働きがあります。さらに重要なのは、この繊維が腸内の善玉菌の「エサ」になるという点です。

善玉菌が元気に増えると、腸粘膜の健康が保たれ、炎症が減り、栄養の吸収効率が高まります。その結果、血糖値の変動がゆるやかになり、インスリンの反応も穏やかに保たれます。インスリンが過剰に働かないことで、脂肪が蓄積されにくくなり、これこそが健康的に痩せるための本質的なメカニズムなのです。

中医学の減量法:脾を整え、湿を祓う

中医学の観点から見ると、肥満とは単に「脂肪が多い」ということではなく、脾の働きが弱まり、体内に湿がたまっている状態を指します。

脾は「後天の本」といわれ、飲食物を消化し、気血を生み出す中心的な臓です。その脾の力が弱まると、水分代謝が滞り、余分な湿が体内にとどまって「痰湿」となります。この痰湿が長く滞ると代謝が落ち、脂肪がたまりやすくなり、体が重く、だるく、 たくさん食べていなくてもなかなか痩せない――そんな状態に陥ります。

中医学の減量法は、単に「食べる量を減らす」ことではなく、「食べたものをきちんと消化し、吸収し、排出できる体に戻す」ことを目指します。

現代栄養学が「水溶性食物繊維で腸を整える」と言うのに対し、中医学では「健脾祛湿(けんぴきょしつ)」や「化痰(かたん)」と表現します。

実はこれは表裏一体の関係で、脾胃が健やかになれば腸内環境が整い、
腸の菌バランスが良くなれば脾の気も自然にのびやかに働くのです。

つまり、ダイエットの本当の鍵は「我慢」ではなく、 体が自ら代謝できる力を取り戻すことにあります。
 

牛肉は五行で「土」に属す 脾胃を強める頼もしい味方

ここでご紹介したいのは、中医学と現代栄養学の知恵を融合した一品――トマト牛肉スープです。

牛は農耕に欠かせない動物であり、「地(土)」と深く関わる存在です。十二支の「丑」は五行で「土」に属し、これは脾胃の働きを象徴します。そのため中医学では、牛肉は「土の気」を帯びた食材とされ、脾胃を補い、体の中心を養う力があると考えられています。

そこに、酸味(五行で「木」に属し、肝に入る)のあるトマトを合わせることで、肝のこわばりをゆるめ、気のめぐりを整え、脾胃の働きを調和させます。気血の流れがスムーズになり、消化力が高まり、余分な熱や湿も自然に取り除かれます。穏やかで負担が少なく、長く続けて脾胃を整えられる理想的なダイエットメニューです。

牛肉とトマトの組み合わせは、気のめぐりを整え、脾胃の働きを調和させます。(Shutterstock)

このスープは、現代栄養学でいう「高たんぱく・高食物繊維・低脂肪」を満たしながら、中医学でいう「脾気を補い、湿熱をさばき、気の流れを整える」働きも備えています。

酸味と甘味のバランスがよく、冷たすぎず温かすぎず、体を養いながらも余分な痰湿や脂肪をやさしく取り除いてくれます。補っても重くならず、余分な熱を取り除きつつ、体の温かさを損なわない――飲み続けることで脂肪を減らすだけでなく、体が軽やかで力強くなり、顔色も明るく、消化もすっきりと整っていきます。
 

レシピ:トマト牛肉スープ(4人分)

トマト牛肉スープのイメージ写真(Shutterstock)

材料

  • 牛バラまたは赤身肉……300g
  • トマト……中4個(約600g)
  • じゃがいも……200g
  • にんじん……100g
  • 玉ねぎ……1/2個(約80g)
  • しょうが……3枚
  • 水……1200〜1500ml
  • サラダ油……大さじ1
  • 塩……適量
  • 黒こしょう……少々(お好みで)

*お好みで:オートミール30gまたは亜麻仁粉大さじ1(可溶性食物繊維を補う)

作り方

  1. 牛肉は一口大に切り、下ゆでしてアクを取り出す。
  2. 鍋に油を熱し、玉ねぎとしょうがを炒めて香りを出す。
  3. 牛肉を加えて軽く炒め、水を注ぎ、沸騰したらアクを取る。
  4. 弱火にして約30分煮る(圧力鍋なら15分)。
  5. トマト、じゃがいも、にんじんを加えてさらに20分ほど煮る。
  6. 最後にオートミールまたは亜麻仁粉を加え、塩・こしょうで味を調える。

スープは酸味と甘味がほどよく調和し、温かくても重くならない味わいです。牛肉のうま味にトマトのさわやかさが重なり、体を整えながら脂肪の代謝を助ける。まさに「補いながら巡らせ、余分な熱をさばきながらも体を内側から温める」理想的なダイエットスープです。

【体質別アレンジのすすめ】

脾虚・湿盛タイプ(体がむくみやすく、だるさや重さを感じ、舌の苔が白くねっとりする):白いんげん豆30gと陳皮1枚を加えれば、脾を強め湿を取り除き、効果を高めることができます。

湿熱タイプ(口臭があり、舌の苔が黄色く厚い):トマトを800gに増やし、冬瓜200gまたはハトムギ30gを加え、しょうがは半量に。

気虚・血瘀タイプ(息切れしやすく、顔色がくすむ): 長芋100gとナツメ5個、またはキクラゲ20gを加え、気を補い血の巡りを良くします。

陰虚・内熱タイプ(口の渇き、便秘、舌が赤く苔が少ない):しょうがは1枚に減らし、牛肉は赤身に変更。トマトと大根の割合を増やしましょう。

【効能分析】

牛肉
性質・味:温・甘
帰経:脾・胃
主な効能:中を補い気を益し、脾胃を健やかにし、体を強くする。
減脂作用:脾気を補い代謝を高め、気が満ちることで湿を散らす。

トマト
性質・味:やや寒・甘酸
帰経:肝・脾・胃
主な効能:津液を生み、のどの渇きを癒し、胃を整え、熱を冷ます。
減脂作用:酸味が湿を除去し、熱をさばいて脂肪代謝を助ける。

じゃがいも
性質・味:平・甘
帰経:脾・胃
主な効能:胃を養い、脾を健やかにし、余分な湿を取り除く。
減脂作用:脾を補っても重くならず、湿を払って巡りをよくする。

にんじん
性質・味:平・甘
帰経:肺・脾
主な効能:脾を整え、食を助け、腸を潤して便通を促す。
減脂作用:脾の働きを助け、老廃物の排出を促す。

玉ねぎ・しょうが
性質・味:温・辛
帰経:肺・脾・胃
主な効能:気を巡らせ、湿を払い、体を温めて寒を除く。
減脂作用:気の滞りを解き、湿を散らして代謝を助ける。

【全体の効能】

  • 脾を健やかにし、気を養って代謝の根本を整える。
     
  • 湿を除き、痰をさばいて体を軽くする。
     
  • 寒と温のバランスを取り、補っても重くならず、余分な熱をさばきながらも体を冷やしすぎない。
     
  • 可溶性食物繊維が腸内環境を整え、血糖を安定させる。

【ひとことアドバイス】

  • 減量とは「食を減らすこと」ではなく、「脾胃を動かすこと」。
     
  • 1日30g前後の可溶性食物繊維(オートミール・豆類・野菜など)と十分な水分を摂りましょう。
     
  • 冷たい飲み物、揚げ物、甘い物、アルコールは脾の陽気を傷つけ、湿を助ける原因になります。
     
  • このスープを続けて飲むことで、脾の働きが整い、水分代謝が改善され、体が軽く代謝もスムーズになります。
白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。