【大紀元日本9月21日】日本政府による尖閣列島の国有化に反発して、中国では反日デモが各地で繰り広げられている。テレビ映像を見ていると、デモ参加者の中に毛沢東の写真を掲げる者もいれば、「毛沢東万歳」と叫ぶ者もいる。彼らはどれだけ毛沢東がしてきたことを理解しているのか…? 本書を読んでそう感じる。
北海閑人の文章は、1996年ごろから香港の月刊誌『争鳴(そうめい)』に掲載されるようになった。北海閑人はペンネームであり、その経歴を明かすことはない。それは彼が北京に住んでいる中国人だからである。もし、著者の正体を検閲機関がつきとめたらどうなるのか? 考えるだけでも恐ろしい。
本書は「AB団大量殺戮事件」から始まる。AB団とは、国民党・蒋介石の指示により江西省でつくられた反共右派組織。しかし、AB団は1926年11月に成立し、翌年4月2日に自然解散しており、実際に存在したのは半年足らずの期間しかなかった。にもかかわらず、1930年初めころから共産党軍の内部で大量の将兵を惨殺する事件が各地で起こる。最初に「反革命を粛清し、AB団を消滅する」運動を展開したのは江西省の井崗山(せいこうざん)根拠地だった。なぜこんなことが起こったのか、その真相はいまだに明かされていない。それは、事件の首謀者が毛沢東だからであると著者は言う。当時、農民軍を率いていた毛沢東は井崗山を根城にする土着部隊と合流する。しかし、主導権を持つため、毛沢東は土着部隊の頭目二人を謀略で殺してしまう。このときに使われた名分が「二人の頭目はAB団と結託し紅軍内部で陰謀活動をしている」だった。
しかし、凄惨な殺人はここから始まる。二人の頭目に忠誠を誓った部下が数千人ほど残っており、幹部も多数いたのだ。彼らを排除するため、めぼしい人間を拷問にかける。「自白」するまで拷問を止めない。さらに「自供」で名前の挙がった者を捕らえ、拷問し新たに「自供」させた上で処刑する。処刑の方法も弾丸を使うのはもったいないからと、刀・こん棒・石塊・縄など原始的な方法で殺害したという。その後の毛沢東の行動を暗示する導入部である。
中国本土では決して語ることのできない毛沢東の真実の姿を、本書の中で北海閑人は冷静に語る。毛沢東の「大躍進政策」や「文化大革命」に巻き込まれた「非正常死亡者数」は四千万人から七千万人以上と推測されている。まさにヨーロッパの大国の人口に匹敵する人々が毛沢東の犠牲となっているのだ。しかし、天安門広場ではいまだに毛沢東の肖像が掲げられている。なぜなのか? この本のページをめくるたびに、毛沢東という「人間」の底知れぬ恐ろしさと狡猾さを感じる。中国国内で毛沢東が歴史の審判を受ける日はいつ来るのだろうか。
【大紀元の記事から】
http://www.epochtimes.jp/jp/2010/05/html/d78412.html
書名 『中国がひた隠す毛沢東』
著者 北海閑人[著] 廖建竜[訳]
出版社 草思社
2005年10月発売 単行本
1,890円(税込)
ISBN:9784794214430
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