君臣の道――礼 現代にも応用できる上司と部下の接し方【雅(みやび)を語る】

君臣の道とは何でしょうか?

この問題について、春秋戦国時代の魯の国の君主・定公も考えたことがあります。当時、定公は孔子に尋ねました。孔子は、「君は臣を使うに礼を以てし、臣は君に事うるに忠を以てす」と答えました。君子は待遇正しく臣下を使い、臣下はまことを以て君子に仕えるという意味です。

孔子は人をもって基本とする視点で考えています。まず相手を一人の人間として尊重し、次に自分の役職に合った行いをします。上司と部下は職務上違いますが、その前に一人の人間です。

上に就いているからと言って、下の者を見下してはいけません。傲慢な心理が生じて他人の心を傷つけやすく、それ故に部下も上司のいうことを聞かなくなります。したがって、上司は礼儀をもって部下と接しましょう。

では、具体的にどのように礼儀を持てばよいのでしょうか?

三国時代の劉備は当初、筵(むしろ)を織って生計を立てていました。しかし、その後、『天下三分の計』をもって君主となりました。もちろん、関羽や張飛、諸葛亮、趙子龍などの有名な武将や軍師が劉備に仕えていたおかげもありますが、彼らの忠心を得ていた劉備の人格も欠かせません。

劉備は仁徳あることで有名です。関羽や張飛と兄弟のように接し、ともに数々の苦難を乗り越えました。諸葛亮を迎える際に三度も訪ね、死ぬ間際も、諸葛亮に対し、自分の息子がもし大事を成すことができる人なら補佐を頼むが、その器がないなら、取って代わっても良いと言ったのです。

このことから、劉備の部下に対する礼儀と寛大な心が伺えます。このような人の下で働いて心地悪いと言えるのでしょうか?

孟子は「人を愛する者は、人恒に之を愛し、人を敬う者は人恒に之を敬す」と説きました。時代は異なるけれど、人間性は変わらないものです。

雅蘭