動かないと筋肉は落ちる! 医師が教える筋肉減少の予防法(2)

(続き)

筋肉量の維持するには、タンパク質の補給が重要

筋肉にはもう一つ、体の生理・生化学的機能という点で重要な役割があります。それは、体内のタンパク質の貯蔵庫です。タンパク質は体の修復を助けるために使われることが多いため、体が何かをするたびに、細胞は磨り減っていくのです。

皮膚、消化管、血液、生命を維持するすべての物質など、あらゆる器官の細胞には一定の寿命があり、中には、数時間、数日、数カ月で交換・更新される寿命のものもあります。この継続的な再生には、タンパク質の利用が必要です。また、タンパク質は、炎症と戦い、脳のエネルギー源となります。

私たちの身体が若く、身体の緊急事態(例:外傷、手術、インフルエンザや発熱など)にあるとき、筋肉の再生は非常に単純で、食物を摂取することで非常に早く再生されます。

筋肉の再生には、ホルモン信号、神経信号、筋肉そのものの活動という3つの要素が必要です。

年齢を重ねると、ホルモンがなくなるだけでなく、神経からの信号も少なくなります。早ければ30代、40代から、この両方が弱まり、60代半ばにはホルモンや神経によって筋肉を強化することが全くできなくなり、筋肉を再生させるツールは自分の活動だけになってしまうのです。しかし、筋肉が活動しているときにこそ、修復・再構築の機能が働きます。

ありがたいことに、この仕組みは高齢になっても有効ですが、高齢になればなるほど、筋肉を完全に再生させることは難しくなります。しかし体を動かし続けることで、筋肉を維持し、健康な体を保つことができるのです。

運動とは別に、体の筋肉量を維持するためには、十分なタンパク質を摂取することが重要かつ効果的です。

中には野菜や果物を多く摂り、肉類を控えた方が良いという考え方も多いです。しかし、60歳以上、または80歳、90歳、あるいは手術を受けたり、重い病気にかかっている高齢者にとっては、そのような食事は危険です。十分な筋肉やタンパク質がないと、体の修復ができなくなります。十分なタンパク質は、弱った体を素早く回復させ、体力を維持することができます。そのため、若いときよりも年齢を重ねるごとに、タンパク質の摂取量を増やすことが大切です。

良質なタンパク源:

・すべての肉類および魚介類:牛肉、豚肉、鶏肉、卵、サバ、イワシ、サーモン、マグロなど。

・乳製品:牛乳、山羊乳、チーズ、ヨーグルト(生クリーム、クリームを除く)。

・大豆製品:豆乳、豆乳ヨーグルト、豆腐、乾燥大豆など

・豆類:レンズ豆、ひよこ豆、乾燥豆、エンドウ豆など

・すべてのナッツ類と種子類

・全粒粉製品

筋肉の機能を維持するための運動

理想的な運動は、有酸素運動、抵抗運動、柔軟運動、バランス運動の組み合わせであるべきです。まずは、安全で転倒の心配がなく、自分でできる運動を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。モップがけ、掃除、ガーデニング、重いものを持ち上げるなど、家庭での規則的な活動は、筋肉を維持し、老化を防ぐのに有効です。

1、有酸素運動(例:ジョギング、ウォーキング、水泳など)

最初は週に3日以上行い、徐々に毎日行うようにしましょう。

1日30〜60分を目安に、10分単位で徐々に増やしましょう。

少なくとも20〜30分の激しい運動(息切れや発汗)をすると良いです。

2、筋トレ(例:スクワット、ダンベルリフティングなど)

週2日以上トレーニングしましょう。

脚、手、肩、胸、腹、背中、腰、ヒップなど、主要な筋肉をすべて鍛えることができます。フィットネス・インストラクターに指導を依頼するのがお薦めです。

各動作を10回ずつ繰り返します。適応後に負荷を上げるか、より多くのレップ数を繰り返します。

3、柔軟体操

少なくとも週に2日、すべての主要な筋肉群のストレッチを行います。

動的な動きよりも、静的なストレッチ(筋肉を15秒以上固定する)を選びましょう。

4、バランス運動(例:片足立ち、つま先立ち、太極拳など)

週1日以上から毎日へと徐々に増やしていきます。

漢方薬における取り扱い

「痿病」は肝臓、脾臓、肺、腎臓に関係しますが、脾臓と胃の消化吸収力が良ければ、すべての栄養素が全身をめぐり、筋肉が容易に成長できるため、治療には脾臓と胃の消化吸収力が重要なポイントとなります。「痿病」の見極めと治療には、気・血・陰・陽の不足と、陰陽の不足を寒熱の観点から区別することが重要です。ある時は痰を取り、瘀血を取り除き、またある時は湿熱を取り除き、固体を取り除き不足したものを補うことが必要なのです。

(翻訳編集:香原咲)