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冬の気分低下と骨ケアに チンゲン菜と厚揚げの炒め物

冬は日照時間が短くなり、陽気が内に潜む季節です。どうしても気分が沈みがちになり、やる気が出ない――これは中医学では「肝の気が滞り、伸びやかに働けなくなっている」ことが一因と考えます。

肝は腎を母とし、腎は肝を助ける関係にあります。肝の気がのびやかでないと、腎気も十分に満ちず、結果として筋や骨の栄養が不足し、精神の張りも失われやすくなります。つまり冬の養生では、腎精を補うだけでなく、肝気を通らせて気の巡りを良くすることがとても大切なのです。

日本の食卓でよく見かける“青菜と厚揚げの炒め物”。実はこの一皿には、まさにその調え方が隠れています。温かく脾腎を養いながら、やわらかく肝気をほどく――冬の身体に寄り添うやさしい養生料理と言えるでしょう。
 

チンゲン菜:香りで気を巡らせ 肝をほぐし 脾を目覚ます

血行を促し、神経を安定させる働きがあるチンゲン菜(Shutterstock)

チンゲン菜は白い茎がしっかり太く、葉は青々としており、ほのかな辛味があります。その姿からも感じられるように、上へと伸びる“木”の生命力を備え、中医学では、このように伸びやかに発散する植物には、肝のこわばりをゆるめ、気を巡らせる力があるとされています。

辛味が強すぎず刺激も穏やかなので、気の流れを整え、胃のつかえを取り、陽気のめぐりを助けてくれます。とくに、冬の気が滞りやすい時期には、チンゲン菜の清々しい香りと軽い辛味が、肝の“木の気”をやわらかくほぐし、気分の停滞もふっと軽くしてくれます。

さらにチンゲン菜には、ビタミンC、カリウム、カルシウムが豊富に含まれ、血行を促し、神経を安定させる働きがあります。季節性の気分低下にも、やさしく寄り添ってくれる食材です。
 

しいたけ:気を補い、血を養い、陽気を助けて脳を元気にする

しいたけは脾を健やかにし、肝の気の流れを助ける食材。(Shutterstock)

しいたけは、冬の食卓で最も身近なきのこのひとつです。味は甘く穏やかで、旨みが強く、食欲をそそります。中医学では胃腸を整えてエネルギーを補い、血をしっかり作る力を高めてくれる作用があり、脾を整え、気血を養うとされます。

しいたけに含まれるβ-グルカン(多糖類)は免疫力を高め、ビタミンB群やエルゴステロールは体内でビタミンDに変わり、カルシウム吸収を助けて骨を丈夫にします。

また、中医学には「脾は血を生じて肝を養う」という言葉があります。脾が元気に働けば血が十分につくられ、肝の機能も伸びやかになります。しいたけはまさに脾を健やかにし、肝の気の流れを助ける食材。負担が少なく、気力を補い、頭もすっきりさせてくれる“平補(軽やかな補い)”の代表です。

中医学では「脾(=胃腸)が血をつくり、その血が肝を養う」と考えます。しいたけはこの脾の働きを助け、肝のめぐりを整える力があります。胃腸のエネルギーを補いながら気分もすっきりとさせてくれ、しかも重たくならない“やさしい補養食材”です。
 

厚揚げ:腎を養い、精気を補い、筋骨を強める

植物性たんぱく質とカルシウムが豊富に含まれている厚揚げ(Shutterstock)

厚揚げは豆腐を油で揚げて外は香ばしく、中はふんわりと仕上げた日本でもおなじみの食材です。豆腐は中医学では腎を養い、精気を補う食材とされ、油で揚げることでほどよい温かさを帯び、冬の補養により適した性質になります。
豆腐の原料である大豆は、形が腎に似ており、また “種子” でもあるため、生命のエッセンスがぎゅっと内に宿っている食材と考えられ、古くから脾と腎を補う食材として重宝されてきました。

現代栄養学でも、大豆には植物性たんぱく質とカルシウムが豊富に含まれ、たんぱく質は筋肉の材料に、カルシウムは骨の形成に欠かせない成分です。これは中医学における「脾は筋肉をつかさどり、腎は骨をつかさどる」という考え方と見事に一致しています。

油で揚げることで温かさが加わり、冬に不足しやすい腎の働きをやさしく支え、腎のエネルギーが骨や筋肉に行き渡るようサポートします。

日本の家庭料理では、小松菜と厚揚げの炒めものが定番ですが、これは「緑色の野菜で肝を助け、豆で腎を潤す」という理にかなった組み合わせです。これを青梗菜に替えると、肝の気の巡りをよりよくし、気分の滞りを晴らす作用も加わります。

肝と腎がともに整うことで、気血の流れがスムーズになり、冷え、筋肉や関節のだるさ、思考がにぶくなりがちといった冬に多い不調をやわらげてくれます。

三者の組み合わせ:肝がゆるみ、脾が整い、腎が満ちて頭も冴える

チンゲン菜は肝のこわばりをほどき、しいたけは脾胃を助け、厚揚げは腎を養います。三つを合わせることで気血が巡りやすくなり、腎精も十分に満ち、脳までしっかり栄養が行き渡ります。

現代栄養学的に見ても、この料理はたんぱく質・カルシウム・ビタミンD・マグネシウム・鉄などを同時に補給でき、神経伝達物質の合成をサポートし、骨や脳の代謝にも役立ちます。冬に起こりやすい気分の落ち込み、疲れやすさ、集中力の低下の改善にも効果が期待できます。
 

レシピ:チンゲン菜としいたけと厚揚げの炒め物

材料(4人分)

  • チンゲン菜 …… 1束(約250g)
  • 厚揚げ …… 2枚
  • しいたけ …… 4枚(薄切り)
  • 生姜のみじん切り …… 小さじ1
  • しょうゆ …… 大さじ1.5
  • みりん …… 大さじ1
  • 酒 …… 大さじ1
  • ごま油 …… 少量

作り方

  1. チンゲン菜はよく洗い、茎と葉を分けて食べやすい大きさに切る。しいたけは薄切りにする。
     
  2. 厚揚げは熱湯をかけて余分な油を落とし、食べやすい大きさに切る。
     
  3. フライパンに、ごま油を熱し生姜を炒めて香りを立たせ、しいたけと厚揚げを入れて軽く焼き色をつける。
     
  4. チンゲン菜の茎を加えて炒め、しんなりしてきたら葉を加える。
     
  5. しょうゆ・みりん・酒を加えて全体をさっと炒め合わせ、弱火で1分ほど蒸し煮にして仕上げる。

お好みで、仕上げにごま油を数滴たらすか、白ごまを少しふると、香りとコクが増してより温かみのある一皿になる。腎を養いたい場合は、玄米ごはんを合わせたり、黒すりごまを少量ふりかけてもよい。
 

結び

チンゲン菜としいたけと厚揚げの炒め物は、青々とした色味とやさしい味わいが冬の食卓を温めてくれるだけでなく、肝と腎のバランスを整える冬の養生にも役立つ一品です。滞りやすい肝の気をゆるめ、腎のエネルギーを満たし、筋骨をしっかり養い、気持ちを落ち着かせてくれます。