一般的に、「天気が変化する日や雨の日は、関節痛や腰痛が出やすい」と言われています。
一方では「天気と痛みとの関連性は薄い」という研究もありますが、実際のところ、どうなのでしょうか。
「雨の日は関節痛が起こりますか?」
英国の医学誌『British Medical Journal』に載っていたある研究が、雑誌サイトの第1位になるほど、注目を集めました。
この研究は、関節または腰背部の痛みに関連する疾患で、雨天と晴天の病院受診者についてその頻度を分析したものです。医療保険に加入している65歳以上の高齢者155万2842人を対象に、2008年から2012年までの間、かかりつけ医を受診した回数を調べました。
データを分析したところ、「関節・腰背部痛患者の受診と降雨との間に、相関関係は認められなかった」と言います。
しかしその後、この研究には「限界がある」と結論づけられています。
その理由は、例えば、病気の重症度に関する情報がないこと。痛みが出ている間に市販の鎮痛薬を使用しているかどうか、という情報がないこと。さらには、湿度、気圧、気温などの要因を考慮せずに、ただ降雨の有無にだけ焦点を当てていることなどです。
そのため、この研究に関しては「降雨と受診頻度とは無関係」と言うしかありませんが、両者(天候と体の痛み)が関連している可能性は、まだ否定できません。
実際にはある「風湿」の痛み
台北市にある栄欣骨科診療所の副院長・陳怡孜氏は、長年にわたる医療現場での観察から、「両者は関係がある、と感じている」と指摘します。
「昔の人は、すでに風湿(中国語のリウマチ)という病の概念を、漢字で私たちに教えています。風湿とは、つまり骨を刺すような冷たい風と湿気です。この2つの要素は、関節や筋肉の凝りを誘発しやすいのです」と陳怡孜氏は言います。
一般的に、雨の日は、晴れの日より来院する患者は少ないと言えます。
これは、人々が雨の日に外出するのを避けるからですが、陳怡孜氏は「じめじめした寒い日に、腰や背中、あるいは膝が痛いと訴える患者の割合が高いのは事実です」と言います。
内湖恒新リハビリ科医院の王思恒院長も、「患者は、湿気のある寒い日に痛むことが多いのですが、寒さのために外出したくないので、来院数は多くありません」と話します。
そのため、冬はむしろリハビリ科の「オフシーズン」であり、天候が暖かくなってから、患者が診察を受けに来ると王院長は言います。
「天候が変わると関節が痛む」その原因
寒くなったり、雨が降ったりすると関節が痛む主な原因は、次の2つです。
1 末梢部血液循環の低下
陳怡孜氏は、最も直接的な要因について「天候が寒くなると、特に末梢部の血液循環が減少することです」と指摘します。
寒い日は、体内を温めるために、四肢や体表面の血液循環が相対的に制限されることにより、体の熱放散が減少します。
体の筋肉に十分な血液量があれば、各種の動作に対処することができます。運動前のウォーミングアップは、体のさまざまな筋肉に十分な血液を供給するためです。
ところが関節部分は、寒くなって血管が収縮すると、筋肉のように比較的早く温めることができなくなります。ウォーミングアップが十分でないときは、普段慣れている動作であっても、関節はまだ硬いので温まるのが遅く、痛みが出やすくなります
2 湿度が高く空気の質が悪い
湿った冷たい天候のときは、アレルギー発作が起きやすくなります。
とくに室内の空気の質が悪いと、空気中に浮遊する水分が、ダニや塵(ちり)などのアレルゲンを吸着して気道に入り込み、体内を刺激してアレルギーを起こすのです。
同様に、空気中に浮遊する水分やアレルゲンが多いと、体の免疫機能が「不正常かつ自発的な炎症反応」を起こして、関節をふくむ体の各所に痛みを生じさせることがあります。
「痛む関節」は保温に努める
陳怡孜氏は、外来診察で「もう一つの現象」も目にすると言います。
「これは高齢者だけでなく若い人も含めてですが、過去に不慮の事故やハードなスポーツで関節や骨、靭帯を損傷したことがある人は、傷が治っても、天気が変わるときに痛みを感じることがあります」
複雑骨折した患者が回復し、患部に入れたボルトやプレートなどの固定物が取り外されていても、同様の痛みが起きます。骨折で手術を受けてから3年、あるいは5年が過ぎても、天候の変化で痛みを訴える患者もいるのです。
痛みのある部分は、保温に努めてください。
膝が痛みやすい人は、膝関節が風に触れるような短パンは履かないほうが良いでしょう。服を暖かく着るだけでなく、例えば、朝のウォーキングを始める前には、運動前のウォーミングアップとして、膝や股関節を柔らかくする運動も十分に行ってください。
それでも痛みが出たら「温罨法」
局所的な温罨法(おんあんぽう)は、血行を促進し、関節の疼痛を緩和します。
温罨法は、温熱療法の一種です。簡単な方法としては、お風呂のお湯で患部を温める、温湿布を貼る、使い捨てカイロを当てる、などがあります。
いずれも、患部の血行を良くして、慢性的な痛みを緩和することが目的ですが、温めすぎによる「低温やけど」には十分注意してください。
なお、重大な事故による打撲や捻挫で患部が大きく腫れ、急性炎症を起こしているときは、決して温めてはいけません。患部を固定し、氷で冷やすことが先決です。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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