ビタミンB12は、体を健康に維持するために欠かせない重要な栄養素です。
不足すると、貧血、疲労、脳や神経の障害、さらには認知機能の低下を引き起こします。ほとんどの人は食事やサプリメントから十分に摂取できています。
しかし、B12の血中レベルが異常に高い場合はどうなるのでしょうか?
「異常に高い血中ビタミンB12レベルは、過剰摂取によるものではなく、基礎疾患や代謝の問題を反映している可能性があります」と、東京大学で修士号を取得したビー・ウェンジエ博士はエポックタイムズに語りました。
高B12レベルが深刻な疾患リスクを高める
ビタミンB12の持続的な上昇は、肝臓、腎臓、血液、免疫系、またはがんといった隠れた疾患の警告サインである可能性があります。
肝疾患
肝硬変、脂肪肝、肝炎などの疾患は、高いB12レベルを引き起こすことがあります。
肝臓はビタミンB12の主な貯蔵場所であり、肝細胞が損傷すると貯蔵されたB12が血液中に漏れ出し、同時に肝臓がB12を適切に処理・排出できなくなるため、レベルが上昇します。このとき増加するB12の一部は「不活性型」で、体が実際には利用できません。
ただし、B12レベルが高いからといって自動的に肝疾患を意味するわけではありません。他の検査結果や症状と併せて判断する必要があります。黄疸、疲労、腹部の張り、食欲低下などの症状があり、かつ肝機能検査で異常が見られる場合は、肝臓に問題がある可能性が高く、医師による詳しい検査が必要です。
腎不全
腎臓は通常、血中のB12を濾過しますが、機能が低下するとビタミンが体内に蓄積します。
「腎臓が正常に働かないと、体はビタミンB12を効果的に排出できず、血中濃度が上がってしまいます」と、ニューヨーク北部医療センターのCEOの楊景端博士は語ります。時間の経過とともにB12が高い状態が続くことは、腎疾患の初期サインとなることがあります。
研究によると、血清B12レベルが900pg/mLを超える場合、正常レベルの人に比べて急性腎障害のリスクが約2.8倍に上昇することが示されています。
楊博士は、高B12レベルに加えて尿の減少、尿の色の変化、足首や目の周囲のむくみ、疲労、めまい、食欲低下などの症状が見られる場合には注意が必要だと指摘しています。こうした場合は、早急に腎機能をチェックすることが大切です。
血液または骨髄疾患
慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、真性赤血球増多症なども高B12レベルを引き起こします。これらの疾患では、血中のB12結合タンパク質が増加し、結果として異常に高い血清B12値を示すことがあります。
ラトビアのコホート研究(79,000人以上を対象)では、極端に高いB12レベル(1,700 pg/mL超)の患者を追跡調査したところ、通常レベルの人に比べて腫瘍性血液疾患のリスクが約6倍、骨髄性白血病ではほぼ20倍に達していました。研究者たちは、「非常に高いB12レベルは、潜在的な血液がんの早期警告サインである可能性がある」と結論づけています。
また、貧血、原因不明の出血やあざ、頻繁な感染などの症状にも注意が必要です。これらの症状がある場合は、血液関連疾患を除外するため、追加の血液検査や骨髄検査が推奨されます。
炎症性疾患または免疫疾患
慢性炎症は免疫反応の一環として、ビタミンB12結合タンパク質(トランスコバラミンIIなど)の増加を引き起こします。これにより、実際に体が必要としていなくても、血中B12濃度が高くなることがあります。
たとえば、全身性エリテマトーデス(ループス)患者の研究では、トランスコバラミンIIレベルが高いことが確認されています。このタンパク質はB12を運ぶだけでなく、免疫系とも相互作用し炎症を悪化させ、炎症がB12をさらに上昇させるという悪循環を生むことがあります。
持続的な高B12があり、関節痛や腫れ、皮膚の赤い発疹、発熱の繰り返し、極端な疲労などの炎症症状を伴う場合は、自己免疫疾患や炎症性疾患の可能性が考えられます。この場合、医師は自己免疫マーカーを含む免疫検査を行い、ループスや関節リウマチなどの疾患を確認します。
悪性腫瘍
肝臓、肺、胃、乳がんなどの一部のがんも、ビタミンB12レベルを異常に上昇させます。がん細胞が体内の代謝バランスを乱し、急速な細胞増殖によりB12結合タンパク質(ハプトコリンやトランスコバラミンなど)の産生を促進するためです。これらのタンパク質が余分なB12を血液中に運び、検査で高B12値として現れます。
研究では、血漿B12レベルが持続的に1,000ng/mLを超える場合、固形がん発症のリスクが通常レベルの人の約6倍に上昇することが確認されています。一方で、一時的な上昇には有意な関連が見られません。つまり、単発の異常値よりも「持続的な上昇」が危険信号になるのです。
原因不明の急激な体重減少、長引く痛み、慢性的な疲労、食欲低下などの症状がある場合は、潜在的な腫瘍を除外するために画像検査を受けることが推奨されます。
サプリメントの摂りすぎにも注意
高B12レベルはがんリスク上昇と関連するだけでなく、過剰なサプリメント摂取が特定の人に悪影響を及ぼすこともあります。研究によると、1日55mgを超えてB12を摂取している男性は、肺がんリスクが2倍に上昇することが分かっています。特に喫煙者ではB12サプリメントによるリスク増加が顕著です。
また、別の研究では、化学療法中にビタミンB12サプリを摂取していた乳がん患者は、予後が悪く、再発しやすく、生存期間が短い傾向があることも示されています。
国立台湾大学食品科学技術研究所博士課程の栄養士、チェン・シャオウェイ氏は次のように警告しています。「どんな栄養サプリメントも適量が大切です。過剰摂取は体に負担をかけ、副作用を引き起こす可能性があります」
ビタミンB12はどれくらい必要?
成人の推奨1日摂取量は、ビタミンB12で2.4mgです。B12は神経細胞膜の成分であり、神経伝達物質やDNAの合成を助け、細胞代謝にも関わっています。また、赤血球の形成にも不可欠で、不足すると脳や血液の健康維持が難しくなります。
ビタミンB12は主に動物性食品に含まれていますが、ベジタリアンは栄養酵母や植物性ミルク(大豆、アーモンド、オートミルクなど)の強化食品で補うことができます。
楊博士は次のように強調します。「推奨摂取量はあくまで一般的な基準値です。健康状態によって必要量は異なります」軽度のB12不足がある人は、短期間で1日50~200mgが必要な場合もあり、重度の不足では医師の管理下で1日500~1,000mgが推奨されます。
ただし、健康な人が長期間にわたり1日1,000mg以上を摂取するのはリスクがあります。
神経・精神・皮膚・血液の問題を抱えている人は、医師と相談のうえで適切な用量を決めることが大切です。
(翻訳編集 日比野真吾)
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