糖尿病の患者に多く見られることは、血液中にブドウ糖が過剰に含まれているケースです。
これら過剰な糖類は、終末糖化産物であるエージス(AGEs)を形成し、恐ろしい糖尿病合併症の一因となっています。
「終末糖化産物」という厄介者
食品としては、揚げ物や肉類、加熱調理したデンプン質の食品(例、ベークドポテト、パン、クラッカー、クッキー、マフィン、およびその他のベーカリー食品など)などが、終末糖化産物を多く形成する食品と言えます。
終末糖化産物は、糖が体の組織内、特に血管内のタンパク質や脂肪と結合してできた化合物です。これが多く形成されると体細胞に深刻なダメージを与えるのです。
終末糖化産物は、特に糖尿病患者において加速度的に産生される、実に厄介な物質です。
それが引き起こす各種の症状は「糖尿病合併症」と総称されますが、糖尿病を起因とする神経障害、網膜症、腎症のほか、動脈硬化や傷が治癒しにくいなど、いずれも患者にとって深刻な病状をもたらします。
有害物質を回避するには
2型糖尿病患者を対象とする食事療法では、食後血糖値の上昇をコントロールするだけでなく、終末糖化産物のリスクを回避するために、食後血糖を緩やかに上昇させる低血糖負荷(低GL)食を選択することが求められます。
重要なのは、低GI(低グリセミックインデックス指数)の食物だけではなく、低GL(低グリセミックロード指数)の食物を選ぶことです。
低GIだけに注目する思考は、「常識的な食事量のなかで、その食品がどれほど血糖値を上昇させるか」という基本的な視点が欠けているため、現在では「伝統的な糖尿病食の盲点」とされています。
肉はGL値の低い食品ですが、肉を多く食べることは栄養バランス維持の観点から薦められません。糖尿病患者の食事に肉類を強調しすぎると、それが原因で別の病気を招きます。つまり、短期的な血糖コントロールのために、長期的な意味での健康を犠牲にすることになるのです。
全粒穀物の摂取は、確かに糖尿病のリスクを減らすことができますが、これは食物繊維が多く含まれているからです。こうした食品は、血糖コントロールにある程度の効果があることが分かっています。
しかし、これらの食品には、心臓病の危険因子である中性脂肪を増加させる傾向があります。また、穀類やデンプン質は加熱調理した後でも血糖値は低くないので、糖尿病患者にとって理想的なカロリー源ではないとも言えます。
これに比較してナッツ類、種子類、豆類のGL値は非常に低く、栄養価も高いのです。
ナッツ類を見直しましょう!
そのため、糖尿病患者の主なカロリー源として、穀類や肉類よりも「ナッツ類、種子類、豆類は適している」と言えます。
ナッツ類は、コレステロール値を低下させ、抗酸化作用をもたらします。これは、心臓血管障害のリスクを低下させるとともに、糖尿病患者にも有益な食品であることを意味します。
ナッツ類には植物性タンパク質、食物繊維、抗酸化物、植物ステロール、ミネラルが豊富に含まれています。こうしたナッツ類の特性が血糖反応を最小限に抑えるため、食後血糖の上昇をゆるやかにし、高インスリン血症や終末糖化産物のリスク回避に役立つと考えられます。
また、ナッツ類は適正体重を維持するのにも役立ちます。
肥満は、糖尿病の要因の一つです。油脂の多いナッツ類は高カロリー食品ですが、ナッツ類を適量食べる人は肥満になりにくいと言われています。これはナッツ類の健康的な脂肪が、他の食物への食欲を抑えるからかもしれません。
こうした特性をもつナッツ類は、糖尿病からの回復を願う人々にとって、重要なアイテムになり得ます。また、糖尿病患者ではない健康な人にとっても、毎日ナッツを「ひとにぎり」食べていただきたいのです。
緑色野菜、豆類、低糖質の果物とともに、気軽につまめるナッツ類を大いに活用したいものです。
(文・Joel Fuhrman/翻訳編集・鳥飼聡)
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