フルクトースとグルコースを含む砂糖入り飲料が、大腸がんの体内での拡散リスクを高める可能性があることが、9月19日に『Nature Metabolism』に掲載された査読付きの研究で明らかになりました。
この研究では、大腸がん細胞をフルクトースとグルコースの組み合わせにさらし、砂糖入り飲料の摂取による生理的環境を再現しました。
その結果、大腸がん細胞の「細胞運動性(細胞が体内の他の部位へ移動する能力)」と「転移可能性」が向上したと報告されています。
細胞運動性とは、細胞が体の一部から別の部位へと移動する能力のことで、がんが体全体に拡がる際の重要なステップとされています。転移とは、がん細胞が元の組織や臓器から他の部位へと広がることを指します。
研究者たちは、大腸がん細胞の運動性が高まると、「大腸がん転移の最も一般的な部位である肝臓への拡散がより早く起こる」と報告しました。これは、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターが9月19日に発表した声明によるもので、この研究は同センターの研究者によって主導されました。
グルコースとフルクトースの混合物は、「SORD(ソルビトールデヒドロゲナーゼ:グルコース代謝を促進する酵素)」を活性化させ、コレステロール代謝経路を誘導し、最終的に転移を促進すると報告されています。
このSORDを阻害することで、グルコースとフルクトースの混合物が存在していても転移のプロセスが遅れ、治療の選択肢となる可能性があると、声明では述べられています。
「私たちの発見は、日常の食事ががんのリスクだけでなく、発症後の疾患進行にも重要な影響を与えることを強調しています」と、がんセンターの遺伝子学科主任研究者であるユン・ジヘ氏は述べました。
「これらの発見には今後さらなる研究が必要ですが、砂糖入り飲料の摂取制限、SORDの標的治療、スタチンの再利用が、大腸がん患者に利益をもたらす可能性があります」
スタチンは、コレステロールの生成を抑える心臓病治療薬です。
この研究は、テキサスがん予防研究機関、国立がん研究所、アンドリュー・セイビン家族フェロー賞、V学者賞、ピュー=スチュワートがん研究学者プログラムの支援を受けて実施されました。著者は、利益相反がないことを宣言しています。
若年者の大腸がん
大腸がん(結腸がんおよび直腸がんを含む)は、アメリカがん協会のデータによると、アメリカ男性におけるがん関連死の第3位、女性では第4位に位置しています。
男女を合わせると、大腸がんはがんによる死亡原因の第2位にあたります。
アメリカがん協会は、2025年にアメリカで結腸がんが約107,320例、直腸がんが約46,950例、新たに診断されると予測しており、年間の大腸がんによる死亡者数は52,900人にのぼると見込んでいます。
「1980年代中盤以降、結腸がんおよび直腸がんの診断率は全体として減少しており、これは主にスクリーニング検査の普及と生活習慣リスク要因の改善によるものです。2012年から2021年までは、年間平均で約1%の減少が見られました」と、アメリカがん協会は述べています。
「しかし、この減少傾向は主に高齢者に限られており、50歳未満では、2012年から2021年の間に年間2.4%の割合で増加しています」
アメリカ医学会が7月24日に発表した報告書でも、通常は50歳以上に多いとされていた大腸がんが、若年層に増加していると指摘されています。
2024年5月に開催された「Digestive Disease Week 2024」で発表された研究では、1999年から2020年の間に、大腸がんの発症率が10〜14歳で500%、15〜19歳で333%、20〜24歳で185%、25〜29歳で68%増加したことが明らかにされました。
この研究は、疾病管理予防センターのデータベースを基に分析されたものです。
アメリカがん協会によると、大腸がんのリスク要因には、生活習慣によって改善可能なものと、そうでないものがあります。
変更可能な要因には、過体重、2型糖尿病、喫煙、アルコール摂取、赤身肉や加工肉の多量摂取、高温での調理などが含まれます。
(翻訳編集 日比野真吾)
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